帳｢本気を出すって言った割にあんまりグイグイ来ないんだな｣
夜凪｢近距離が嫌いなんだよ。――だから私はライフルを使う。｣
、ライフル！？
そう思った時には遅かった。
僕の視界から消えている。魔力探知で探せない。
帳｢どこだ…？っ！｣
後ろで構える音が聞こえたのが唯一の救いだった。
僕は防御壁を展開し、身の危険を回避。
音も微かしか聞こえない。
気付いたことは奇跡だ。
夜凪｢…耳がいいんだね。日本は人の話をよく聞くからかな？｣
帳｢んだそれ、煽ってんの？｣
僕は夜凪に目を向け魔法を放つ。が。
居ない。まただ。
あークソ…………大体わかった。
魔力探知が届かない所に居るのか。
そして、人間では分からないほどの瞬間移動。
対処法は無い。こいつはもう人間卒業してる。
こんなやつ、ガチで居るんだな。
やはり魔法の世界ってのは想像もつかない。
それが面白い。
たけど、今は面白がってる場合じゃない。
早く次の攻撃を――、
そう思い刀を構えたその瞬間、下腹部にライフルの先が当たる感覚―――。
夜凪｢…………油断し過ぎ。｣
ﾊﾟｯ……ﾄﾞﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟｯ!!
下腹部に強烈な痛みが走る。………けど、出血していない。
それに、弾丸はあるのに硬い感覚がない。
帳｢…ゲホッ……おいお前、このライフル、魔法で作っただろ………｣
僕がそういうと、ライフルも弾丸も、シュッと消え去った。やはりか。
夜凪｢鋭い。アメリカなら大丈夫。日本じゃ大惨事。｣
そう話している間も、夜凪は視界から消える。
ちょこまかちょこまか動きやがって…！
今度こそはと攻撃を加えようとしても、瞬間移動のせいで出来ない。
夜凪｢君は防御するので精一杯みたいだね。これじゃあ早く決着がつく。｣
雷電発火も効かない。達磨落としも効かない。
こいつの魔力Aは24なのに、なんでだ………！？
！？今度は首！？
クソ、もう終わるのか…！？
諦め半分、攻撃をしようと刀を振り上げる。
帳｢―――あ。｣
その時ようやっと気付いた。
なんでいつもこんなに気付くのが遅いんだ、僕は。
このライフルが魔法なら斬れる。
でもなぁ……
こいつの速さについていけない限り、攻撃が当たる事はほぼない。
しかも、魔力探知が届かない所まで行ってるくらいだし無理だ。
この速さについていきながら攻撃するくらいだな、方法は。
刀を投げたり、刀から炎とかを飛ばしたり…って、これは杖じゃねぇ！
刀の弱点はこういうのだよな…
……よし、迷った時は気合い！
気合いでやってみるか！
百花繚乱・螺旋斬！
やっぱり瞬間移動するよな。
でもこの攻撃は止めない。その速さに追い付くまで、止める事は出来ない。
もっと速度を上げないと、魔力消費も時期に来るよね。
帳｢よっと！｣
夜凪｢花道？あ、さっきの技で作ったのか。ならこっちもやらせてもらうよ｣
クソ、やっぱはえぇ………！
僕には到底出来ない、やっぱり無理なのか！？
いや駄目だ、無理という感情を捨てないと……！
帳｢間に合え………………っ！………は！？｣
なんで、？
有り得ないって…………
僕は夢でも見てんのか？
目の前の状況に理解が追いつかない。
そのせいで、追い付けそうだった花道が崩れる。
そして、魔法も止まる。
僕は夜凪が持っている物に動揺を隠せなかった。
帳｢お前の武器、ライフルじゃねえのかよ……｣
夜凪が持っている武器は、刀。
それに、僕と同じような物。
夜凪｢これは一定時間だけだよ。君の刀を複製しただけ。本当に一定時間だから。｣
帳｢一定時間だけでも………それはやばいだろ…｣
あ……落ちてく…………
夜凪はまた攻撃を仕掛けようとする。
でも、僕は諦めるしかない。
落ちながら攻撃を食らったら、落ちた時の衝撃と攻撃で即死。
あーもうクッソ………
あー……



『諦めるな』



帳「ｯ！？」
心臓の奥、低く響くような声が身体を木霊した。
どこか聞いたことがある。
懐かしい声だ。
帳「諦めるなって…………そりゃ―――、」
僕は刀を握り締め、魔法を使いながら急降下する。
帳「そうだろ！」
ﾄﾞｫｫｫﾝｯ！
衝撃波と共に着地し、思いっ切り刀を夜凪に振りかざした。