或る田舎の話
目が覚めたとき、俺は畳の上で寝ていた。頭に冷えピタが貼ってある。
「熱中症だって」
俺の顔を覗いていたらしい姉さんが、ぽつんとそう言った。
「宿題してたら、円堂先生が気絶したあんた抱えて家に来るから、びっくりしちゃった。お母さんも買い物でいないし、あたし1人だったから、どうしていいか分からなくて。とりあえず、やす兄呼んで診てもらったの。あんた、今度やす兄にお礼言いなさいよね」
あとやす兄があんたにお大事にって言ってたよと、姉さんはつけ加えた。
やす兄とは、隣の家の1人息子のことだ。やす兄は大学に行くために東京に行き、医学の勉強をしてから、こっちに戻ってきた。一度村を出た人は、殆どもう帰ってこないから、やす兄は変わり者だと言われた。けれど、村でたった1つの小さな病院を立ち上げて、大人たちにありがたがられている。もっとも、お婆ちゃんの病気はやす兄の手にも負えなくて、総合病院に行くことになった。病名は俺には分からないけれど、大人たちは脳が何とかと言っていた。
「何ぼーっとしてるのよ。あたしに何か言うことないの」
むっとした顔の姉さんに頰をつつかれて、俺は小さな声で言った。
「ありがと」
「うん。お母さんもう帰ってきて、お昼作ってくれてるよ。そうめんだって。あんたが起きられそうなら来てって言ってたけど、どうするの」
姉さんは優しい声になって、俺を見つめた。
「行くよ」
俺はそう答えて立ち上がった。姉さんが「起きてすぐ食べられるくらいなら軽症ね」と俺をからかった。
「熱中症だって」
俺の顔を覗いていたらしい姉さんが、ぽつんとそう言った。
「宿題してたら、円堂先生が気絶したあんた抱えて家に来るから、びっくりしちゃった。お母さんも買い物でいないし、あたし1人だったから、どうしていいか分からなくて。とりあえず、やす兄呼んで診てもらったの。あんた、今度やす兄にお礼言いなさいよね」
あとやす兄があんたにお大事にって言ってたよと、姉さんはつけ加えた。
やす兄とは、隣の家の1人息子のことだ。やす兄は大学に行くために東京に行き、医学の勉強をしてから、こっちに戻ってきた。一度村を出た人は、殆どもう帰ってこないから、やす兄は変わり者だと言われた。けれど、村でたった1つの小さな病院を立ち上げて、大人たちにありがたがられている。もっとも、お婆ちゃんの病気はやす兄の手にも負えなくて、総合病院に行くことになった。病名は俺には分からないけれど、大人たちは脳が何とかと言っていた。
「何ぼーっとしてるのよ。あたしに何か言うことないの」
むっとした顔の姉さんに頰をつつかれて、俺は小さな声で言った。
「ありがと」
「うん。お母さんもう帰ってきて、お昼作ってくれてるよ。そうめんだって。あんたが起きられそうなら来てって言ってたけど、どうするの」
姉さんは優しい声になって、俺を見つめた。
「行くよ」
俺はそう答えて立ち上がった。姉さんが「起きてすぐ食べられるくらいなら軽症ね」と俺をからかった。