心を失った少女 年明けのニューイヤーゲーム編
[大文字][明朝体]第九章 あの情は仇なのか[/明朝体][/大文字]
その頃蘭や雅は『溺れしぬ』の魔法『[漢字]gift wrap water[/漢字][ふりがな]ギフトラップヲータァ[/ふりがな]』(以下『溺死のプレゼント』)によって、水の中から出られない状況に陥っていた。
(くっ…もう息が…まずい、死ぬ……)
(……………………………死にたくない)
その時だった。
「大変だ!『キツナ』が俺に化けている。俺じゃ無理だから倒しに行ってくれ!!」
そう、美空は『毒のある』に化けたのだ。美空が考えついたのは、いま闇男が戦っている『毒のある』を偽物だと言い張り意識をそれさせ、蘭たちを救出する。そしてついでに『毒のある』を倒してしまおうという一石二鳥な作戦だった。
しかし、その作戦にはいくつも大きな穴があった。
「わかった。お前はそいつらを見てろ」
毒でもなげ入れとけ、と『溺れ死ぬ』は去り際に言い残す。
ここまでは作戦通り。しかし
(水の魔法が解けて無い!?)
これは計算外だったのだ。
「ど、どうしよう!?蘭さん!!」
美空は蘭たちを閉じ込めている水をバンバン叩く。ボヨンと跳ね返される。彼らが戻ってきたら絶体絶命。美空はさらに焦る。持っていた刀に手をかけ──。
「そこまでして助けたいもんか?」
叩いていた水に、二人組の影が映し出された。恐る恐る振り返る。腰が抜けて地面に座り込んでしまった。
「あ、あぁ、あ、あ、」
美空は顔を引き攣らせる。
──────────殺される。
「そこまでして助けたいのか?」
『溺れ死ぬ』が再度問いかける。美空は勇気を絞り出して答えた。助けてくれるかもしれないと、本当にかすかな希望を頼りに言葉を紡ぐ。
「はぃ、ふ、二人いや三人は、私の命の恩人で、その、あの、私を助けてくれたから、今度は私が助けたくって、で、あの、その………」
早口でまくし立て、その………と口ごもった美空に対し、『毒のある』が冷ややかに告げる。
「お前が二人のために死ぬってんなら見逃してやってもいいぜ?」
それを聞いた水の中にいる蘭は焦る。
(だめだ!命を無駄にしちゃいけない!)
体を必死に動かして訴える。しかし、みくには届かなかった。
やがて、決心がついたように、美空は勢いよく顔を上げる。戸惑いながらも、力強く。
「わかりました。私が、死にます。三人を、助けてください」
「よぉ~し、んじゃァ、殺人タァ~イム!!」
それからの光景は、とても語れるものではなかった。
しばらくして、蘭たちは開放された。だが、どうしても後味が悪い。
(あの時、助けたからこんな事になったのか?それとも、あの時助けたから俺達だけ生き残れたのか………?くっ、どうしてっ!俺は、まだお前の名前を知らねぇよ………!)
