変わり者のフルーツたちに溺愛されてます。
ちらりと、視界の端に黒が移った。
髪の毛だったような気がする。
...はあ、また来たのか。
最近イトという女が騎士団に入り浸っていて、正直ウザいし邪魔だ。
異世界人だかなんだか知らねえけど、言うほど美人でもない。
でもまあ声をかけて媚びておくのもいいか。
幸いなことに、俺の顔は女ウケがいいらしい。
「あれ、もしかして...異世界人様?」
なるべくとぼけたような声を出してみる。
振り向いた女は、俺の知っている異世界人ではなかった。
顔立ちは似ていないこともないが、何かが違う。
少なくともこっちの異世界人の方がべっぴんだ。
「こんにちは」
鈴を転がすような声で挨拶をされた。
「ああ、こんにちは。異世界人様はどうしてここに?」
「えっと、あの...だ、旦那さんがお昼を忘れて行っちゃったので、届けに」
「わざわざ?」
「会いたかったんです」
ふうん。わざわざ届けにくるなんて、そんなにお気に入りの旦那がいるのか。
まあ、騎士団に来るための口実かもしれないが。
「...で、誰?夫は」
「えーと、レビです」
「レビ?」
異世界人は俺の口調に何も言わない。
それどころかとんでもないことを言った。
レビって言うと、ドリアンの有名な奴だ。
まあ俺もデーツなんだが、何故か表示を隠せる。
...もしデーツだとバレたら、部下の信頼も失って、隊長の称号も奪われるんだろうな。
馬鹿馬鹿しい。
「あの有名な...ドリアンの?」
「それは知りませんけど...どこにいるか分かりますか?」
「......ここ、二番隊だよ...三番隊はあっち」
レビの種類は気にしていないらしい。
というか、二番隊と三番隊は真逆の方向だ。
わざとか?まだ分からない。
「そうですか。ありがとうございました」
「ちょっと待ちなよ。異世界人様、また迷子になるんじゃないの?」
「.........」
さらりと去っていこうとするものだから、思わず止めてしまった。
図星なのか、異世界人様は眉間にシワを寄せた。
笑うつもりはなかったが、つい笑ってしまった。
...まあまあ可愛いじゃん。
「私、雛です」
「ご丁寧にどうも。俺はニア」
ヒナには夫が2人しかいないらしい。
王宮はそれで納得しているのか?
野菜国にナメられそうな気もするが...
まあもう一人の異世界人がいるからいいのか。
散々旦那の惚気を聞かされた。
女の話が面白くないのは分かっていたが、それとは別の面白くなさだ。
何故俺がアイツらの格好いいところ(俺には理解できない)を延々と聞かないといけないんだ。
話の区切りがついたところで、声をかけた。
「たぶんここの体育館にいる。俺、ここの隊長と仲悪いから行くな」
「はい!ありがとうございました!」
そうだ。三番隊の隊長は正直言ってクソだ。
顔だけはいいが、部活をこきつかって、自分は全く仕事をせず、例の異世界人のところへせっせと通っている。
自分はできないくせに、人の仕事にあれこれ難癖をつけ、自分の意見を否定されると躊躇なく暴力をふるう。
で、自分より偉い者にはヘコヘコする。
モテてアイツと同じ立場の俺は、よく狙われる。
あしらうのが面倒くさい。大事にもしたくないし。
はあ......。
何だかどっと疲れた。一日はこれからだってのに。
二番隊に帰ろうと途中まで歩いてから、無性に心配になってきた。
ヒナ、余計なことをしていないだろうか。
くるりときびすを返したところで、パアンと乾いた音が聞こえた。
さほど大きな音ではなかったが、これだけで終わるとは思えない。
体育館を覗きこむと、三番隊隊長...そう言えば名前を知らない...が木刀を手にしていた。
アイツ、本当に最低だな。
軽く助走をつけて、三番隊隊長を蹴り飛ばす。
あっけなく飛んでいった。
下手すると、ウチのリオンの方が強いんじゃないか?
「馬鹿だな。女に...しかも異世界人様に木刀を振りかざすなんて」
「......」
「お前もお前だ。あんなに煽るんじゃない」
「ごめんなさい...」
ヒナの方に向き直ってちょっと咎める。
ヒナは縮こまって俯いた。
「...あ、それよりもレビ!大丈夫!?」
「うう...」
無理矢理俺から離れて行ったヒナは、レビの元で泣いていた。
...その涙は、何の涙?
