心を失った少女 年明けのニューイヤーゲーム編
イベントの放送が始まるまで、蘭たちはしばらく無言で歩き詰めていた。
いつの間にか雨がやみ、鉛のように重苦しい曇天が続いていた。乾ききっていない草地がジャリッと嫌な音を出す。湿った匂いがまだ収まらない。
草が足にまとわりつく。気持ち悪かった。無意識に足を振り、眉をひそめる。
自分たちが死なないために。生きるために。誰も口を開けず、ただ足音だけが響いていた。
[大文字]第十章 殺しは殺し[/大文字]
そして、少し経って次のイベント放送が始まった。
『ハァ、ハァ……。イベントのハァ…ハァ……。説明を……。スゥゥゥ、ハァァァ……。はじめま〜す…ハァ……。え〜、次のイベントは《死者蘇生チャーンス☆》です。えぇ……。参加者の中で二人を殺すと、一人を蘇生させられるカードが出現します。以上』
雑なノイズが響いた後、ぷつっと放送が終わった。
その放送を聞いた参加者たちは、あまりにも息を切らしているオオカミに対し面白ーなどと、呑気な雰囲気になっていた。
モブA「なんかオオカミ息切れしてね? w」
モブB「まじ、それなw」
モブ子A「おもしろ〜、あんなやつでも息切れするんだ〜」
モブ子B「あんなやつってw 何があったんだろーねー」
モブ子A「さぁ〜?相当アナウンスするところかろから離れてたんじゃない?」
モブ子B「笑える〜」
彼らが、事の発端を知る機会はないのだろう。このふざけたイベントで、
─────『笑える』のだから。
一方、そのアナウンスを聞いた蘭たちはというと。
「二人殺せば、一人を蘇生、か。ならよぉ、人狼か、適当な害悪片付けて、あの子を蘇生させないか?助けてくれたやつ」
相変わらず引きずっていた。その様子を見て、さっきは納得してただろ、とでも言いたげに闇男は複雑な表情を浮かべる。
このゲームははっきり言って異常だ。人の感性を惑わせる。蘭だって、さっきまでは、失った彼女の思いを担いで生きようっといった気持ちになっていたのに、このイベントで、また後悔の念が戻ってしまった。
……だが、もし本当に彼女を取り戻せるなら。謝りたい。危険な目に合わせてごめんと、頼ってしまってごめんと。そして、命を張ってまで助けてくれて、ありがとうと、感謝の念を伝えたい。そんなことを考えてしまう自分が、どうにも悔しかった。
彼ら、オオカミの思うツボなのはわかっている。
………、人狼や、害悪は、いずれ殺さなければならない。被害が増えるからだ。どのみち、殺さなければいけないのなら。
「…………、わかったよ。そうしよう」
喪失感には、逆らえなかった────。
いつの間にか雨がやみ、鉛のように重苦しい曇天が続いていた。乾ききっていない草地がジャリッと嫌な音を出す。湿った匂いがまだ収まらない。
草が足にまとわりつく。気持ち悪かった。無意識に足を振り、眉をひそめる。
自分たちが死なないために。生きるために。誰も口を開けず、ただ足音だけが響いていた。
[大文字]第十章 殺しは殺し[/大文字]
そして、少し経って次のイベント放送が始まった。
『ハァ、ハァ……。イベントのハァ…ハァ……。説明を……。スゥゥゥ、ハァァァ……。はじめま〜す…ハァ……。え〜、次のイベントは《死者蘇生チャーンス☆》です。えぇ……。参加者の中で二人を殺すと、一人を蘇生させられるカードが出現します。以上』
雑なノイズが響いた後、ぷつっと放送が終わった。
その放送を聞いた参加者たちは、あまりにも息を切らしているオオカミに対し面白ーなどと、呑気な雰囲気になっていた。
モブA「なんかオオカミ息切れしてね? w」
モブB「まじ、それなw」
モブ子A「おもしろ〜、あんなやつでも息切れするんだ〜」
モブ子B「あんなやつってw 何があったんだろーねー」
モブ子A「さぁ〜?相当アナウンスするところかろから離れてたんじゃない?」
モブ子B「笑える〜」
彼らが、事の発端を知る機会はないのだろう。このふざけたイベントで、
─────『笑える』のだから。
一方、そのアナウンスを聞いた蘭たちはというと。
「二人殺せば、一人を蘇生、か。ならよぉ、人狼か、適当な害悪片付けて、あの子を蘇生させないか?助けてくれたやつ」
相変わらず引きずっていた。その様子を見て、さっきは納得してただろ、とでも言いたげに闇男は複雑な表情を浮かべる。
このゲームははっきり言って異常だ。人の感性を惑わせる。蘭だって、さっきまでは、失った彼女の思いを担いで生きようっといった気持ちになっていたのに、このイベントで、また後悔の念が戻ってしまった。
……だが、もし本当に彼女を取り戻せるなら。謝りたい。危険な目に合わせてごめんと、頼ってしまってごめんと。そして、命を張ってまで助けてくれて、ありがとうと、感謝の念を伝えたい。そんなことを考えてしまう自分が、どうにも悔しかった。
彼ら、オオカミの思うツボなのはわかっている。
………、人狼や、害悪は、いずれ殺さなければならない。被害が増えるからだ。どのみち、殺さなければいけないのなら。
「…………、わかったよ。そうしよう」
喪失感には、逆らえなかった────。