帳は刀を振り上げ、扉を壊そうとした。
だが、誰かに阻止される。
母親だ。帳の。鬼谷雪。
その顔は酷く焼けただれている。それでも止めたいという感情は伝わる。
帳は母の顔が火傷している理由を知っていた。
だって、張本人だから。
自分が家族のために家を燃やし、呪われた家系を崩壊させ、子孫を残さないようにした。
そんなことはもう帳にとってどうでも良かった。
だから―――。
帳は実の母親を踏みつけ、扉を壊した。

[水平線]
テラン「チッ、かかってない人が居たのかよ…」
魔王「安心しろ。想定内だからな。」
テラン「有難き御言葉。ですが――。」
ラート「それで魔王様。テランの魔法を解いた者が二人。どうしますか？」
トール「それは聞く理由なんですか？跡形もなく殺すのみです。」
エミール「まぁ、当然よね。」
魔王「あぁ。これでようやく一歩を踏み出せた。この調子で、魔法使いの撲滅を――、」
？？「させない。」
ﾄﾞｫﾝｯ！……
魔王「誰だ、名乗れ。」
？？「[太字]フラット・エスフォイス。[/太字]満足した？」
魔王「いいや、貴様を殺せば満足かな。私の魔力は殺すことも出来るんだぞ？」
ﾊﾞﾊﾞｯ…
フラット(以下・F)「魔力Aが余裕で[太字]1000を超えている[/太字]。死にたくなる魔力。そうでしょ？“[太字]S[/太字]”。」
S「そうだねF。じゃあ、終わりにしようか。」
[太字][漢字]フェルニーティヒング[/漢字][ふりがな]怪魔を破滅させる魔法[/ふりがな][/太字]
トール「魔王様！…くっ――」
魔王「心配するな。…では、見せてくれ。お前ら[漢字]魔法使い[/漢字][ふりがな]天賦の才[/ふりがな]の本気と実力を。」

[水平線]
ｶﾞｼｬﾝ！ﾊﾟﾘﾝｯ！
帳は扉を壊した。
果てしない海へと向かって落下する。
帳「早く…出たい……」
ｻﾞﾌﾞﾝｯ…
帳は遠心力とやらで身体に結構な負荷が掛かり、意識が朦朧としていく。
生きて帰れないと悟った帳は、わざと下へ下へと自分の身体を沈ませる。
そして、海底に手を付ける。
だが、その海底は帳の手を引きずり込む。
帳「がほっ……」
沼のようで窒息しそうになるほど。
でも帳はそれで良かった。
もういいんだ。
どんどん沼に沈んでき、完全に見えなくなった。