俺はレビを追い払った。
レビが見えなくなって、ヒナに声をかける。
「...はい、ほっぺた見せろ」
「気づいてたんですね」
「まあな」
回復魔法をかけてやる。
ほんのちょっと、本当に基礎の魔法なのに。ヒナははしゃぎすぎだ。
その上、急に気持ちいいなどと言ってきた。あり得ない。
今日、二度目の別れを告げる。
寂しくなって、聞いてしまった。
「......また、ここに来るか?」
「え?ええ、まあ、来るかもしれません」
「今度は、二番隊に来い」
「二番隊?」
ヒナは首をかしげた。
俺から誘われるのがどれだけレアなのか分かってないな。
ばーか。
髪の毛だったような気がする。
...はあ、また来たのか。
最近イトという女が騎士団に入り浸っていて、正直ウザいし邪魔だ。
異世界人だかなんだか知らねえけど、言うほど美人でもない。
でもまあ声をかけて媚びておくのもいいか。
幸いなことに、俺の顔は女ウケがいいらしい。
「あれ、もしかして...異世界人様?」
なるべくとぼけたような声を出してみる。
振り向いた女は、俺の知っている異世界人ではなかった。
顔立ちは似ていないこともないが、何かが違う。
少なくともこっちの異世界人の方がべっぴんだ。
「こんにちは」
鈴を転がすような声で挨拶をされた。
「ああ、こんにちは。異世界人様はどうしてここに?」
「えっと、あの...だ、旦那さんがお昼を忘れて行っちゃったので、届けに」
「わざわざ?」
「会いたかったんです」
ふうん。わざわざ届けにくるなんて、そんなにお気に入りの旦那がいるのか。
まあ、騎士団に来るための口実かもしれないが。
「...で、誰?夫は」
「えーと、レビです」
「レビ?」
異世界人は俺の口調に何も言わない。
それどころかとんでもないことを言った。
レビって言うと、ドリアンの有名な奴だ。
まあ俺もデーツなんだが、何故か表示を隠せる。
...もしデーツだとバレたら、部下の信頼も失って、隊長の称号も奪われるんだろうな。
馬鹿馬鹿しい。
「あの有名な...ドリアンの?」
「それは知りませんけど...どこにいるか分かりますか?」
「......ここ、二番隊だよ...三番隊はあっち」
レビの種類は気にしていないらしい。
というか、二番隊と三番隊は真逆の方向だ。
わざとか?まだ分からない。
「そうですか。ありがとうございました」
「ちょっと待ちなよ。異世界人様、また迷子になるんじゃないの?」
「.........」
さらりと去っていこうとするものだから、思わず止めてしまった。
図星なのか、異世界人様は眉間にシワを寄せた。
笑うつもりはなかったが、つい笑ってしまった。
...まあまあ可愛いじゃん。
「私、雛です」
「ご丁寧にどうも。俺はニア」
ヒナには夫が2人しかいないらしい。
王宮はそれで納得しているのか?
野菜国にナメられそうな気もするが...
まあもう一人の異世界人がいるからいいのか。
散々旦那の惚気を聞かされた。
女の話が面白くないのは分かっていたが、それとは別の面白くなさだ。
何故俺がアイツらの格好いいところ(俺には理解できない)を延々と聞かないといけないんだ。
話の区切りがついたところで、声をかけた。
「たぶんここの体育館にいる。俺、ここの隊長と仲悪いから行くな」
「はい!ありがとうございました!」
そうだ。三番隊の隊長は正直言ってクソだ。
顔だけはいいが、部活をこきつかって、自分は全く仕事をせず、例の異世界人のところへせっせと通っている。
自分はできないくせに、人の仕事にあれこれ難癖をつけ、自分の意見を否定されると躊躇なく暴力をふるう。
で、自分より偉い者にはヘコヘコする。
モテてアイツと同じ立場の俺は、よく狙われる。
あしらうのが面倒くさい。大事にもしたくないし。
はあ......。
何だかどっと疲れた。一日はこれからだってのに。
二番隊に帰ろうと途中まで歩いてから、無性に心配になってきた。
ヒナ、余計なことをしていないだろうか。
くるりときびすを返したところで、パアンと乾いた音が聞こえた。
さほど大きな音ではなかったが、これだけで終わるとは思えない。
体育館を覗きこむと、三番隊隊長...そう言えば名前を知らない...が木刀を手にしていた。
アイツ、本当に最低だな。
軽く助走をつけて、三番隊隊長を蹴り飛ばす。
あっけなく飛んでいった。
下手すると、ウチのリオンの方が強いんじゃないか?
「馬鹿だな。女に...しかも異世界人様に木刀を振りかざすなんて」
「......」
「お前もお前だ。あんなに煽るんじゃない」
「ごめんなさい...」
ヒナの方に向き直ってちょっと咎める。
ヒナは縮こまって俯いた。
「...あ、それよりもレビ!大丈夫!?」
「うう...」
無理矢理俺から離れて行ったヒナは、レビの元で泣いていた。
...その涙は、何の涙?
俺はレビを追い払った。
レビが見えなくなって、ヒナに声をかける。
「...はい、ほっぺた見せろ」
「気づいてたんですね」
「まあな」
回復魔法をかけてやる。
ほんのちょっと、本当に基礎の魔法なのに。ヒナははしゃぎすぎだ。
その上、急に気持ちいいなどと言ってきた。あり得ない。
今日、二度目の別れを告げる。
寂しくなって、聞いてしまった。
「......また、ここに来るか?」
「え?ええ、まあ、来るかもしれません」
「今度は、二番隊に来い」
「二番隊?」
ヒナは首をかしげた。
俺から誘われるのがどれだけレアなのか分かってないな。
ばーか。