急遽、空母機動部隊は択捉島の周辺に集められた。
「何するんだろうな。」
搭乗員待機室の椅子にもたれかかっていると、山中が話しかけてきた。
「さあな。演習の可能性もあるだろうな・・・日米関係の悪化が関わっているのは確実だ。」
「そうなのかもなぁ。」
山中は、どっか行った。
『航空隊の乗員は、搭乗員待機室に集合せよ。』
ここ・・？また山中がもどってきた。
「結局こうなのかよ・・・・。」
「何だろうな。」
ゾロゾロと乗員が入ってくる。上官が入ってきたので、すぐに立って敬礼した。
「まあ・・・良い。座れ。」
全員が一瞬、静かになった。
「米軍のハワイの軍港を空襲を行うことが・・・・・決定した。明日の明朝には出港だ。総員、遺書を書いておくように。」
何事も無かったように話すが、その奥底には怒りと困惑、失意・・・色々なものが混じっていた。真っ白い和紙の束を回され、一枚取る。遺書。どう書けばいいんだよ・・・これ。
「なあ、どう書けば良いんだ・・・これ。」
山中に聞いてみた。
「俺はなぁ、孤児だったんだ・・・両親に見捨てられて・・・・書いて渡すやつなんかいない。お前と俺は、同じ機体に乗ってるから、だから死ぬときは一緒だろ。」
「そう・・・だな。」
結局書けなかった。