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正義の均衡

#1


深夜の街。煌めくネオンと静かな道を支配するのは、ただ一つの戦い。

「君のしていることは正義だと思っているのか?」
ゼリオス・ダークヴェイルの声は低く、どこか悲しげに響いた。
彼の目の前には、ヒーローであるレオン・カタルシスが立っていた。レオンは鎧のようなスーツを纏い、正義を掲げて戦ってきた。だが、その戦いは、この街の真実に触れることなく、表面だけを撫でていた。

「君は何も分かっていない。」ゼリオスが続けた。
「君が守ろうとしている『正義』は、ただの理想に過ぎない。それは――無駄なものだ。」

レオンはゼリオスの言葉に、一瞬立ち止まった。その声には、ただの悪党の言葉ではない、深い痛みが滲んでいた。

ゼリオスは、ゆっくりと手を広げながら語り始めた。

「私は、小さな頃から、この街の暗闇の中で育った。」彼の目が一瞬、遠くを見るように曇った。「母親は、昼も夜も働き、俺たち兄妹を必死に育てた。しかし、そんな母も、街の貧困と腐敗に引きずられ、命を落としてしまった。」

レオンはその言葉に息を呑んだ。

「君は、どうしてそんなことを……?」
レオンは信じられない表情でゼリオスを見つめる。
「どうして、そんな悲しい過去を抱えて、尚、悪を成すんだ?」

ゼリオスの目は鋭く、だがどこか優しさをも含んでいた。
「この街で、弱者は救われない。正義を語る者たちは、ただ自分の手を汚すことを恐れて、結局、何も変えられないまま過ぎていく。俺の母親のように。」彼の口元が一瞬歪んだ。「だから、俺はこの街を支配する。強くなって、力で全てを制御する。それが、無力な人々を守るための唯一の方法だと気づいたんだ。」

レオンはゼリオスの言葉に動揺を隠せなかった。彼が言う「正義」は、確かに一理あるように思えた。ゼリオスは、彼自身の痛みと向き合わせ、過去の経験から学んだ結果として、今の信念を持っているのだ。

「君が言う通り、弱者は救われないこともあるかもしれない。」レオンは、彼の言葉を反芻しながら答えた。「でも、だからと言って、力で支配することが正義だとは思わない。人々を力で制圧しても、心は自由にならない。僕が守りたいのは、自由に選び、幸せを追い求める権利だ。」

ゼリオスは静かに首を振った。
「選ぶことすら許されない現実を君は知らない。君のその理想は、強者の手のひらの上にあるものだ。」彼の目がレオンを鋭く見つめる。「弱者は、ただ支配されることで生きていくしかない。それを見過ごすことが、どれほど残酷か分かっているのか?」

レオンは彼の目を見返した。その目には、ゼリオスの深い絶望と、心の中で解けない糸が絡んでいるのを感じ取った。しかし、それでも、レオンは自分の信念を曲げることはできなかった。

「だからこそ、僕は戦うんだ。君の方法が正しいかどうかは、今は分からない。しかし、少なくとも僕は、この街に希望を与えたい。」レオンの声には確固たる決意が込められていた。

ゼリオスは静かに息を吐いた。
「君が希望を求めるのは、間違ってはいない。」
そして、彼の顔に一瞬、微かな笑みが浮かんだ。
「だが、君が希望を持つなら、俺のような存在を倒さなければならないだろう。それが正義だ。」

その言葉を最後に、二人の間には深い沈黙が流れた。戦いはもう避けられない。
だが、ゼリオス・ダークヴェイルの中にある「正義」は、彼の過去と痛みから生まれたものであり、その信念に揺らぎはなかった。

そして、レオン・カタルシスの中にある「正義」もまた、決して揺らぐことのないものであった。今、この瞬間、二人の信じる正義がぶつかり合う時が訪れたのだ。

作者メッセージ

この物語を通じて描きたかったのは、正義の形が一つではないということです。ゼリオスとレオン、それぞれの正義には深い理由と背景があり、その信念を貫こうとする姿が、時に互いを傷つけ、時に共鳴し合います。ゼリオスのように過酷な環境で育った人が持つ力への信頼と、レオンのように理想に基づく正義を求める心。どちらも間違っているわけではなく、むしろその背景にある痛みや希望に共感する部分もあるのではないでしょうか。

私は、この物語を通じて「正義」の多面性を考えさせられることが多かったです。どちらが正しいのかを決めるのは簡単ではありませんが、お互いの信念が交差することで新たな視点を得ることができると信じています。

最後に、この物語を読んで、皆さんが「正義」について少しでも深く考えるきっかけになれば嬉しいです。ありがとうございました。

月影

2025/03/16 12:55

月影 ID:≫ 5iUgeXQ3Vbsck
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