本音に蓋をして、口角を上げた。
笑顔だって、本物とは限らない。
でも、笑っていれば、いい人そうに見える。
なにがあっても、ニコニコ、ニコニコ。
それで、本当に重大なことが起こった時、少し大袈裟に泣き叫ぶ。
鏡の前で、にこりと笑ってみせる。
その顔は、この世界のどんな嘘より嘘くさかった。
それでも、笑っていればみんなから褒められる。
集合写真の時も笑えるし、何か辛いことがあっても笑って誤魔化せる。
私の理想の、いつも『笑顔』で『明るい』女の子。
泣き虫は、卒業だ。
[水平線]
俊真「澄衣!授業始まるよ!」
「あ〜…あは、ごめんごめん。すぐ行くわ〜!」
北西小学校、3年2組。
いつもの教室、いつもの友達。
そして、いつもの笑顔。
教室に駆け込んで、椅子につく。
ガタガタと物申す椅子が、なんだか憎らしかった。
先生「あれ!?どこいった!?ごめん!職員室からとってくるー!」
「いってらっさーい!」
『せんせーしっかりしろよw』
ケタケタと笑う問題児は、[漢字]安土修[/漢字][ふりがな]あづちしゅう[/ふりがな]。
今はかなり丸くなった方だが、幼稚園の時は廊下によく立たされていた。
修「よっしそれじゃー余興を…ウー…ホッ!ウホッ!ウホッ!!!!」
俊真「ちょ待ってやめろってw」
ゴリラの真似をする修をみて、俊真が大爆笑する。
昨日給食中にそれをやられ、俊真が鼻から牛乳を出していたと思う。
なにがそこまで面白いのかは知らない。
でも、みんな笑っているので笑っておく。
綾香「なにが面白いんだか…男子ってほんとガキよね〜」
そう言われ、すぐに笑顔を引っ込める。
幸い、今はコロナ禍だ。
マスクで表情があまり見えないはず。
そう思い、綾香を見ると、彼女も笑いを堪えていた。
いい、なぁ…
そう思いながら、また顔に笑みを貼り付ける。
こうやって、常に口角を上げておこう。
悪い人には、見えないはずだから。
優しくて、明るい女の子に、なれてるよね?