あの星空はどこに
小学生になったばかりの事だった。その日は空気が住んでいて、田舎にある私の家からは、星がまるで、赤ちゃんの時にふざけてまき散らした白いビーズのように、たくさん…いや、それでは表せないほどたくさんの星が、瞬いていた。
その日、疑問に思った。
― 星は、いったいなぜあそこにあるのだろうか ―
私はその年の誕生日プレゼントに、宇宙についての図鑑を買ってもらった。しかし、内容が全く頭に入ってこなかった。惑星状星雲?ダークマター?なんだそれ。でも、あきらめなかった。学校の休み時間、みんながはしゃいで、周りが巨人に襲撃されたようにどたどたしても、図鑑を読み続けた。
しかし、ある日、クラスのお調子者の男子が大声で、みんなに聞こえるように言った。
「お前ってさ、いっつもいっつも勉強ばっかりしてるよね。ほんと、つまんないやつだよな。」
これがきっかけだった。私はそれから、皆に嫌われないようにも、宇宙について知ろうとするのをやめた。
よく考えてみると、確かに、みんなと違うことをして、私ってほんとに、目立ちたがり屋で、つまんないよね。
それから4年たった。今は小学5年生になった。
「お母さん、行ってきまーす」
「はいはい。気を付けるのよ。」
私はいつも通り、重いランドセルを背負って、学校に歩いて行った。
「あ、なつみちゃん、おはよう!」
私の親友のナナコが、楽しそうに手を振ってきた。
「ああ、おはよう。」
「ねえなつみちゃん、今日、理科で何やるか知ってる?星座だって!」
そういえば、ナナコは星座が出てくるアニメが好きって言っていた。まあでも、宇宙とか星座については全く知らないらしいが。
「そうなんだ、楽しみだね。」
別に興味なんてないけど、親友の楽しそうな顔を見ると、水を差すことはできないと思い、適当に返事をした。
結構飛んで3時間目になった。
「はい、今日は夏の星座についてやります。」
先生が言った。
「さて、まずはこの星座。説明してくれる人はいるかな?」
先生が黒板に一枚の大きな紙を張った。
見覚えがある。
考える間もなく、私は体が勝手に手を挙げた。
「さそり座です。真ん中に赤く輝いている一等星は、アンタレスといいます。ギリシア神話では、神様を馬鹿にしたオリオンに天罰を与えるために、大地の女神ガイアから送られてきたサソリです。」
何で知ってんだお前。自分でもそう思ったぐらいだ。
「よく知ってますね!すごいですなつみさん。」
褒められて、自分の顔が、まるでアンタレスみたいに赤くなるのがわかる。
そこから先、琴座とか、わし座、白鳥座とか、夏の大三角とか色々出てきたが、どれもすらすらと説明できた。
放課後、帰る途中にまた、ナナコに声をかけられた。
「すごかったよ!なつみちゃん。」
親友に褒められた。すっげえうれしい。
「さすがだね。なつみちゃん、一年生の時、いつも図鑑読んでいたもんね!」
…え?
そうだ。思い出した。私が4年前、どんな人物だったか。3年の時、隣のクラスの子が給食の牛乳を盛大に鼻からふき出した時のインパクトが強すぎて、それより前のことを全然覚えていなかったけれど、今、思い出した。
「ありがとう。よく覚えているね。それじゃ、ばいばい。」
そういって早歩きで家に帰った。
自分の部屋に戻って、ランドセルをベッドに放り投げると、本棚から、昔買ってもらった、宇宙の図鑑を引っ張り出した。適当に開いたページが、いつも覚えるのに苦戦していた、宇宙の作りについてのページだった。
それを見て、懐かしい気持ちになった。まだ太陽が沈んだばかりの空には、金星か火星のどっちか忘れたが、一番星がきらめいていた。
そのときに思った。あの時、宇宙をつまらないと思った私が、本当に馬鹿だと思った。
どこが?こんなに謎だらけで、神秘的な宇宙が、つまらない?違うにきまってる。これがつまんなかったら、世の中のなにも楽しめないと思うほど、面白いじゃないか!
