二次創作
《 Disc1 》 霧が晴れるまで。
「 これで良し ‼︎ 」
「 うわぁ、 お姉ちゃん 可愛い ‼︎ 」
●●の前髪を持っていた小刀で切ってやれば、七彩の瞳がハッキリと太陽の下に現れた。
* * *
[太字][中央寄せ]【 ●● Side 】[/中央寄せ][/太字]
「 … 落ち着かない…。 」
私は、自分の短くなった前髪を触りながら思わず呟いた。
太陽の光が眩しくて、視界に入って来るモノが多くて、
それだけで頭が混乱してくる。 でも、全然嫌な感じじゃない。
「 そんなに似合ってるのに ? 」
「 それは嬉しいけど、今までの事を考えると…、なんか…。 」
●●が悩む中、ガーネット姫様も私の顔を見て笑みを浮かべた。
「 でも、私は今の方が似合ってると思いますわ。 」
「 姫様の仰る通り ! ●●殿はもっと自信を付けなければなりませんな ! 」
ガーネット姫様を歩くスタイナーさんにも言われると、
本当に顔を上げられなくなってしまう。
うっ… 、コレが普通なんだけど…、何だけどもっ ‼︎
「 それにしても 、 不思議ですね ? ●●と初めて会った時は私と同じ瞳の色でしたわ。 」
「 そう、それなんだよな。 舞台の上でセリフを言った時からずっとそのままなんだよ。
トランスにしても…長過ぎるって言うか…。 」
ジタンとガーネット姫様が心配するのは私の目の色。
鏡は無いが、朝顔を洗う為に川を覗き込んだ時に、自覚した七色の目。
日本人である私にはあり得ない色だ。
ジタンの言うトランスもこんな長い状態はあり得ないらしいし…。
「 私も良く分からないの。 でも悪い事ばかりじゃないから…。 」
ジタンが言うには私がこの目の色になってから、
私の言った言葉がこの世界の言葉で話してる様に聞こえるって言ってた。
って事は ‼︎‼︎
通 訳 機 能 が あ る と 見 た ‼︎
それならずっとこの目で居ても良いかな、ってつい思ってしまった。
「 ボクもそのお姉ちゃんの目、綺麗だって思う。 」
「 ビビ…、ありがとう… ! 」
ビビの言葉に嬉しくなって思わずその帽子を撫でた。
恥ずかしさも少しずつ慣らして行けば良いのだ。
皆んなが似合ってると言ってくれるなら、これからの私はこのままで生きて行こう。
元の世界に戻れる保証は………無いんだしね…。
元の世界のイヤな記憶が表面に浮き出し始めた時、
前を歩いていたジタンが足を止めたのに気付いて、私も我に返った。
目の前には大きな洞窟がある。
ブランクが命懸けで守った地図には、魔の森より南に向かった場所に洞窟があった。
それが、ジタン達が言う '' 霧 '' の上に出る為のたった1つのルート。
「 これが地図に載ってた洞窟 ? 」
「 あぁ、そうらしいな…。 」
「 あ、あの……。 」
「 どうした 、ビビ ? 」
私とジタンが洞窟を見上げていると、ビビがおずおずと口を開いた。
ジタンが優しく問いかけると、ビビも言葉を続ける。
「 氷の洞窟って知ってる ? 」
「 あぁ、聞いた事はあるけど…、ココがそうなのか ? 」
「 うん、多分………。 魔の森に近い所にあるらしいんだ。 」
「 私も聞いた事があります。 氷に覆われた美しい場所だそうですね。 」
ガーネットもビビの言葉に頷き、そっと洞窟を見上げた。
確かに洞窟の中から冷気って言うか…、奥は何だが白っぽい感じだけど…。
「 僕もお爺ちゃんから話を聞いただけなんだけど…、
此処は '' 霧 '' の下から上まで続いてる洞窟なんだって。 」
「 素晴らしい ‼︎ ビビ殿のお爺様は、博識ですなっ !
'' 霧 '' を脱した暁には是非とも感謝のお言葉をお伝えせねば ‼︎ 」
ビビのお爺さんの情報は、今の私達には有り難く、
それを代表するかの様にスタイナーさんが感極まって拳を握って見せる。
うん、ビビのお爺さん凄いと思う…。
私も会えたら お礼を言いた ─── …… 。
「 お爺ちゃんからは色々と教えて貰ったんだけど、もう死んじゃったんだ……。 」
その言葉には全員衝撃が走った。
口にしなかったとは言え、何と無く罪悪感を感じる。
「 そ、それは……。 知らなかったとは言え、失礼致した。 」
「 ううん、気にしなくて良いんだ。 」
スタイナーさんがすぐ謝罪を口にしたが、ビビは帽子を被り直しながら軽く首を横に振った。
そっか…、ビビも大切な人を………亡くしたんだ……。
幼い時に両親を亡くした自分と重なり、私の胸は締め付けられる。
そっとビビの隣に立つと、私はその大きな手袋に包まれた手を握りニッコリと笑った。
「 お爺さん、きっと喜んでるよ。
ビビがこうやってお爺さんから聞いた事を覚えててくれたんだから。 」
「 お姉ちゃん……。 」
一瞬驚いたように目をパチクリと瞬きしていたビビもその手を握り返して笑い返してくれた。
そんな私達を見てから、ジタンは洞窟の方へと足を向けて歩き出す。
「 ま、兎に角 行ってみるしか無いな。 」
そう、兎に角行くしか無い。
ビビのお爺さんが言った事が正しいと祈りながら、私達は氷の洞窟へと足を踏み入れたのだった。