二次創作
霧が晴れるまで。
「 さてと…、立てるか ? 」
ジタンに差し出された手をそっと握り返し、●●はグッと足に力を入れた。
なんとか立ち上がるが、すぐにグラつきジタンの方へと身体が倒れる。
慌ててジタンが支えるも、●●の息遣いは軽く無い。
「 ご、ごめ…。 」
「 無理するなって。 」
●●は、謝罪を口にした。
これで更に迷惑を掛けてるだけだと申し訳なさに苦しくなるが、
ジタンは、気にしていないと優しく声を掛ける。
ガーネットは未だにスタイナーの腕の中で意識を閉ざしたままだ。
もう少しこの場に居た方が良いのではないか。
そう思い、ブランクの方へと顔を向ける。
だが、『 魔の森 』と呼ばれたそれは、
彼等に休ませるという選択肢は与えなかった。
[太字]ゴゴゴゴゴッ ![/太字]
「 クッ… ‼︎ 次は何だ ⁉︎ 」
響く地響き、揺らぐ地面。
立っていたビビがふらつき、ブランクは辺りを見回しながらボヤく。
すると、赤い花が咲いていた場所からいきなり穴ができたかと思うと、
砂煙をあげて出てきたのは赤い花を背負った魔物の軍団だった。
スタイナーは、ガーネットを守ろうと抱き上げ、
ビビが後退りするとその背後からも魔物が沸いてくる。
「 ダメだ ‼︎ 囲まれるぞ ‼︎ 」
ブランクが叫んだ。
「 逃げるが勝ちって事か ! 」
「 急げ ! 」
その声にまずスタイナーが動いた。
大事な姫を守るのが騎士の役目 ‼︎
ガシャ ガシャと重い鎧の音を立ててスタイナーがガーネットを抱いて走り、ビビも続いた。
そんな中、●●は戸惑う。
走るだけの体力なんてまだ戻って来ていない。
かと言って誰かに運んで貰うのも烏滸がましい…。
「 み、皆んな先に行って ‼︎ 後から追いかけ ─── わっ ‼︎ 」
「 バカッ ‼︎ こんな魔物の大群の中、後から走って追いつける筈もねぇだろ ‼︎ 」
ジタンは、●●に怒鳴りながらそのまま彼女を抱き上げた。
「 だって、これじゃ ジタンが ‼︎ 」
「 女の子を犠牲にしてまで生きたかねーよ ‼︎ 分かったら黙ってろ ‼︎ 」
しっかりと●●を抱く手に力を込めてジタンは走り出した。
そんな2人を見てブランクは、パチパチと瞬きを繰り返す。
「 ( オイオイ、あれ本当にジタンか… ? 女に怒鳴りつけるなんて見た事ねぇぞ…。 ) 」
女の子には優しく。
そんなジタンが女の子に向けて声を荒げる。
そして何かを悟った様にニヤリと笑う。
「 ( こりゃガーネット姫じゃ無かったのかもな…。 ) 」
ジタンがボスと対決してまで出て来た本当の理由を察すると、
ブランクは小さく溜息を付くと自分も逃げるべく走り出した。
* * *
ジタンに抱えられながら●●は、言われた通りに黙っていた。
それでも少しでも彼に負担が掛からないようにと、身体を出来るだけ小さくする。
後ろから追いかけてくる魔物の足音が耳に届くが、ギュッと目を閉じて考えないようにした。
危機迫る背後に、足を止めてなんて居られない。
だが、ふとジタンは足を止めてしまった。
ブランクは、ジタンに追いつき足を止める。
「 どうしたんだ ⁉︎ 」
「 森の様子が可笑しい…。 」
「 これ以上可笑しくなるってのか ! どうなってるんだよ、この森は ! 」
辺りを見渡して呟かれたジタンの言葉に、ブランクは噛みつく様に言い返す。
●●が恐る恐る目を開けると、ジタンは森を見上げていた。
