変わり者のフルーツたちに溺愛されてます。
私とセシスさんが固まっていると、リオンとレビが飛んできた。
「どうした!?」
「何があったの?大丈夫?」
いや、私たちも状況を理解していないんだよ...。
でも私が何も言わないせいで、セシスさんが詰め寄られてびっくりしている。
違うよ、セシスさんも被害者側だと思う!
私は何とかしようと、とりあえず水晶に手を伸ばした。
そのとき、水晶が光りだした。
眩しくて思わず目を瞑る。
ようやく光が消えたと思ったら、今度は部屋中に大きな声が響き渡った。
『はっはっはっは!セシス、驚いているか?まあそうだろうな。とにかくお前は異世界人と結婚したんだ!ざまあみろ!』
や、やっぱりそういう感じですか?
何だか嫌な予感がしたけど、結婚かあ...。
役所に提出とかじゃないのかな。
この世界での結婚の仕方が分からない。
これは録音されたもののようで、声の主は聞いてもいないことをペラペラ話している。
『ずっとお前が嫌いだった!汚らわしい種族のくせに、副団長にまでなりやがって!
どうせインチキでもしたんだろう!それに、嫌がらせをしても何ともないように過ごしているのもむかつくんだよ!!お前は自分のことを何様だと思っているんだ!!』
え?話についていけない。
どういうこと?この人は何を言っているの?
『まあ、お似合いだと思うよ!卑しい者同士でさ笑 まあさっさと離婚して、せいぜい俺の気持ちを味わえばいい!!そしてお前の評価は地に落ち、変わりに邪魔者を排除した俺が崇め称えられるだろうな!楽しみだ、はっはっはっは!』
しばらく、私たちは呆然としていた。
言いたいことだけ言って録音は終わり、もう流れることはなさそうだ。
セシスさんの顔色が明らかに悪い。
それはそうだ。あんなこと言われて、平気でいられるはずないよね。
「セシスさん、一度横になってみたらどうですか?顔色が悪いです」
「いや......大丈夫だよ」
「大丈夫じゃありません。はい、寝転んで」
私は半ば無理やりに、セシスさんをソファーに寝かせた。
セシスさんがしぶしぶ寝転んだのを確認すると、私たちは部屋を出た。
部屋の扉の前にしゃがみこんで、こそこそ話す。
「...何だか大変なことになっちゃったね」
「本当だよ。でも、ちょっと可哀想だな」
リオンが頭をかきながら言う。
私は首をかしげた。
「どういうこと?」
「だって、あの人とは離婚するでしょ?」
レビに問われて、しばし考える。
え?離婚...?
まあそうか。恋人とかいたら迷惑だしね。
それにしても結婚してすぐ離婚することになろうとは。
「うん。それがどうかしたの?」
「いや...離婚した男ってのは、まあつまり見捨てられた、女性の期待に応えられなかった、ってことだろ?だから、評判は...悪くなる」
そ、そんなことがあるの?
団長さんが言っていたことが段々分かってきた。
あの人、ずいぶんとセシスさんを嫌っているみたいだった。
それに、離婚の件がなくても、セシスさんはアボカドだから元々あまりよく思われないんだった。
じゃあさらに悪評が立っちゃうんじゃ...。
急に不安になってきた。
だって、セシスさんは何も悪くない。
悪いのは全面的にあの団長さんだ。
それにしても、団長さんは私のことも嫌いだったみたいだ。
聞いてはいたけど、やっぱり直接敵意を向けられると怯んでしまう。
「どうして団長さんは私のことが嫌いなんだろう...」
声に出ていたのか、遠慮がちにリオンが口を開いた。
「あの人、異世界人...ええと、イト様の恋人だったけど、振られたみたいだ」
ああなるほど。
だからセシスさんには離婚してもらいたいんだ。
最低...。
そう考えるとますます離婚するのが嫌だ。
あの人の思うつぼみたいだし。
セシスさんがいいって言ったら、ちょっとくらい結婚生活を試してみるっていうのもいいんじゃない?
そうだ。それでいいじゃん。
話をすると、二人は不服そうだったが、やはりセシスさんのことが心配なようだ。
しぶしぶ了承してくれた。
あとはセシスさん次第だ。