私は目を覚ますと、起き上がった。
誰かの人影を見つけて、声をかける。
赤髪だから...グレイさんか。

「おはようございます」
「！ああ、おはよう。よく寝られた？」
「うーん...まぁまぁです」
「はは、それはそうか......」

グレイさんは軽く笑った後、一気に顔を赤くした。

「？何かありました？」
「そ、その...足が」

足？確かに少し見えているけど、そんなに？
昨日Ｔシャツと一緒にズボンももらったけど、大きすぎてずり落ちちゃったんだよね。

「ズボン...履いた方がいいですか？」
「その...できれば」

私はズボンを履くと、そのへんに落ちていたツルでズボンを思い切り縛った。
もう一度グレイさんのところに向かう。

「皆さんは？」
「クエストをしに行ってるよ。ここにいるのは俺だけなんだ。ごめん」
「えっいや、そんな...」

何でそこまで謝るの？私、そんなに不満そうに見えたかな。
そうだ、料理しないと。

「いつもご飯って誰が作ってるんですか？」
「飯？...あんまり決まってないなあ。俺も一応できるよ」
「教えてもらえますか？」
「え？誰に？」
「誰にって...私に」

この世界の料理のやり方とか材料とか味付けとか...とにかく何も分からない。
グレイさんはなんだかしぶっている。嫌だったかな。

「あっ、すみません。他の人にお願いするので...大丈夫です」

私がそう言うと、グレイさんは慌てたように言った。

「いや、俺が教えるよ。任せて！」
「？ありがとうございます...」


本人は一応とか言ってたけど、グレイさんは料理がすごく上手かった。
なんとか料理が出来上がる。
といっても森の中だから、あんまり料理らしい料理はできない。
私は丸太に腰を下ろす。
グレイさんも隣に座った。
この世界の料理がめっちゃ不味かったらどうしようとか考えてたけど、美味しい。
よかった...とりあえずやっていけそうかも。グレイさんもにこにこして頬張っている。
可愛い。

結構寝てしまっていたせいか、ご飯を食べて少し経つとアランたちが帰ってきた。

「早かったな」
「...おう」

グレイさんとアランは、何か話している。
あんまり私には聞かれたくないのかな。
特にすることもなくぼーっとしていると、ハンクさんが寄ってきた。
ところどころ傷が見える。

「お疲れ様です。大変だったんですか？」
「うーん、まあね。でも大したことないよ」
「傷って、そのままにしておくものなんですか？」

痛々しい傷が気になって聞いてみる。

「本当はあんまり良くないけど、魔力は温存したいし。それにルカが思ってるより痛くないよ」

そうだ、ハンクさんは僧侶なんだった。
ハンクさんは私の手を取った。

「どうしたんですか？」
「それはこっちのセリフだよ。この傷は何？」
「ああ、料理してたときにちょっと切れたんだった。でもハンクさんに比べたらこんなの...」

言い終わる前に、私の手がなんだか暖かくなった。
まさかと思って手を見ると、さっきの傷が消えている。

「魔力は温存したいんじゃなかったんですか？」
「そんなのどうでもいいよ。それよりも敬語は気に入らないな。ハンクって呼んでよ」

どうでもいいって...パーティに関わるんじゃないの？

「ハンクって何歳なの？」
「俺？24歳だよ」
「そっか。あんまり変わらないね」
「あんまり変わらない？あんまりの基準が分からないな」
「うーん...3つくらい？」

ハンクは目を見開いた。

「3つって...ルカはいくつなの？」
「21だよ」
「21!?!?!?」

地味にショックなんですけど。
そんなに老けて見えるかな。

「てっきり15くらいかと...」
「え？15？」

そっち？
っていうかいくら何でも15はおかしくない？