つられて同じく森を見ると、心の中の何かがざわめき、肌に鳥肌が立ってくる。
「 も、森が…迫って来る… ? ブランク、姫を頼む ‼︎ このままじゃ全滅するぞ ‼︎ 」
ジタンが何かを感じ取ったのか、そう言うや否や走り出した。
ブランクは隣を走る、ジタンの腕の中にいる●●を横目で見る。
赤い花と対峙した時、彼女からあの炎を纏った鳥が現れたのだ。
「 オイ 、●● ‼︎ またあの鳥呼べねぇのか ? 」
「 え… ? 鳥 … ? 」
「 お前のそのポケットから出て来た赤い光だ ‼︎ '' 召喚士 '' なんだろ ⁉︎ お前 ! 」
●●は、閉じていた目を開けてブランクを見つめるが、何を言っているのか分からなくなった。
確かにあの鳥は光となって自分のポケットから出て来たのは間違い無い。
だが、どうやってやったのか覚えて無いのだ。
困ったかのように視線を泳がせる●●に、ジタンは鼻で笑った。
「 へっ、このくらい切り抜けれなくて、盗賊が名乗れるか ! 」
「 …っ…ジタン…。 」
「 ブランク ‼︎ ●●は、弱ってんだぞ ! 」
「 ( あの力が関わっているのかはわからないが、これ以上無理させる訳にはいかねぇだろ ‼︎ ) 」
もう危機が背中に迫って来ているのは自分も良く分かってる。
●●のあの火の鳥に頼ればもしかしたら危機は、脱すかもしれない。
でもそれで万が一●●の身に何かあれば一生自分を恨むだろう。
地響きと共に聞こえてくる音にジタンは舌打ちを零す。
●●がジタンの背後へと視線を向ければ、それは直に迫っていた。
「 ジタンッ ‼︎ 」
「 ─ ッ ‼︎ 」
真後ろに迫った魔物の刃。
やられると思った次の瞬間だった。
ドンッ と身体を体当たりされ、走っていた道を強引に修正される。
自分の身に起きた事を理解出来た時には、
今までジタンが走っていた場所にはブランクが居た。
本来ならジタンが捕まる所だった魔物の牙に、
ブランクが捕えられたのを見てジタンは思わず足を止めた。
「 ブランクッ ‼︎ 」
「 クッ、ジタン ‼︎ 受け取れぇッ ‼︎ 」
魔物に捕まりながらもブランクはボスから貰った地図を、ジタンへ投げた。
それに合わせてジタンが走り出したのと同時に●●は、
両手をジタンから離して、地図へと手を伸ばす。
何とかそれを受け取り●●は、再びジタン越しにブランクに顔を向けた。
「 ジタン ‼︎ ブランクがっ ‼︎ 」
「 ッ … ── ‼︎ ●● ‼︎ 口を閉じてろ ! 舌を噛む ! 」
ジタンも仲間を心配していない訳が無い。
だが、今はココを乗り切らなければ自分達の命も危ない。
後ろ髪を引かれる思いで1度だけ振り返ると、ジタンは真っ直ぐ前を見た。
迫り来る植物や蔦や木の根に、その身軽さを活かして1つ1つ避けて行く。
ジタンの言葉にその顔を見上げたが、その辛そうな表情に●●は、何も言えなくなった。
根を飛び越えて見えて来たのは森の出口。
ジタンは、●●の頭を抱える様に抱き直すと、
そのまま出口へ飛び込む様に森の外へと転がり出た。
回転が止まると●●は、ヨロっとジタンの下から身を起こした。
「 ッ… ‼︎ …、 森が…… ‼︎ 」
●●の悲鳴と共にジタンは荒い呼吸を繰り返しながらも、同じく身体を起こし目を見開いた。
今自分達が出て来た出口。
其処は植物の蔦がせめぎ合うかの様に隙間も無く、埋まってしまった。
そしてピシピシと嫌な音を立てて『 魔の森 』自体が石化し、一気に変貌して行ったのだった。