# 後悔はディナーの後で .
王都の中心部にあるルミナリス家の屋敷に到着すると、彼女は疲れた体を引きずりながら自室へと向かった。
メイドが差し出す紅茶にも手を付けず、ベッドに腰掛けて再び思考を巡らせる。
( 隣国の第一皇子に会う、か ... 。けれど、それはリスクが高すぎる。確実なのは、リリアーナの持つアイテムを破壊すること。でも、どうやって彼女に気づかれずに ... )
その時、彼女の脳裏に、一つの可能性が浮かび上がった。
ゲームの攻略情報の中に、特定のアイテムを解析する[太字]「鑑定」[/太字]というスキルがあったことを思い出したのだ。
しかし、そのスキルはゲームの主人公であるリリアーナしか使えないはずだった。
( もし私がそのスキルを使えるとしたら ? いや、無理ね。だって私は悪役令嬢なのだから ... 。でも ... )
セレスティアはおもむろに立ち上がり、部屋の隅に位置する書斎へと向かった。
本棚に並んだ古びた魔術書を手に取り、ページをめくる。
彼女の記憶が確かなら、鑑定スキルは、使用者とアイテムとの間に流れる魔力を読み取ることで発動する。
つまり、もし彼女がリリアーナと同等の魔力を持っていれば _____ [太字]セレスティアにも鑑定スキルが使える。[/太字]
( リリアーナは、たしか世界を救う為に備えられた高位魔法師レベルの魔力持ち。だから彼女の魔力は、私とは比較にならないはず ... )
しかし、セレスティアは諦めなかった。
ゲームでは 悪役令嬢もまた、非常に高い魔力を持っていたはずだ。
ただ、その魔力の制御が下手だったために、いつも暴走させてしまっていた。
もし、その魔力を意図的に制御することができれば、もしかしたら ...
( まずは、自分の魔力を正確に把握しないと。この魔術書に、魔力を測定する呪文が載っていたはず ... )
セレスティアは、魔術書を真剣な表情で読み進めた。
ページをめくるごとに、彼女の顔に希望の色が戻っていく。
追放ルートを回避し、自らの運命を切り開くための、新たな手がかり。
それは、彼女の内に秘められた、[太字]膨大な魔力[/太字]だった。