# 華麗に演じて魅せましょう .
セリーナは絶句し、お母様は腕を組み、暗い窓の外を見つめている。
( ... 要するは、"戦争国への生贄として、王家に近い血族の令嬢を、一刻でも早く皇妃として召し上げろ"ってことね )
元戦争国、ましてや憎むべき国からの嫁となれば、平民たちも大臣たちも遠慮なく石を投げるだろう。
特に、結婚式などは必ずと言っていいほど皆酒が入る。水を投げかけるつもりが、うっかり水瓶ごと投げつけてくるかも知れない。
それでも、と再度手紙を読み返す。何度読み込んでも、王家からは1人も令嬢候補を出していない。
つまり、王家はこの件になんの関与もしたく無いということ。
( 王家らしいといえば、王家らしいんだけれど。 )
手紙を封に戻し、側付のメイドに保管しておくよう伝える。
2人の様子を見ていたお父様が軽く溜息を吐くと、お母様に座るよう促す。
やがて料理長の気遣いにより普段通りの食事が運ばれ、夕食が始まる。
各々無言で食事を続けていると、カチャンと音が鳴り、お母様が食器を置いた。
「リーゼ。」
ただ静かな、だが普段よりも緊迫した声色で私を呼ぶ。
何度も教えられた自然な笑顔で、はい、と返事をする。
お母様が一拍置いて、口を開く。
「_____ セリーナの身代わりとして、おまえが嫁ぎなさい 」
時間が止まった気がした。