# 後悔はディナーの後で .
馬車の車輪が軽快な音を立てる中、セレスティアは目を閉じ、思考を巡らせる。ゲームの知識は、この状況を打開するための唯一の手がかりだ。
国外追放ルートは、セレスティアがヒロインであるリリアーナを虐める悪役令嬢と見なされ、殿下や周囲から糾弾されることで始まる。
( 追放ルートに乗るしかないの? 誰か、魅了が効かない人 ... )
セレスティアは、記憶の糸をたぐり寄せ、ゲームの登場人物を一人ひとり思い浮かべていく。
( あるとすれば ... )
ゲームでは、この後に登場する隣国の第一皇子。
前世はあまり興味を持っていなかった為、顔や名前は覚えていないが ...
彼は あらゆる魔法を跳ね返す特殊な体質を持つ。
もし彼と出会うことができれば ... 。
しかし、それはあまりにも不確実な賭けだ。
ゲームの通りに事が進むとは限らない。
そして、追放されるまで、ただ待っているだけでは、事態は悪化する一方だ。
( もっと他に、方法を ... )
セレスティアは ふと、リリアーナが使っている「アイテム」の存在に思い至る。
アイテムは、使用者と相手との間に、強力な精神的な繋がりを生み出す。
それは、通常の方法では破ることはできない。
しかし、アイテム本体を破壊することができれば、魅了は解けるはずだ。
( でも、どうやって ... あのアイテムは常にあの女が持っている。それに、破壊しようとしたら、私が彼女を虐めていると誤解されるのがオチよ )
堂々巡りの思考に、セレスティアはため息をついた。
その時、馬車がガタッと大きく揺れ、セレスティアは窓の外に目をやった。
王都の中心部、貴族街へと差し掛かっている。
「セレスティア様、もうすぐご自宅でございます」
御者の声に、セレスティアは現実へと引き戻された。
( 今は、落ち着いて考えるしかないわね。焦ってもいいことはない )
セレスティアは、心を落ち着かせ、再び目を閉じた。
ゲームの知識。それをどう使うか。
この世界を、この物語を、どう変えていくか。
セレスティアの戦いは、今、始まったばかりだった。