「じょ、冗談......だよね？」

「ヒナは僕たちが冗談なんて言うと思う？」
「思う」
「思うなよ」

リオンに頭をチョップされる。
うーん、ツッコミがキレキレ。チョップは全然痛くないけど。
前世は関西人だったんじゃない？

......なんて、こんなこと言っている場合じゃない。

私は目の前にそびえ立つお家を眺めた。
大きい。普通に大きい。

どうやらこの家は二人が用意してくれたみたいだ。

...騎士って、そんなにお給料を貰えるお仕事なんだろうか。
二人ともまだ全然若いよね？
無理してないといいけど...。

というか、相談とか、事前に話くらいしてくれてもいいのに。
まあ話をしてもらったところで出せるお金なんて一つも持ってないけどさ。

...私って、本当にお金がかかるだけの存在なのでは？
どうしよう。これからはせめて、........................どうしよう。
家事を頑張ってみるとか。

何だか自分が情けなくなって、はあ、と小さなため息が出る。

すると、視界の端っこで、二人がびくりと肩を跳ねさせるのが見えた。
それではっと我に返る。

何か勘違いをさせてしまったかもしれない。

「あのね、違うの...」
「ごめん。気に入らなかった？」
「しばらくはここで過ごすことになるけど、すぐに建て替えるから...」

やっぱり勘違いをしている！
違う、嬉しいけど、申し訳なくなっちゃっただけ。
でもそれも言わないと伝わらないよね。反省だ。

普通に言っても聞いてくれなさそうなので、私はがばりと二人を抱き締めた。
うう、腕が短くて二人を抱き締めきれない。

「勘違いをさせてごめんなさい。気に入らないことなんてないよ。二人が用意してくれたんだもん。すっごく素敵だし、すっごく嬉しい」


そう言ってぎゅっと腕に力を込めると、おずおずと二人も抱き締め返してきた。
私は嬉しくなって二人を見上げる。


「二人とも、ありがとう。大好きだよ！」


つい口から出てしまった言葉。
でも、これは紛れもない本心だ。

二人は面食らったような顔をして、でも言葉の意味を理解すると、急に真っ赤になった。

それに私の方が驚く。
え？もしかして、照れてる？
何だか嬉しくなって、すりすりと二人の硬い胸に頬擦りをする。

二人があまりにも固まって動かないものだから、私は笑ってしまった。
ぐいぐいと二人の手を掴んで引っ張る。

「ねえ、今日からここで過ごすんでしょ？ルームツアーしてほしい！」


ようやく元に戻った二人は、笑顔で了承してくれた。





「.........ここがリオンの部屋で、ここが僕の部屋。それからここがセシスさんの部屋だよ」
「セシスさんもここで暮らすの？」
「そうだよ」


ふうん。そういえば結婚したあの日から、セシスさんと全然話せてない気がする。
これからはたくさん話そうっと。

隣を歩くリオンの服の裾を引っ張って、ふと気になったことを尋ねる。

「ねえ、でもどうして家を建ててくれたの？」
「ん？ああ、ヒナがこの世界に来てから半年経っただろ？だから、城にいる期間は終わったんだ」


え！もう半年か...。早いな。
でもそれってつまり......

「追い出されたってこと？」


リオンは困ったように笑った。
無言の肯定ってこういうことを言うのだろうか。

私は一人で納得して、一人でうなずいた。


この半年間、ろくに家事もやってこなかったけど、この新しい家で心機一転して頑張ろう！

...............出来るかな？大丈夫だよね？
不安すぎる。