佑side.

俺の名前は佑。

俺には大好きな彼女がいる。

3年前から付き合っていて、今ではなんでも言い合える仲だ。

まぁでもそんな俺らにも喧嘩したりすることは何回もあった。

でもそんなことを乗り越えたからこそ今がある。

＊＊

「おはよう〜…、」

「おはよう、今日早いね。」

今日は何故かいつもは朝が弱く、起きるのが遅い彼女が7：00というこの早い時間に起きてきた。

「珍しいじゃん」

俺はそう言いながら彼女の髪をくしゃっと撫でる。

「ふふっ…、」

少し笑いながら椅子に座ると、少し眠そうに朝ごはんを眺めていた。

「まだ眠い？」

「うん…、」

「なんで起きてきたの？」

「佑にね…、会いたかった…。朝目覚ました時いなかったから…。」

そんなことを言う彼女が愛おしくて仕方がない。

普段、彼女が一度目を覚ます時はまだ俺が隣にいる状態だ。

そして少し話すのが日常だった。

だが、今日は俺が早く仕事に行かないといけなかったため、先に起きてきたのだ。

「ねぇ、なんで起こしてくれなかったの…？」

「だって、寝ておきたかったんだよ。」

そういうと彼女は、「いやだ」と言いながら俺のことを睨みつけていた。

「ほら、食べな。冷めちゃうよ。」

そういうと早速食べ始め、美味しいというような顔でこちらをみてきた。

＊＊

俺たちの仕事は中学校教師。

凄く疲れるし、凄く辛いが、とてもやりがいのある仕事だと思っている。

生徒たちの大事なこの瞬間に立ち会えるというのはどれだけ奇跡なことなのか、俺はこの職業について改めて知ることができた。

＊＊

学校に行けば、家とは違う俺で生徒たちと話す。

「おはようございま〜す！」

「おはよう。」

「あ、先生おはようございま〜す！」

「おはよう。」

まったく、生徒たちは朝から元気だな、そう思いながら教室に向かって歩いて行く。

そうすると急に後ろから声をかけられた。

田中先生だ。

「先生、今日はバレンタインですよ？ちゃんと警告してくださいね！」

「あ、はい。」

そうだ。

うちの学校では毎年バレンタインデーにチョコを渡す人が大勢現れる。

そのせいで、生徒指導の俺が帰りの会の前に放送で警告をすると言う謎の習慣ができてしまったのだ。

＊＊

『渡さないで下さい。繰り返します…、』

そう言っていると、俺も生徒の気持ちを一様理解しているため、つい悲しくなる。

せっかくの一年に一回のバレンタインデーなのに、なんでこんな表に出して渡せないのか。

別に中学校なんだから渡してもいいんじゃないかと思ってしまうが、教師としてそんなことは許されない。

なぜ、教師は学校で配っていいのに、生徒はダメなのだろう。

なぜ、大人だからと言って、子供の生徒たちはダメと言われるのだろう。

なんでも理由があるということは知っているが、流石に理不尽だよな、と思っていた。

＊＊

家に帰ると真っ先に聞こえてくる元気な明るい声。

「おかえり〜！」

「ただいま〜。」

「愛〜！」

俺はそう言いながら彼女に抱きつく。

料理中の彼女は「やめてよ」そう言いながら微笑んでいた。

学校では真面目にしている彼女もこう言う一面があると思うと嬉しい。

「ほんと佑って教師モードと家モード全く違うね〜。」

「それは愛もだろw」

愛からそう言われ俺は正論で返した。

「まぁそうだけど。」

そう言いながら料理を再開する愛を目に、俺は幸せな気分になった。

＊＊

「ご馳走様でした〜！」

ご飯を食べ終わると同時に、俺は愛からチョコを貰った。

「ありがとう〜！」

「上手くできてるかわかんないけど……、どう…？」

愛が作ってくれたチョコを食べると、とっても美味しくてこれ以上のものはなかった。

「めっちゃ美味しい！俺の口に合うし、甘さちょうど良すぎてもう最高！」

「よかったw」

そんな会話をしながら、その後はお風呂に入って、今日はゆっくり寝ることにした。

＊＊

「おやすみ。」

「おやすみ…。」

俺がおやすみ、と言った頃にはもうほぼ愛は寝かけていた。

愛の寝顔を見ると、いつも幸せそうで、可愛らしかった。

こんな感じで今日も1日が終わった。