ルカに魔法を教える約束をした。
廊下を歩いていると、部屋の扉が開いている。
扉を閉めようとして近づくと、ハンクの後ろ姿が見えた。
あれは、まさか...
ハンクがルカに覆い被さっている？
馬鹿な。2人にそんな素振りはなかったはずだ。
だが、あきらかに、キス...をしている。
一気に心が冷えた。

静かにその場から離れて、自分の部屋に戻る。

それからすぐに、部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「エディ？いる？」
「はい。入ってきてください」
「お邪魔しまーす...」

ルカは何だか変なものを手渡してきた。

「...それでね、エディにこれをつけてみてほしくて」

めがね、と言うらしい。
それをかけると視界がクリアになった。
何だこれは。

「うまくいくかどうか心配だったけど、喜んでもらえてよかった」

ルカは心からそう思っているようだった。
どうして？どうしてそんなに他人に優しくできる？

「...どうしてルカはそんなに私に優しいのですか？」
「え？うーん...エディが優しいからかな？」
「私が？」
「そう。エディが優しいから、私も優しくしたいなって」
「............そうですか」

止めろ。私はそんな奴じゃない。
お前を勝手に否定して、勝手にイラついて、最低な奴だ。
虚しさと苛立ちが湧いてきて、思ったよりも冷たい声が出た。

「それにしても、あんなところでイチャつくのはやめていただいてもよろしいですか？」
「え？」

とぼけてんじゃねぇよ。ああ、ムカつく。

「え？じゃありません。さっきハンクと...」

ルカは焦ったように口を開いた。

「違うよ、あれは......その......不可抗力で、仕方なかったというか」

否定はしないんだな。
もういい、聞きたくない。
ルカを部屋から追い出す。

「...出ていくけど、ハンクのことは本当に何とも思ってないから！！」

うるさい。うるさい。
嘘をつくな。嘘は嫌いだ。
...............。




シドに連れられて、ルカがやって来た。
ルカはばつが悪そうな顔をしている。
本当に、何故こいつは無理をする？
放っておけない...いや、何でもない。

「これ、何の傷？」
「ん？ああ、猫に引っ掻かれました」
「そうなの？」

自分のことは二の次で、こうやってすぐに人の心配をする。
こんなの全然大したことないじゃないか。
「あっ」という声が聞こえて、目線をルカに向ける。
ルカの手には、絆創膏。
半ば無理矢理に絆創膏を貼られる。
その上、私の机の上のペンでハートまで描いてきた。
何を考えているんだ。
ルカは逃げるように走り去っていった。

がらんとした部屋で絆創膏を見つめる。
ハートの形はいびつで、塗るのも下手くそ。

ため息をついて、ベッドに突っ伏した。
...認めたくない、けど。
こんなにも胸が高鳴っている。

くそ。