或る田舎の話
いとこのあき君がすいかを届けにきた。果実に詰まった甘い水を舐めていると、手首の包帯をあき君に見とがめられた。
「お前、自分の身体、もっと大切にしろよ。そうやって意味もなく傷作って、どうしたいってんだ」
意味はある、そう言おうと思ったんだけれど、やめた。煙がどうとか言ったって、頭がおかしいと思われるだけだろうから。俺は黙ってぼんやりとほほ笑んだ。母さんの真似をしてみたのだ。あき君は眉をひそめて低い声で言った。
「とにかく、もっと未来のことを考えて生活しろよ。お前、まだ九歳なんだからさ」
お前、まだ九歳なんだからさー。その言葉は俺の頭にすとんとつきささり、抜けなくなった。そうか、そうだな、俺はまだ九歳なんだ。
二十歳のあき君からしたら、「たったの」九年だろう、でも、俺にとっては全人生だ。たったの九歳。まだ九歳。突然、人生が単純で面倒な事務作業のように思えてきた。俺、あき君の年齢すらも届かないうちに、疲れて死ぬかもしれない。ましてや母さんやお婆ちゃんほどまで生きるなんて、多分無理だ。自分があと十年も生きている、そんな想像すらつかない。
俺の内側で、だるい煙が面積を増やした。
ああ、切りたい、今、手首を切りたい。煙が身体の中で増えていく。手足に満ちて、頭からつま先まで覆う煙。俺はきっとこの煙に殺される。
口の中ですいかが味をなくした。あき君はいぶかしげに俺を見ている。
「どうした」
あき君の声に、俺は顔を上げた。
「何でもない」
「お前、自分の身体、もっと大切にしろよ。そうやって意味もなく傷作って、どうしたいってんだ」
意味はある、そう言おうと思ったんだけれど、やめた。煙がどうとか言ったって、頭がおかしいと思われるだけだろうから。俺は黙ってぼんやりとほほ笑んだ。母さんの真似をしてみたのだ。あき君は眉をひそめて低い声で言った。
「とにかく、もっと未来のことを考えて生活しろよ。お前、まだ九歳なんだからさ」
お前、まだ九歳なんだからさー。その言葉は俺の頭にすとんとつきささり、抜けなくなった。そうか、そうだな、俺はまだ九歳なんだ。
二十歳のあき君からしたら、「たったの」九年だろう、でも、俺にとっては全人生だ。たったの九歳。まだ九歳。突然、人生が単純で面倒な事務作業のように思えてきた。俺、あき君の年齢すらも届かないうちに、疲れて死ぬかもしれない。ましてや母さんやお婆ちゃんほどまで生きるなんて、多分無理だ。自分があと十年も生きている、そんな想像すらつかない。
俺の内側で、だるい煙が面積を増やした。
ああ、切りたい、今、手首を切りたい。煙が身体の中で増えていく。手足に満ちて、頭からつま先まで覆う煙。俺はきっとこの煙に殺される。
口の中ですいかが味をなくした。あき君はいぶかしげに俺を見ている。
「どうした」
あき君の声に、俺は顔を上げた。
「何でもない」