本音に蓋をして、口角を上げた。
引っ越し先は、暖かい場所とは言えなかった。
引っ越してきたばかりの人に、自治体の会長を押し付けるほどに。
それで、母は気に病んでしまった。
クラスは暖かかった。
けれど、私は寂しかった。
小学校5年生、5月。
そこで、私は壊れてしまった。
母の話によると、急に倒れたという。
親友とも別れ、寂しくて寂しくて、あの時叫んででも全員一緒に帰れなかったことをすごく後悔した。
柚葉なら、連絡先をもらった。
だが、あの時のように毎日遊ぶことはできない。
ただ、俊真は中学受験と同時に京都に引っ越すと言っていた。
もう、彼とは会うことができない。
綾香とも、会えない。
帰宅メンバーにも、会えない。
頭の中が、黒い何かで満たされて、モヤモヤと動いた。
サヤエンドウが弾けるように何かが弾けると、私は深い深い水の中に沈んでいった。
そして、堕ちていく私と変わって、小さな小さな女の子が、上に向かって泳いでいった──。
[水平線]
「最初の記憶、集まったかな…」
翡翠色のペンダントを握り締め、寝たままの彼女の元へ急ぐ。
『ねぇ、[漢字]結衣[/漢字][ふりがな]ゆい[/ふりがな]!』
そこで、小さな女の子が声をかけてきた。
「[漢字]玲衣[/漢字][ふりがな]れい[/ふりがな]、どうしたの?」
玲衣「澄衣の記憶が、少し戻ったみたい。」
にし、と得意げに笑う彼女は、幼いながらに私とそっくりだった。
「じゃあ、私はもう少し集めるよ。ここをお願いね。」
玲衣「おっけ。任しといて!」
向こうのほうに駆け出して、モニターをいじる。
小さい体を、踏み台に乗って支えながら。
ガチャリと、ドアを開ける。
そこは、まだ雪の残る春のグラウンドだった。
のどかな匂いが鼻を掠め、思いっきり息を吸うと鼻の奥がしんと冷えた。
履いている靴は、白のバレーシューズからマジックテープのスニーカーに変わっていた。
柚葉とお揃いだと笑い合った、黒いスニーカー。
小さなサイズの靴が、もう過ぎてしまったことだと言うことを実感する。
もう、あの時には戻れない。
それでも、巡ってみよう。
どうして、澄衣があんなふうになってしまったのか、知りたいのだ。
足を一歩前に出すと、さらりとしたボブカットが風に乗った。
引っ越してきたばかりの人に、自治体の会長を押し付けるほどに。
それで、母は気に病んでしまった。
クラスは暖かかった。
けれど、私は寂しかった。
小学校5年生、5月。
そこで、私は壊れてしまった。
母の話によると、急に倒れたという。
親友とも別れ、寂しくて寂しくて、あの時叫んででも全員一緒に帰れなかったことをすごく後悔した。
柚葉なら、連絡先をもらった。
だが、あの時のように毎日遊ぶことはできない。
ただ、俊真は中学受験と同時に京都に引っ越すと言っていた。
もう、彼とは会うことができない。
綾香とも、会えない。
帰宅メンバーにも、会えない。
頭の中が、黒い何かで満たされて、モヤモヤと動いた。
サヤエンドウが弾けるように何かが弾けると、私は深い深い水の中に沈んでいった。
そして、堕ちていく私と変わって、小さな小さな女の子が、上に向かって泳いでいった──。
[水平線]
「最初の記憶、集まったかな…」
翡翠色のペンダントを握り締め、寝たままの彼女の元へ急ぐ。
『ねぇ、[漢字]結衣[/漢字][ふりがな]ゆい[/ふりがな]!』
そこで、小さな女の子が声をかけてきた。
「[漢字]玲衣[/漢字][ふりがな]れい[/ふりがな]、どうしたの?」
玲衣「澄衣の記憶が、少し戻ったみたい。」
にし、と得意げに笑う彼女は、幼いながらに私とそっくりだった。
「じゃあ、私はもう少し集めるよ。ここをお願いね。」
玲衣「おっけ。任しといて!」
向こうのほうに駆け出して、モニターをいじる。
小さい体を、踏み台に乗って支えながら。
ガチャリと、ドアを開ける。
そこは、まだ雪の残る春のグラウンドだった。
のどかな匂いが鼻を掠め、思いっきり息を吸うと鼻の奥がしんと冷えた。
履いている靴は、白のバレーシューズからマジックテープのスニーカーに変わっていた。
柚葉とお揃いだと笑い合った、黒いスニーカー。
小さなサイズの靴が、もう過ぎてしまったことだと言うことを実感する。
もう、あの時には戻れない。
それでも、巡ってみよう。
どうして、澄衣があんなふうになってしまったのか、知りたいのだ。
足を一歩前に出すと、さらりとしたボブカットが風に乗った。