化けの花
静かな村の片隅に、
誰も近づかない古びた屋敷があった。
屋敷の庭には、夜になるとひっそりと一輪の花が咲く。
その花は、
昼間はただの普通の花のように見えるが、夜になると、
まるで何かに変わるかのように輝きだす。
しかし、村の人々はその花を恐れ、決して近寄ろうとはしなかった。
[漢字]未来[/漢字][ふりがな]みく[/ふりがな]は小さな頃から、その屋敷と花が気になっていた。
ある晩、月明かりに照らされた花があまりにも美しく、未来は思わず屋敷の門をくぐってしまった。
[小文字]ギィィィ…[/小文字]
長い間使われていない扉がきしむ音を立て、未来は少し怖くなったが、
それでも花が呼んでいるような気がして、足を進めた。
庭にたどり着くと、その花が待っているように静かに咲いていた。
見たことのない色合いで、柔らかな光を放っている。未来はその花をじっと見つめた。
すると、ふと一枚の花びらが落ち、地面に触れると、その花の周りの空気が少し変わったように感じた。
「あなた、誰?」
未来は思わず口にしてしまった。
声は風に溶けて消えていくが、未来はその花がただの植物ではないことを直感した。
その夜から、
未来は毎晩その花を見に行くようになった。
いつしかその花に対して、
恐れや不安はなくなり、
代わりに深い安らぎを感じるようになった。
花の光が彼女を包み込むように優しく、心が落ち着くのだった。
ある日、
未来は村の古老からその花の話を聞くことができた。
昔、この屋敷に住んでいた老夫婦がいた。夫婦はとても仲が良く、
特に夫は妻を深く愛していた。
ところが、妻が病に倒れ、
夫はその悲しみをどうしても乗り越えられなかった。
その時、彼が見つけたのが、この花だった。
花には、人の心を映す力があり、愛する人を永遠に守ることができるという言い伝えがあった。
夫はその力を信じ、花を育て続けた。
しかし、時が経つにつれ、花が持つ力は強くなり、老夫婦はどんどん年老いても、決して死ぬことができなくなってしまった。
花が彼らの命を繋ぎ続けたのだ。
その後、夫婦は亡くなることなく、永遠に生き続けることとなったが、花もまた力を失い、静かに咲くことなく枯れてしまった。
屋敷はその後、誰にも触れられずに放置されていた。
未来はその話を聞いて、花がただの植物ではなく、老夫婦の深い愛情と共に生きていたことを理解した。
そして、彼女はもう一度、花を見つめながら、そっとつぶやいた。
「あなたの花、すごくきれい。ありがとう。」
その瞬間、花が微かに光り輝き、優しく風が吹いた。未来の目に涙が浮かんだ。
何も言わず、ただその瞬間を感じ取るしかなかった。
花の力が静かに解き放たれ、老夫婦はついに安らかに眠りについた。
翌朝、花はすっかり枯れ、屋敷も静寂に包まれていた。
しかし、未来はその光景に怖さを感じなかった。むしろ、その静けさの中に深い安らぎを感じ、
心の中で何かが変わったことを実感していた。
彼女は花を見つめながら、心の中で決心した。
[太字]今度は私が、この場所に新しい未来をもたらす番だ。[/太字]
屋敷の庭には、未来がその花を大切に育てる決意を固めた瞬間から、新しい命が芽吹き始めた。
以前は恐れられ、誰も近づかなかったその場所に、新たな希望が芽生え、未来を導くように光が射し込んだ。
その日から、
屋敷の庭には新しい花が咲き始め、村に春が訪れた。
そして、未来は自分の未来を信じて、一歩を踏み出した。
その花が咲き続ける限り、彼女はその場所を守り、
次の世代へと愛を繋いでいくと心に誓った。