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逆ハーです。

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変わり者のフルーツたちに溺愛されてます。

#13

ニアside

ちらりと、視界の端に黒が移った。
髪の毛だったような気がする。
...はあ、また来たのか。

最近イトという女が騎士団に入り浸っていて、正直ウザいし邪魔だ。
異世界人だかなんだか知らねえけど、言うほど美人でもない。

でもまあ声をかけて媚びておくのもいいか。
幸いなことに、俺の顔は女ウケがいいらしい。

「あれ、もしかして...異世界人様?」

なるべくとぼけたような声を出してみる。
振り向いた女は、俺の知っている異世界人ではなかった。
顔立ちは似ていないこともないが、何かが違う。
少なくともこっちの異世界人の方がべっぴんだ。

「こんにちは」

鈴を転がすような声で挨拶をされた。

「ああ、こんにちは。異世界人様はどうしてここに?」
「えっと、あの...だ、旦那さんがお昼を忘れて行っちゃったので、届けに」
「わざわざ?」
「会いたかったんです」

ふうん。わざわざ届けにくるなんて、そんなにお気に入りの旦那がいるのか。
まあ、騎士団に来るための口実かもしれないが。

「...で、誰?夫は」
「えーと、レビです」
「レビ?」

異世界人は俺の口調に何も言わない。
それどころかとんでもないことを言った。
レビって言うと、ドリアンの有名な奴だ。
まあ俺もデーツなんだが、何故か表示を隠せる。
...もしデーツだとバレたら、部下の信頼も失って、隊長の称号も奪われるんだろうな。
馬鹿馬鹿しい。

「あの有名な...ドリアンの?」
「それは知りませんけど...どこにいるか分かりますか?」
「......ここ、二番隊だよ...三番隊はあっち」

レビの種類は気にしていないらしい。
というか、二番隊と三番隊は真逆の方向だ。
わざとか?まだ分からない。

「そうですか。ありがとうございました」
「ちょっと待ちなよ。異世界人様、また迷子になるんじゃないの?」
「.........」

さらりと去っていこうとするものだから、思わず止めてしまった。
図星なのか、異世界人様は眉間にシワを寄せた。
笑うつもりはなかったが、つい笑ってしまった。
...まあまあ可愛いじゃん。

「私、雛です」
「ご丁寧にどうも。俺はニア」

ヒナには夫が2人しかいないらしい。
王宮はそれで納得しているのか?
野菜国にナメられそうな気もするが...
まあもう一人の異世界人がいるからいいのか。

散々旦那の惚気を聞かされた。
女の話が面白くないのは分かっていたが、それとは別の面白くなさだ。
何故俺がアイツらの格好いいところ(俺には理解できない)を延々と聞かないといけないんだ。
話の区切りがついたところで、声をかけた。

「たぶんここの体育館にいる。俺、ここの隊長と仲悪いから行くな」
「はい!ありがとうございました!」

そうだ。三番隊の隊長は正直言ってクソだ。
顔だけはいいが、部活をこきつかって、自分は全く仕事をせず、例の異世界人のところへせっせと通っている。
自分はできないくせに、人の仕事にあれこれ難癖をつけ、自分の意見を否定されると躊躇なく暴力をふるう。
で、自分より偉い者にはヘコヘコする。
モテてアイツと同じ立場の俺は、よく狙われる。
あしらうのが面倒くさい。大事にもしたくないし。

はあ......。
何だかどっと疲れた。一日はこれからだってのに。
二番隊に帰ろうと途中まで歩いてから、無性に心配になってきた。
ヒナ、余計なことをしていないだろうか。
くるりときびすを返したところで、パアンと乾いた音が聞こえた。
さほど大きな音ではなかったが、これだけで終わるとは思えない。

体育館を覗きこむと、三番隊隊長...そう言えば名前を知らない...が木刀を手にしていた。
アイツ、本当に最低だな。

軽く助走をつけて、三番隊隊長を蹴り飛ばす。
あっけなく飛んでいった。
下手すると、ウチのリオンの方が強いんじゃないか?

「馬鹿だな。女に...しかも異世界人様に木刀を振りかざすなんて」
「......」
「お前もお前だ。あんなに煽るんじゃない」
「ごめんなさい...」

ヒナの方に向き直ってちょっと咎める。
ヒナは縮こまって俯いた。

「...あ、それよりもレビ!大丈夫!?」
「うう...」

無理矢理俺から離れて行ったヒナは、レビの元で泣いていた。
...その涙は、何の涙?

俺はレビを追い払った。
レビが見えなくなって、ヒナに声をかける。

「...はい、ほっぺた見せろ」
「気づいてたんですね」
「まあな」

回復魔法をかけてやる。
ほんのちょっと、本当に基礎の魔法なのに。ヒナははしゃぎすぎだ。
その上、急に気持ちいいなどと言ってきた。あり得ない。

今日、二度目の別れを告げる。
寂しくなって、聞いてしまった。

「......また、ここに来るか?」
「え?ええ、まあ、来るかもしれません」
「今度は、二番隊に来い」
「二番隊?」

ヒナは首をかしげた。
俺から誘われるのがどれだけレアなのか分かってないな。
ばーか。


作者メッセージ

急に暑くなってきましたね......。
男の子の「ばーか」が好きです。
リアルでは嫌かも。笑

2025/04/20 00:17

まっちゃん ID:≫ 7tcdpCk/fMi.Q
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