こうして、私の夢は始まった。
絶対に、かなえてやる!
つづく
その日、疑問に思った。
― 星は、いったいなぜあそこにあるのだろうか ―
私はその年の誕生日プレゼントに、宇宙についての図鑑を買ってもらった。しかし、内容が全く頭に入ってこなかった。惑星状星雲?ダークマター?なんだそれ。でも、あきらめなかった。学校の休み時間、みんながはしゃいで、周りが巨人に襲撃されたようにどたどたしても、図鑑を読み続けた。
しかし、ある日、クラスのお調子者の男子が大声で、みんなに聞こえるように言った。
「お前ってさ、いっつもいっつも勉強ばっかりしてるよね。ほんと、つまんないやつだよな。」
これがきっかけだった。私はそれから、皆に嫌われないようにも、宇宙について知ろうとするのをやめた。
よく考えてみると、確かに、みんなと違うことをして、私ってほんとに、目立ちたがり屋で、つまんないよね。
それから4年たった。今は小学5年生になった。
「お母さん、行ってきまーす」
「はいはい。気を付けるのよ。」
私はいつも通り、重いランドセルを背負って、学校に歩いて行った。
「あ、なつみちゃん、おはよう!」
私の親友のナナコが、楽しそうに手を振ってきた。
「ああ、おはよう。」
「ねえなつみちゃん、今日、理科で何やるか知ってる?星座だって!」
そういえば、ナナコは星座が出てくるアニメが好きって言っていた。まあでも、宇宙とか星座については全く知らないらしいが。
「そうなんだ、楽しみだね。」
別に興味なんてないけど、親友の楽しそうな顔を見ると、水を差すことはできないと思い、適当に返事をした。
結構飛んで3時間目になった。
「はい、今日は夏の星座についてやります。」
先生が言った。
「さて、まずはこの星座。説明してくれる人はいるかな?」
先生が黒板に一枚の大きな紙を張った。
見覚えがある。
考える間もなく、私は体が勝手に手を挙げた。
「さそり座です。真ん中に赤く輝いている一等星は、アンタレスといいます。ギリシア神話では、神様を馬鹿にしたオリオンに天罰を与えるために、大地の女神ガイアから送られてきたサソリです。」
何で知ってんだお前。自分でもそう思ったぐらいだ。
「よく知ってますね!すごいですなつみさん。」
褒められて、自分の顔が、まるでアンタレスみたいに赤くなるのがわかる。
そこから先、琴座とか、わし座、白鳥座とか、夏の大三角とか色々出てきたが、どれもすらすらと説明できた。
放課後、帰る途中にまた、ナナコに声をかけられた。
「すごかったよ!なつみちゃん。」
親友に褒められた。すっげえうれしい。
「さすがだね。なつみちゃん、一年生の時、いつも図鑑読んでいたもんね!」
…え?
そうだ。思い出した。私が4年前、どんな人物だったか。3年の時、隣のクラスの子が給食の牛乳を盛大に鼻からふき出した時のインパクトが強すぎて、それより前のことを全然覚えていなかったけれど、今、思い出した。
「ありがとう。よく覚えているね。それじゃ、ばいばい。」
そういって早歩きで家に帰った。
自分の部屋に戻って、ランドセルをベッドに放り投げると、本棚から、昔買ってもらった、宇宙の図鑑を引っ張り出した。適当に開いたページが、いつも覚えるのに苦戦していた、宇宙の作りについてのページだった。
それを見て、懐かしい気持ちになった。まだ太陽が沈んだばかりの空には、金星か火星のどっちか忘れたが、一番星がきらめいていた。
そのときに思った。あの時、宇宙をつまらないと思った私が、本当に馬鹿だと思った。
どこが?こんなに謎だらけで、神秘的な宇宙が、つまらない?違うにきまってる。これがつまんなかったら、世の中のなにも楽しめないと思うほど、面白いじゃないか!
こうして、私の夢は始まった。
絶対に、かなえてやる!
つづく