佑side.

こんなに喧嘩をしたのはいつぶりだろうか…。

＊＊

「もういい」

久々にそんな言葉を言わせてしまった。

喧嘩理由は完全に俺が悪い。

ちょっとしたことだったのに、俺がそれに対し強く言ってしまったから。

愛は「もういい」といいながら先に学校に行ってしまった。

いつもだったら一緒に行く学校も、今日は一人一人別々で行く。


どうしてこんなことになってしまったんだろう。

俺さえあんなことを言わなければ…。


そんな後悔ばかりが俺の頭の中でぐるぐる回る。

＊＊

家に帰ると、まだ愛は帰ってきていなかった。

数十分後、愛が帰ってきた。

俺は、仲直りすると決めた。

「愛、話したいことがあるんだけど。」

「嫌だ。」

俺はそう拒否されてしまった。

でも、そう言って俺がこう声をかけて拒否されるのは、これが初めてだった。

「愛…！」

「嫌だ、話したくない。」

そう言いながら俺を追い越そうとする愛を止めながら俺は話を続ける。

「お願い、聞いて欲しい。」


そう言うが、愛は聞かずに俺を追い越して行く。

「もう、退いて…！」

そして、ご飯も食べずに2階に上がって行ってしまった。

「愛…、」

俺はそう呟きながら、作ったご飯にラップをかけ、そのまま椅子に座った。

「はぁ、」

俺が悪いのに、愛のこと困らせて、自分だけ悩んだふりして、ため息吐いて。

ため息吐く場所があるだけマシなのにな。

愛はきっと、弱音を吐く場所もないだろう。

今回の喧嘩はそれに近かったから。

愛が少し、自分の教員という仕事について弱音を吐いたことから始まった喧嘩だったから。

俺が、前からその弱音を聞ける人だったらこんなことにはならなかったのに。

そう思いながら、この生活を変えなきゃ、そう思い、俺は2階に上がって行った。

＊＊

寝室のドアをノックして、開けた。

「愛…、さっきはごめん…。」

俺はそういうが、愛は何も言わずにベットに横になっていた。

「本当にごめんなさい…、俺があんなこと言ったから、ごめん…。愛、仲直りしたい…。」

俺がそういうと、愛は少し反応した。

「仲直り……？」

でも、次愛から出てきた言葉は俺の予想を反するものだった。

「…何が仲直り？佑から初めて始まった喧嘩なのに…、なんで仲直りなんか…。」

「愛…！」

「なんで…？佑……、佑…。」

そう言いながら、愛は泣いていた。

あの喧嘩のせいで、愛をここまで追い詰めて、ついには彼氏なのに泣かせてしまった。

朝に戻れたなら…、愛にもっといい言葉を伝えたい…。

「好きだよ」そう言ってあげたい。

でも今の俺にはそんなことを愛にいう資格なんてなかった。