人間試験、なんてものがあったのです。
面白いじゃァないかとやってみたら、案の定、私は失格でした。試験の内容は、飯を食うか、ちゃんと睡るか、自殺しないか。なんてものでした。敦くんに、なんでこんなので失格するんですか、と言われました。
まぁまぁ、仕方ないじゃないか。だって私だよ。
そうだろうな、お前だからな、でも、こんなの失格する人いないでしょう。そう言いあって、きらきらと笑いさざめく探偵社員を眺めながら、私は、少し幸福すぎると思いました。灰色の朝も、飲み干したスープも、いつか撮った富士山の写真も、罐詰の殻も、全てを無下にして、私は死のう死のうとしているのに、それでも、神様はこんな私に、探偵社という素敵な場所を与えてくれたのです。

夏です。入道雲が育っています。もくもくと、どこまでも広がる雲が、飛行機をぱくんと飲み込むのを見て、云い知れぬ幸せな気になります。なにせ私は、人間失格なのですから。