或る田舎の話
俺の周りの人は、皆ちょっと変だ。
なぜって、自分のことじゃないのに泣くから。
おととい、俺がリストカットをしていたとき。例の目に見えない煙が出ていく感覚にうっとりしていたのに、突然姉さんにカッターを取り上げられた。
カッターを握る俺の腕ごと掴んだ姉さんは、ほろほろと涙を溢しながら俺を睨んだ。
「何でこんなことするの。いっつもいっつも」
俺は何も答えなかった。どうせ姉さんも理解しない。姉さんは自分の全部に満足しているから。自分を取り巻く環境にも、自分自身にも、最大限の愛情を寄せている。だからきっと煙が溜まっていく感覚なんて知らないんだろう。そして姉さんは、たった一人、俺のこの行為だけが気に入らないらしい。
「あんた、母さんがあんたのそれのせいで泣いてるの知ってるよね?母さんを困らせたいわけ」
「違う」
自分でも、あれ、と思うくらい強い声が出た。変な気分だった。自分で感じているよりも、母さんのことが好きみたいだった。
「じゃあ何でやるの。あたし、あんたのそういうところが嫌い」
姉さんはとうとうしゃくり上げながら座り込んだ。
「あんた、頭おかしいよ」
姐さんにこういう暴言を吐かれるのは初めてじゃない。喧嘩したときは大抵そういった言い合いになる。だけど、このときの姉さんの言葉には、いつもより感情がこもっている気がした。
「俺は、頭おかしいの?」
聞き返したら、姉さんは「馬鹿!」と叫んでカッターを放り投げ、部屋を走って出ていった。
でも、俺からしたら、煙を溜めずに生きていける人の方が、よっぽど頭がどうかしてるんじゃないかと思うんだ。一人残された部屋の中で、俺は呆然と呟いた。
なぜって、自分のことじゃないのに泣くから。
おととい、俺がリストカットをしていたとき。例の目に見えない煙が出ていく感覚にうっとりしていたのに、突然姉さんにカッターを取り上げられた。
カッターを握る俺の腕ごと掴んだ姉さんは、ほろほろと涙を溢しながら俺を睨んだ。
「何でこんなことするの。いっつもいっつも」
俺は何も答えなかった。どうせ姉さんも理解しない。姉さんは自分の全部に満足しているから。自分を取り巻く環境にも、自分自身にも、最大限の愛情を寄せている。だからきっと煙が溜まっていく感覚なんて知らないんだろう。そして姉さんは、たった一人、俺のこの行為だけが気に入らないらしい。
「あんた、母さんがあんたのそれのせいで泣いてるの知ってるよね?母さんを困らせたいわけ」
「違う」
自分でも、あれ、と思うくらい強い声が出た。変な気分だった。自分で感じているよりも、母さんのことが好きみたいだった。
「じゃあ何でやるの。あたし、あんたのそういうところが嫌い」
姉さんはとうとうしゃくり上げながら座り込んだ。
「あんた、頭おかしいよ」
姐さんにこういう暴言を吐かれるのは初めてじゃない。喧嘩したときは大抵そういった言い合いになる。だけど、このときの姉さんの言葉には、いつもより感情がこもっている気がした。
「俺は、頭おかしいの?」
聞き返したら、姉さんは「馬鹿!」と叫んでカッターを放り投げ、部屋を走って出ていった。
でも、俺からしたら、煙を溜めずに生きていける人の方が、よっぽど頭がどうかしてるんじゃないかと思うんだ。一人残された部屋の中で、俺は呆然と呟いた。