心を失った少女 年明けのニューイヤーゲーム編
[大文字]第四章 害悪[/大文字]
害悪とは、本来助け合うような場面なのに、相手の邪魔をしたり殺し合ったりするはた迷惑な奴らのことをいう。
あるいは──
「参加者いないかな〜」
ある近未来的な、それでいてどこか寂しげに光る街頭を背に、高校生ぐらいの女性が歩いていた。
彼女の役職は『[太字]人狼[/太字]』。人狼とは同じ役職以外の参加者を皆殺しにするとゲームを終了させることができ、残った人狼全員が優勝するという役職。そのため、彼女はさっさとゲームを終わらせるがために、人間を探して歩いている。その目は、はっきり言って死んだ魚の目のようだった。
LED式の街頭は雨の中ぼんやりと輝き、それに照らさせた雨粒は、どこか儚げに揺らめいていた。それに照らされたものは、雨粒だけではないのだが。
人影がぼんやりと映し出された。…………早速獲物を見つけた。と、彼女は猫のように素早く斬りかかる。
「……いたいた。グサッとね」
女性はいきなり手を伸ばし喉を突き刺した。刺された男はあふれる血に動揺していた。痛みすら感じないのか顔面蒼白で膝から崩れ落ちた。『ヒュゥッ』ときれいな喉笛が静かに鳴り響いた。降りしきる雨に、赤黒い血の色が混ざる。
その手に持っている鋏は、鈍くどんよりとした光を放っていた。
「これでようやく一人か〜、先が長いな〜」
無意識に鋏についた血を払う。彼女は、心底ダルそうに雨と混じり合ったその『水たまり』をびしゃっと踏みつけた。
「・・・人狼だ。間違いない。殺るぞ」
──人狼が、悪役ならば。
「いくぞ!!人狼を逃がすな!!」
かならず──。
「まずっ!『狩人』!?」
──狩る者がいるのだ。
『狩人』。人狼の役職を持つものをすべて殺し尽くすことでゲームを終了でき残った参加者全員が優勝となる。
客観的に見れば、狩人の方を応援したくなるだろう。だが
[中央寄せ][太字][大文字]人を殺している事実に変わりはない───[/大文字][/太字][/中央寄せ]
雨はそんな彼らをよそに静かに降っていた。もうじき切れそうな街頭は、なおもぼんやりと、『被害者』を照らし出していた。
害悪とは、本来助け合うような場面なのに、相手の邪魔をしたり殺し合ったりするはた迷惑な奴らのことをいう。
あるいは──
「参加者いないかな〜」
ある近未来的な、それでいてどこか寂しげに光る街頭を背に、高校生ぐらいの女性が歩いていた。
彼女の役職は『[太字]人狼[/太字]』。人狼とは同じ役職以外の参加者を皆殺しにするとゲームを終了させることができ、残った人狼全員が優勝するという役職。そのため、彼女はさっさとゲームを終わらせるがために、人間を探して歩いている。その目は、はっきり言って死んだ魚の目のようだった。
LED式の街頭は雨の中ぼんやりと輝き、それに照らさせた雨粒は、どこか儚げに揺らめいていた。それに照らされたものは、雨粒だけではないのだが。
人影がぼんやりと映し出された。…………早速獲物を見つけた。と、彼女は猫のように素早く斬りかかる。
「……いたいた。グサッとね」
女性はいきなり手を伸ばし喉を突き刺した。刺された男はあふれる血に動揺していた。痛みすら感じないのか顔面蒼白で膝から崩れ落ちた。『ヒュゥッ』ときれいな喉笛が静かに鳴り響いた。降りしきる雨に、赤黒い血の色が混ざる。
その手に持っている鋏は、鈍くどんよりとした光を放っていた。
「これでようやく一人か〜、先が長いな〜」
無意識に鋏についた血を払う。彼女は、心底ダルそうに雨と混じり合ったその『水たまり』をびしゃっと踏みつけた。
「・・・人狼だ。間違いない。殺るぞ」
──人狼が、悪役ならば。
「いくぞ!!人狼を逃がすな!!」
かならず──。
「まずっ!『狩人』!?」
──狩る者がいるのだ。
『狩人』。人狼の役職を持つものをすべて殺し尽くすことでゲームを終了でき残った参加者全員が優勝となる。
客観的に見れば、狩人の方を応援したくなるだろう。だが
[中央寄せ][太字][大文字]人を殺している事実に変わりはない───[/大文字][/太字][/中央寄せ]
雨はそんな彼らをよそに静かに降っていた。もうじき切れそうな街頭は、なおもぼんやりと、『被害者』を照らし出していた。