March!
#1
始まりの1小節
私は時雨中学校吹奏楽部の1年生、[漢字]荻野奏芽[/漢字][ふりがな]おぎの かなめ[/ふりがな]。…とはいえ、あと2週間ちょっとで2年生になる。
学校見学に来た小学生にはしっかり[漢字]勧誘[/漢字][ふりがな]ナンパ[/ふりがな]済み。
時雨中の吹奏楽部は部員15人からなる部活で…
[小文字]…少ない。[/小文字]
[大文字]少ない少ない少ない!!![/大文字]
人が足りない!!
先生の印象があまりよくないのもあるんだろうけど!
怒られるのなんて日常茶飯事だし、怒られなかったらラッキーって感じ。
私たち1年生も、30人ほど部活見学には来たものの、結局入部したのは7人。残りの20人ほどはどこに行ったんだか。
2年生は8人で、引退した3年生は9人いた。
____このままいくと、新入生6人なのでは?と勝手に思っている。
定期演奏会も無事に終わり、私たちは入学式の練習に追われていた。
「奏芽ー…」
私を呼んだのは、チューバパートの[漢字]松田実歌[/漢字][ふりがな]まつだ みか[/ふりがな]だった。
「どうしたの?あと3分で合奏だけど____」
「…楽譜、家に忘れた」
「言うの遅くない?!…早く先輩に言いに行きなよ」
「だって今、先輩たちピキピキしてるんだよ」
「____ピキピキって?」
実歌が楽譜を忘れるのはよくある。でも先輩がピキピキ、は今まで無かった。
「あ!なんか幹部4人で2対2なって揉めてるらしいで」
いつの間にか隣にいたトロンボーンパートの[漢字]中野由莉[/漢字][ふりがな]なかの ゆり[/ふりがな]。
「幹部が?」
「そうそう。部長とドラムメジャー、副部長とコンミスで綺麗に別れたらしいで」
「そもそも何で揉めてるの?」
「知らんよ、うち盗み聞きしただけやし」
それあんまり良くないんじゃ…。
なんか思ってた割れ方と違うな…。部長と副部長、とかで割れたのかと思ってた。
時計の長針は12を指している。先生がやってきた。
その瞬間、部員は自分の席に座った。
[大文字][太字]お願いします![/太字][/大文字]
「…頭から」
先輩たちは帰って来なかった。揉めてること、先生は知っているのだろうか。
先生は指揮棒をゆっくり振り、曲は始まった。
…つまんないな。
今の気持ちは、それだけ。
入学式の入場曲として演奏する曲は、楽しく演奏するものでもない。それに、1年生はゆっくり入場するので、ずっと同じところの繰り返し。卒業式でも同じ曲は演奏したけど、あまりにも長すぎて記憶がまるで無い。
「…音悪いんだけど」
合奏はすぐに止まった。
「基礎合奏何してたの?」
空気が冷たい。
先生の声は低く、鋭く、圧があった。
音が悪い理由として、久しぶりとか寒いとか色々あるけど、1番の理由は、コンミスが居ないからだと思う。
コンミスは、コンサートミストレスの略で、合奏の前の音合わせやタンギング練習、その他諸々行う「基礎合奏」を仕切る役割を担っている。
「もういいや」
気づくと、先生は消えていた。
学校見学に来た小学生にはしっかり[漢字]勧誘[/漢字][ふりがな]ナンパ[/ふりがな]済み。
時雨中の吹奏楽部は部員15人からなる部活で…
[小文字]…少ない。[/小文字]
[大文字]少ない少ない少ない!!![/大文字]
人が足りない!!
先生の印象があまりよくないのもあるんだろうけど!
怒られるのなんて日常茶飯事だし、怒られなかったらラッキーって感じ。
私たち1年生も、30人ほど部活見学には来たものの、結局入部したのは7人。残りの20人ほどはどこに行ったんだか。
2年生は8人で、引退した3年生は9人いた。
____このままいくと、新入生6人なのでは?と勝手に思っている。
定期演奏会も無事に終わり、私たちは入学式の練習に追われていた。
「奏芽ー…」
私を呼んだのは、チューバパートの[漢字]松田実歌[/漢字][ふりがな]まつだ みか[/ふりがな]だった。
「どうしたの?あと3分で合奏だけど____」
「…楽譜、家に忘れた」
「言うの遅くない?!…早く先輩に言いに行きなよ」
「だって今、先輩たちピキピキしてるんだよ」
「____ピキピキって?」
実歌が楽譜を忘れるのはよくある。でも先輩がピキピキ、は今まで無かった。
「あ!なんか幹部4人で2対2なって揉めてるらしいで」
いつの間にか隣にいたトロンボーンパートの[漢字]中野由莉[/漢字][ふりがな]なかの ゆり[/ふりがな]。
「幹部が?」
「そうそう。部長とドラムメジャー、副部長とコンミスで綺麗に別れたらしいで」
「そもそも何で揉めてるの?」
「知らんよ、うち盗み聞きしただけやし」
それあんまり良くないんじゃ…。
なんか思ってた割れ方と違うな…。部長と副部長、とかで割れたのかと思ってた。
時計の長針は12を指している。先生がやってきた。
その瞬間、部員は自分の席に座った。
[大文字][太字]お願いします![/太字][/大文字]
「…頭から」
先輩たちは帰って来なかった。揉めてること、先生は知っているのだろうか。
先生は指揮棒をゆっくり振り、曲は始まった。
…つまんないな。
今の気持ちは、それだけ。
入学式の入場曲として演奏する曲は、楽しく演奏するものでもない。それに、1年生はゆっくり入場するので、ずっと同じところの繰り返し。卒業式でも同じ曲は演奏したけど、あまりにも長すぎて記憶がまるで無い。
「…音悪いんだけど」
合奏はすぐに止まった。
「基礎合奏何してたの?」
空気が冷たい。
先生の声は低く、鋭く、圧があった。
音が悪い理由として、久しぶりとか寒いとか色々あるけど、1番の理由は、コンミスが居ないからだと思う。
コンミスは、コンサートミストレスの略で、合奏の前の音合わせやタンギング練習、その他諸々行う「基礎合奏」を仕切る役割を担っている。
「もういいや」
気づくと、先生は消えていた。
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