蘭は心の底からあのときの行動を悔やむ。あの時、雅を引き止め、三人で行動していれば、あの時、皆で確認しに行けば、あの時、あんなところに来なければ、
───────こんなことにはならなかったのに。
そんな様子を見て、闇男が話しかける。
「過ぎちまったもんは仕方ねぇよ、ここでは、人間すら弱肉強食なんだ」
闇男は続ける。
「前向けよ、俺等の身代わりになってくれたんだ。そんな顔されちゃ、あちらさんだって後味ワリィだろ?」
「………………………」
蘭はそっぽ向く。闇男はため息を漏らしながら語りかけた。
「後悔してんのはみんな同じだ。でも、立ち止まってたら、せっかく助けてもらった命、枯らしちまうだろ?」
「…………そうだな」
このグダグダは、何回デスゲームに参加させられても治らず、気づけば次のイベントが近くなっていた。
2時18分、残り時間7時間42分残り参加者93名
ところで、オオカミについてだが、彼ら『溺れ死ぬ』達が最初から解毒薬を用意していたらしく、ギリギリセーフでイベントの放送に間に合ったようだった。
その頃蘭や雅は『溺れしぬ』の魔法『[漢字]gift wrap water[/漢字][ふりがな]ギフトラップヲータァ[/ふりがな]』(以下『溺死のプレゼント』)によって、水の中から出られない状況に陥っていた。
(くっ…もう息が…まずい、死ぬ……)
(……………………………死にたくない)
その時だった。
「大変だ!『キツナ』が俺に化けている。俺じゃ無理だから倒しに行ってくれ!!」
そう、美空は『毒のある』に化けたのだ。美空が考えついたのは、いま闇男が戦っている『毒のある』を偽物だと言い張り意識をそれさせ、蘭たちを救出する。そしてついでに『毒のある』を倒してしまおうという一石二鳥な作戦だった。
しかし、その作戦にはいくつも大きな穴があった。
「わかった。お前はそいつらを見てろ」
毒でもなげ入れとけ、と『溺れ死ぬ』は去り際に言い残す。
ここまでは作戦通り。しかし
(水の魔法が解けて無い!?)
これは計算外だったのだ。
「ど、どうしよう!?蘭さん!!」
美空は蘭たちを閉じ込めている水をバンバン叩く。ボヨンと跳ね返される。彼らが戻ってきたら絶体絶命。美空はさらに焦る。持っていた刀に手をかけ──。
「そこまでして助けたいもんか?」
叩いていた水に、二人組の影が映し出された。恐る恐る振り返る。腰が抜けて地面に座り込んでしまった。
「あ、あぁ、あ、あ、」
美空は顔を引き攣らせる。
──────────殺される。
「そこまでして助けたいのか?」
『溺れ死ぬ』が再度問いかける。美空は勇気を絞り出して答えた。助けてくれるかもしれないと、本当にかすかな希望を頼りに言葉を紡ぐ。
「はぃ、ふ、二人いや三人は、私の命の恩人で、その、あの、私を助けてくれたから、今度は私が助けたくって、で、あの、その………」
早口でまくし立て、その………と口ごもった美空に対し、『毒のある』が冷ややかに告げる。
「お前が二人のために死ぬってんなら見逃してやってもいいぜ?」
それを聞いた水の中にいる蘭は焦る。
(だめだ!命を無駄にしちゃいけない!)
体を必死に動かして訴える。しかし、みくには届かなかった。
やがて、決心がついたように、美空は勢いよく顔を上げる。戸惑いながらも、力強く。
「わかりました。私が、死にます。三人を、助けてください」
「よぉ~し、んじゃァ、殺人タァ~イム!!」
それからの光景は、とても語れるものではなかった。
しばらくして、蘭たちは開放された。だが、どうしても後味が悪い。
(あの時、助けたからこんな事になったのか?それとも、あの時助けたから俺達だけ生き残れたのか………?くっ、どうしてっ!俺は、まだお前の名前を知らねぇよ………!)
蘭は心の底からあのときの行動を悔やむ。あの時、雅を引き止め、三人で行動していれば、あの時、皆で確認しに行けば、あの時、あんなところに来なければ、
───────こんなことにはならなかったのに。
そんな様子を見て、闇男が話しかける。
「過ぎちまったもんは仕方ねぇよ、ここでは、人間すら弱肉強食なんだ」
闇男は続ける。
「前向けよ、俺等の身代わりになってくれたんだ。そんな顔されちゃ、あちらさんだって後味ワリィだろ?」
「………………………」
蘭はそっぽ向く。闇男はため息を漏らしながら語りかけた。
「後悔してんのはみんな同じだ。でも、立ち止まってたら、せっかく助けてもらった命、枯らしちまうだろ?」
「…………そうだな」
このグダグダは、何回デスゲームに参加させられても治らず、気づけば次のイベントが近くなっていた。
2時18分、残り時間7時間42分残り参加者93名
ところで、オオカミについてだが、彼ら『溺れ死ぬ』達が最初から解毒薬を用意していたらしく、ギリギリセーフでイベントの放送に間に合ったようだった。