ルカとデート。
嬉しい。嬉しい。
はやる気持ちを抑えきれずに、ずいぶん早くリビングに来てしまった。

デートだから手を繋ごうと言ったら、何の疑問も持たずに手を繋いでくる。
複雑な気持ちだ。
誘われたら他の男とも手を繋ぐのか？


何も考えずにルカを街に連れてきてしまったせいで、下品な女を見せることになってしまった。
ショックを受けたのか、悲しそうな顔でぎゅっと手を握られる。
優しいな、ルカは。ルカは違うよ。アイツらとは違う。



運悪く兄と遭遇してしまった。
案の定、兄はルカに一目惚れをしたようだ。
やめてくれよ。お前は何でも手に入れてきただろう？ルカまで、俺からとらないで。

兄は優秀だ。昔から。
そのせいで俺は生まれたときから期待されて、でも、どうしても兄のようにはできなかった。
勉強も、運動も、人望も。
全て決して悪くないはずなのに、兄のせいで俺は認められなかった。
俺はいつも二番目。
段々、両親の態度が冷たくなっていった。
期待はずれの子だったから。
おまけに裏で兄は俺に色んなことをやらせた。
暴言を吐かれて、雑用をさせられて、暴力だって受けた。
それもこれも、俺が駄目なせい。

だから、何も言えなかった。

でも、ルカは言ってくれた。

「あんたに勝てるもの？そんなの数えきれないほどあるわ。
　優しくて、強くて、格好よくて、可愛くて、人望があって、頼りがいだってある」
「あんたが私を幸せにできるとでも？人のことを、自分の弟のことを、貶す奴に幸せにされるというの？舐めないで。私はそんなに安い女じゃない」

「私はアランの妻で、アランは私の夫よ。アランへの冒涜は私への冒涜。分かったならさっさと去りなさい！」


自分が情けない。まともにルカの顔が見れなかった。
でもルカはにっこりと微笑んでくれる。

「人間なんだから、できないことなんて沢山あるよ。私だってそう。でも、それを補いあって助け合うのが夫婦でしょう？」


ルカ、ルカ。
やっぱり俺は君が好きだ。

そんなに顔を真っ赤にされたら、勘違いするよ？


顔を近づけても、拒否されない。
心臓の音がどんどん早くなっていく。

あと少しで触れてしまう。
いいの？

残り数センチのところで、ルカがぎゅっと目をとじた。

俺は一瞬ぽかんとして、でもすぐに唇を押し付けた。


ありがとう、ルカ。