心を失った少女 年明けのニューイヤーゲーム編
第七章 コウモリの復習
[中央寄せ]タッタッタッ[/中央寄せ]
静かに、パサッという落ち葉の音が断続する。時々雨粒が傘を叩く。
「さっきので人狼は二人目か」
闇男が応じた。白衣の中にあるフラスコが歩くたびにぶつかり、カチャッという音を立てる。
「だな、何人いるかは聞かされてないし気ぃつけないと」
前は知らされていたんだがな……、しゃぁねぇよ、アッチにとってはただ不利になるだけだからな……、などと二人が話していると。
前方の茂みの方から、ガサガサと音を立てて、四足歩行の、灰色の動物が現れる。
狼だ。濡れた体毛は重苦しく、その目は黄色く、かつ不気味に光り輝いている。
「おうおう、やっと見つけたゼ、ニンゲンよォ?」
「っ……!!」
「オオカミ…………!!」
蘭は敵意を込めて呟く。闇男は何やら薬品を用意しはじめた。フラスコをカチャカチャと鳴らし、忙しなく薬品なり手なりを動かす。その様子を見てオオカミはおどけたように言ってみせた。
「ヒョエー。殺意マシマシジャン!! ま、殺しゃぁしねぇよ、そろそろイベントの時間でなぁアナウンスかけに行くとこなんだここからだとちょっと遠くてなぁ………。殺してる暇ねぇんだ、通してくれ。…………通せ?」
「…………信用できるかよ」
蘭は冷たく言い放つ。オオカミは尻尾を立て、まるで急かすように早口で説明しはじめた。……少々息切れもしているようだ。
「あぁもう、二十分から三十分までイベントやるんだよ、(ゼェゼェ)こっからの距離が遠いんだよ頼むから通してくれよ! っておい!?」
[中央寄せ][大文字][太字]ボフン![/太字][/大文字][/中央寄せ]
突然、地面のあちこちから膨大な量の煙が吹き出した。どうやら、闇男が作っていたのは煙玉らしい。恐らく、オオカミを巻くためだろうが──
「うぅっおぉ! 煙多すぎだよゴホッゴホッ」
「わ、わりぃ狼まくんならこれぐらいでもしねえと、って思って……」
どうやら、煙玉の煙が多すぎて動けなくなってしまったようだ。こんな中で動けると思ったのだろうか?
焦げ臭い香りが辺り一帯に漂う。雨のせいでいっそう、その匂いが目立ってしまった。だが、そんなことは関係ない。雨粒によって煙が拡散、地面との境界がわからなくなる。足元がわからない。蘭たちはたちまち焦り始める。このままでは殺されてしまう……!
「多すぎだわ! つか狼は!?」
……見当たらない。息が荒くなる。ドクドクと激しく心臓が脈を打つ。脂汗が体にベッタリとまとわりつく。左を向く。いない。右を向く。いない。前にも、後ろにも、上を確認するもどこにもいない。
一度、死の恐怖に震えながらも深呼吸をし、近くにはいないと理解した。ここでようやく安心する。闇男は腰が抜けたように座り込んだ。……雨でズボンが湿りすぐに立ち上がった。
………オオカミは闇男が作った煙玉に紛れてどこかへ逃げたらしい。よくもここまでの煙で逃げれるものだ。
「まぁ、助かったってことか……」
蘭は安堵のため息を漏らす。額の汗を拭う。蘭は後ろの二人を見やる。二人は静かに頷いた。
この『ゲーム』で死なないために。
[中央寄せ]再び一行は歩き出した─────[/中央寄せ]
12時20分 イベントを告げるアナウンスが始まった。やはり、少々息切れしたオオカミが話している。
イベント名は、
『コウモリの復習』
[中央寄せ]タッタッタッ[/中央寄せ]
静かに、パサッという落ち葉の音が断続する。時々雨粒が傘を叩く。
「さっきので人狼は二人目か」
闇男が応じた。白衣の中にあるフラスコが歩くたびにぶつかり、カチャッという音を立てる。
「だな、何人いるかは聞かされてないし気ぃつけないと」
前は知らされていたんだがな……、しゃぁねぇよ、アッチにとってはただ不利になるだけだからな……、などと二人が話していると。
前方の茂みの方から、ガサガサと音を立てて、四足歩行の、灰色の動物が現れる。
狼だ。濡れた体毛は重苦しく、その目は黄色く、かつ不気味に光り輝いている。
「おうおう、やっと見つけたゼ、ニンゲンよォ?」
「っ……!!」
「オオカミ…………!!」
蘭は敵意を込めて呟く。闇男は何やら薬品を用意しはじめた。フラスコをカチャカチャと鳴らし、忙しなく薬品なり手なりを動かす。その様子を見てオオカミはおどけたように言ってみせた。
「ヒョエー。殺意マシマシジャン!! ま、殺しゃぁしねぇよ、そろそろイベントの時間でなぁアナウンスかけに行くとこなんだここからだとちょっと遠くてなぁ………。殺してる暇ねぇんだ、通してくれ。…………通せ?」
「…………信用できるかよ」
蘭は冷たく言い放つ。オオカミは尻尾を立て、まるで急かすように早口で説明しはじめた。……少々息切れもしているようだ。
「あぁもう、二十分から三十分までイベントやるんだよ、(ゼェゼェ)こっからの距離が遠いんだよ頼むから通してくれよ! っておい!?」
[中央寄せ][大文字][太字]ボフン![/太字][/大文字][/中央寄せ]
突然、地面のあちこちから膨大な量の煙が吹き出した。どうやら、闇男が作っていたのは煙玉らしい。恐らく、オオカミを巻くためだろうが──
「うぅっおぉ! 煙多すぎだよゴホッゴホッ」
「わ、わりぃ狼まくんならこれぐらいでもしねえと、って思って……」
どうやら、煙玉の煙が多すぎて動けなくなってしまったようだ。こんな中で動けると思ったのだろうか?
焦げ臭い香りが辺り一帯に漂う。雨のせいでいっそう、その匂いが目立ってしまった。だが、そんなことは関係ない。雨粒によって煙が拡散、地面との境界がわからなくなる。足元がわからない。蘭たちはたちまち焦り始める。このままでは殺されてしまう……!
「多すぎだわ! つか狼は!?」
……見当たらない。息が荒くなる。ドクドクと激しく心臓が脈を打つ。脂汗が体にベッタリとまとわりつく。左を向く。いない。右を向く。いない。前にも、後ろにも、上を確認するもどこにもいない。
一度、死の恐怖に震えながらも深呼吸をし、近くにはいないと理解した。ここでようやく安心する。闇男は腰が抜けたように座り込んだ。……雨でズボンが湿りすぐに立ち上がった。
………オオカミは闇男が作った煙玉に紛れてどこかへ逃げたらしい。よくもここまでの煙で逃げれるものだ。
「まぁ、助かったってことか……」
蘭は安堵のため息を漏らす。額の汗を拭う。蘭は後ろの二人を見やる。二人は静かに頷いた。
この『ゲーム』で死なないために。
[中央寄せ]再び一行は歩き出した─────[/中央寄せ]
12時20分 イベントを告げるアナウンスが始まった。やはり、少々息切れしたオオカミが話している。
イベント名は、
『コウモリの復習』