大阪の夜。ネオンの光が無数に輝き、街は騒音と喧騒に包まれていた。その中で、一人の男が歩いていた。タクミ。「ヴァーニャ」のナンバー1ホストであり、冷徹で計算高いその性格は、この街で伝説となっていた。

彼の特徴は、酒とタバコ、そしてパチンコをこよなく愛すること。「酒カス、ヤニカス、パチンカス」の三拍子が揃った男だ。だがその冷徹さが、彼の魅力でもあった。誰もが彼を憎みたくても、憎めない。それがタクミという男の特徴であり、彼の立ち位置だった。

タクミの元には、毎晩多くの客が集まる。だがその中で、タクミの目にとまる客は限られていた。彼は「選ぶべき客」を選び、その客に全力を尽くす。その結果、彼の周りには忠実な仲間や客が集まり、その数字を作り上げていた。

「タクミさん、今日も絶好調っすね！」新入りのホスト、ケンジが声をかける。

タクミは無表情でケンジを見つめた。「調子がいい？そんなもん分かるかよ。」と答えた後、ケンジの目をじっと見つめる。ケンジはその冷徹な視線に圧倒され、言葉を飲み込んだ。

「お前、まだこの店のルールを分かってないな。」タクミはタバコに火をつけ、煙を深く吸い込んだ。「ホストクラブは、数字だけじゃない。お前は俺みたいに、誰にでも手を差し伸べることができるんだ。だけどな、選ぶべき客を選ばなきゃ、意味がない。」

ケンジは黙って頷き、その場を離れた。