「世界征服をしなさい。」

シャーロット・キャンベルは、流れ弾のようにレオナードに言い放つ。

世界征服といえば、未だ嘗て誰も達成したことがない誰しもが憧れたことだった。レオナードにとっては不可能な話だ。いくらどんなに天才でも世界の全てを支配下に置く人間は難しい。

レオナードは『馬鹿なのか？』と小声で口にした後、呆れたように分かりやすい大きなため息を吐いた。

『シャーロット、お前俺に何をさせる気なんだ？』

レオナードは単刀直入にそう聞く。

だがシャーロットは最初から答える気がなかったのか、命令の話の続きを話し始めた。

「まずは、一つの国を征服してください。」
『はあ。質問ぐらい答えろよ。』
「勿論、今のままで征服させる気はないけれど。」
『って、おい！…俺の話聞いてるか？』

レオナードは顔をしかめる。

『世界征服なんて、俺はしないぞ。』
「[太字]特別な力をあげると言っても？[/太字]」

（何を言ってるんだこいつ。それに特別な力って…。）

レオナードは特別な力というのに心当たりがあった。むしろそれしかなかった。
魔法のことだ。

レオナードは魔法が使える人間たちが羨ましくてたまらなかった。なのでレオナードも流石に『うーん』と唸る。

『…まあ考えてもいいだろう。』

レオナードはシャーロットの続きの話を聞く。

「私は他の人に特別な力を授けることができるの。」
『どんな力？』
「例えばこんな力。」

シャーロットはそういうと、突然レオナードの背後から声がした。警察だ。

「レオナード！！隠れても無駄だ！出てこい！」
「レオナードー！！」

声の数から推測するに、恐らく数人いるだろう。警察は魔法の力で空を飛びながら捜索していた。そしてレオナードたちに近づいてくる。

「…！いたぞ！」

見つかった。するとシャーロットが唱えた。

「[太字][漢字]セラムガント[/漢字][ふりがな]光線攻撃魔法[/ふりがな][/太字]

一線の素早い光が真っ直ぐ警察の方に放たれた。そしてよく見ると攻撃を受けた警察が空から落下している。レオナードはその光に見惚れている。

（なんだこれ…。これが魔法か？）

だが周りにいた警察が襲撃に気づいた。しかし気づくのが遅かった。

シャーロットがすぐに次の攻撃を仕掛けた。

「[太字][漢字]バニャッシーク[/漢字][ふりがな]範囲攻撃魔法[/ふりがな][/太字]」

早い。警察が防御魔法を使う前にシャーロットは一気に仕留めた。レオナードは圧倒されてばかりだった。

そして警察は全てシャーロットの手によって殺された。

レオナードは倒れた警察に様子を見に行く。しかし、レオナードが確認した時には既に息を引き取っていた。

（魔法ってこんなに強いのか？）

さらにシャーロットはレオナードにこう言う。

「まだまだいろいろある。あなたに最強スキルをあげる。」
『…本気で言ってるのか？』
「うん。だって世界征服してもらうから。」


『最強スキルがあっても、俺は最強になれない。』