本音に蓋をして、口角を上げた。
恋だの愛だのが流行り始めたのは、小学校3年生くらいの時だったと思う。
『ねぇ、[漢字]澄衣[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]はどう思う?』
「え?あぁ、ごめん。聞いてなかった。」
声をかけてきたのは、3ヶ月前に引っ越してきた[漢字]野沢綾香[/漢字][ふりがな]のざわあやか[/ふりがな]だった。
綾香「そ、そう?じゃあもう一回言うよ?」
澄衣「何?」
綾香「[漢字]俊真[/漢字][ふりがな]しゅんま[/ふりがな]って、天然だよね。」
俊真とは、同じクラスの[漢字]大沢俊真[/漢字][ふりがな]おおさわしゅんま[/ふりがな]のことであり、私の親友だ。
てんねん?てん…天然??
澄衣「えっ…」
綾香「だーかーらー!俊真って、天然だよねって…」
澄衣「はい??」
意味がわからなかった。
頭が真っ白になり、パクパクと、それこそ魚のように口を動かす。
綾香「んー、ま、いっか。掃除しよ、掃除っ!」
箒を取りに行った綾香は、恋する乙女の顔をしていた。
当時は訳が分からなかったが、今はわかる。
くそ、俊真のやつ。
[漢字]この年[/漢字][ふりがな]小学校3年生[/ふりがな]にしてかなりモテてやがる…!
[水平線]
小学校4年生。私が人生で一番寂しい日である、転校の日。
「ねぇ、澄衣。本当にいいの?」
澄衣「何が?」
「何がって、ねぇ…?ほら、俊真のことだよ。」
私が引っ越すと言うことを聞いてから、俊真はなんだか寂しそうだった。
いや、仮にも親友である。寂しそうにしてもらわないと困る。
だが、俊真が落ち込んでいることについて、クラスメイトが冷やかし始めたのだ。
俊真もそのノリに乗るもんだから大変だ。
それで私のクラスメイトは、俊真が私のことを好きだと思い込んでいる。
俊真は、いつもの帰宅メンバーから外れて、下を向いて歩いていた。
親友として、一緒に帰りたかった。
いつもの帰宅メンバーと、騒ぎながら下校したかった。
澄衣「ねぇ!!!!俊真もこっちおいで!なんでそんなとこにいんの!」
声を張り上げて俊真に声をかけると、彼はこっちへやってきた。
やった。これで、一緒に帰れる。
ところが、帰宅メンバーは離れていった。
気を利かせたのかは分からない。
彼らは笑っていた。
途中から合流した別のクラスの大親友。
彼女なら、わかってくれると思った。
澄衣「[漢字]柚葉[/漢字][ふりがな]ゆずは[/ふりがな]!ねぇ、一緒に帰ろっ!」
下を向いたままの俊真を引っ張りながら、彼女に声をかけた。
だが、帰宅メンバーの1人が彼女に耳打ちし、柚葉はこういった。
柚葉「これは、澄衣の為なのよ〜!」
ニヤニヤが抑えられないといったような様子の彼女に、正直失望した。
なんかもう、いいや。
俊真は、自然と離れていった。
親友と過ごす最後の下校時間は、離れ離れに終わった。