小さな遠距離
#1
まさか、喧嘩するとは思わなかった。
半年ほど前、[漢字]吉田愁斗[/漢字][ふりがな]よしだしゅうと[/ふりがな]君に高校の帰り道で思い切って告白した。
「......僕も、千野さんの事はずっと前から好きだったよ」
彼はそう答えながら微笑んで見せる。それが本当に愛らしくて、勇気出して良かった。
そこから数か月。何回か二人で出かけたり、文化祭で一緒に屋台を回ったり。この幸せな恋がいつまでも続けばいいのに、なんて思ったりして。
でも数日前、愁斗君の家に行った日の帰り際だった。
「じゃあ、またね」
私が靴を履きながら言うと、彼は少し心配そうに言った。
「あの...さっきから思ってたんだけど、大丈夫?顔色悪いよ?」
確かに、少し熱っぽい気がする。でも、愁斗君を心配させたくなかった。
「いや、そんな事ない...と思うけど...」
「......もし具合悪かったら、泊っていく?」
「だから、大丈夫だって」
そこで私は、ちょっと声を大きくしちゃった。
「あ...そう...なんだ...」
愁斗君は申し訳なさそうに、声を低くして呟く。
もちろんそんなイライラしていたわけじゃない。ただ、彼を心配させたくなかっただけなのに。なのに......。
「え...あ、ご...ごめん...」
私はすぐに謝ると、彼は少し待ってから玄関ドアを閉めた。
帰り際、僕は本当に心配していただけなのに。夕日に照らされた千野さんの顔色は、確かに少し悪かったように思う。
彼女はすぐに謝ったけど、僕は何て言えばいいのかわからなくて、すぐドアを閉めてしまった。
明日は、学校だ。明日謝らないと、彼女との関係が壊れてしまうような気がした。
もし登校して、教室に入って、彼女と目が合って。謝ることが出来るだろうか。でも、謝ることが出来なければ...。でも...でも......。
次の日、朝起きると、スマホに通知が来ていた。どうやら、彼女からのメッセージの様だ。少し迷った後、メッセージを見ることにした。
[今日のお昼休み 美術室前の廊下で]
美術室がある棟は教室のある棟とは離れている。授業以外では人の来ないところだ。
僕は、行くことにした。
昼休み、指定された場所に行くと、千野さんは美術部員の描いた絵を見ていた。
僕に気づくと、彼女は少し驚いたような顔を見せてから言う。
「この前は、本当にごめんなさい」
「いや、僕の方が悪かった、だから...」
だから、の次に、何と言えばいいのか分からなくなってしまった。まさか、関係を戻そう、なんてこの場で言えるはずもない。だから...。
「僕が悪かった。本当にごめん」
「いや、あれは私が...」
彼女は間を開けてから、微笑んで見せた。
「......謝り合い...だね」
何と返したらいいのか分からなくて、それでも可笑しくて、面白くて、可愛くて。
その後。まさか、笑いあって帰れるとは思わなかった。
半年ほど前、[漢字]吉田愁斗[/漢字][ふりがな]よしだしゅうと[/ふりがな]君に高校の帰り道で思い切って告白した。
「......僕も、千野さんの事はずっと前から好きだったよ」
彼はそう答えながら微笑んで見せる。それが本当に愛らしくて、勇気出して良かった。
そこから数か月。何回か二人で出かけたり、文化祭で一緒に屋台を回ったり。この幸せな恋がいつまでも続けばいいのに、なんて思ったりして。
でも数日前、愁斗君の家に行った日の帰り際だった。
「じゃあ、またね」
私が靴を履きながら言うと、彼は少し心配そうに言った。
「あの...さっきから思ってたんだけど、大丈夫?顔色悪いよ?」
確かに、少し熱っぽい気がする。でも、愁斗君を心配させたくなかった。
「いや、そんな事ない...と思うけど...」
「......もし具合悪かったら、泊っていく?」
「だから、大丈夫だって」
そこで私は、ちょっと声を大きくしちゃった。
「あ...そう...なんだ...」
愁斗君は申し訳なさそうに、声を低くして呟く。
もちろんそんなイライラしていたわけじゃない。ただ、彼を心配させたくなかっただけなのに。なのに......。
「え...あ、ご...ごめん...」
私はすぐに謝ると、彼は少し待ってから玄関ドアを閉めた。
帰り際、僕は本当に心配していただけなのに。夕日に照らされた千野さんの顔色は、確かに少し悪かったように思う。
彼女はすぐに謝ったけど、僕は何て言えばいいのかわからなくて、すぐドアを閉めてしまった。
明日は、学校だ。明日謝らないと、彼女との関係が壊れてしまうような気がした。
もし登校して、教室に入って、彼女と目が合って。謝ることが出来るだろうか。でも、謝ることが出来なければ...。でも...でも......。
次の日、朝起きると、スマホに通知が来ていた。どうやら、彼女からのメッセージの様だ。少し迷った後、メッセージを見ることにした。
[今日のお昼休み 美術室前の廊下で]
美術室がある棟は教室のある棟とは離れている。授業以外では人の来ないところだ。
僕は、行くことにした。
昼休み、指定された場所に行くと、千野さんは美術部員の描いた絵を見ていた。
僕に気づくと、彼女は少し驚いたような顔を見せてから言う。
「この前は、本当にごめんなさい」
「いや、僕の方が悪かった、だから...」
だから、の次に、何と言えばいいのか分からなくなってしまった。まさか、関係を戻そう、なんてこの場で言えるはずもない。だから...。
「僕が悪かった。本当にごめん」
「いや、あれは私が...」
彼女は間を開けてから、微笑んで見せた。
「......謝り合い...だね」
何と返したらいいのか分からなくて、それでも可笑しくて、面白くて、可愛くて。
その後。まさか、笑いあって帰れるとは思わなかった。
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