【参加型】彼らと共に、ありふれた日常を。
ここはマフィア組織、「Famiglia Di Stellato」の拠点の一つにして、組織の上層部の者達が住む小さな家。
本当はもっと大きな屋敷があるのだが…
色々あって、彼らの現在の拠点はここなのだ。
そして今日も、平和なようで平和ではない、彼らのありふれた一日が始まる。
…最も、今は到底マフィアの拠点とは思えないような惨状だが。
現在の時刻は午前10時。
ようやく昨日の抗争で負った怪我が癒えて目が覚めたらしく、金髪碧眼の青年…[漢字]時雨[/漢字][ふりがな]しぐれ[/ふりがな][漢字]葵[/漢字][ふりがな]あおい[/ふりがな]が、その荒れ放題の階下に姿を現した。
「おいヴァイラ!洗濯物ぐらい自分で出しやがれ!!」
彼は起きて早々に、見た目だけなら王子様めいた端正な顔を歪ませ、同じ幹部候補生にして水色の長い髪を三つ編みにした女性…ヴァイラを怒鳴りつけている。
「えー、今忙しいしパス。あっちの執事さん…ヴェリタだっけ?がやればいいんじゃないの?それが仕事でしょ?」
「私は今、此処の床の片付けをしているのです。ですので葵さんの言うとおり、その程度ご自分でおやりなさい。」
そう投げやりに言うヴァイラに答えたのは、モノクルを掛けた金髪赤眼の青年。
彼の名前はヴェリタ・コンフィーネ、この組織のボスに仕える執事だ。
今は床に転がっている物をポイポイと的確に、持ち主に合わせて手に持った箱の中に仕分けている。とても早い。
「それに、私が仕えているのはボスです。断じて貴方がたではありません!それから白音さん、貴方もこのゲームソフトを何とかなさって下さい!!」
「いいでしょ、別に。貴族様に逆らうなよ。」
そう言い放ったのは、青いメッシュの入った白髪をツインテールにした女性。「片付けは貴族以前に人間として最低限の常識です!」というヴェリタの声を気にも止めず、彼女はゲームを続けている。
彼女の名前は[漢字]神櫻[/漢字][ふりがな]かみざくら[/ふりがな][漢字]白音[/漢字][ふりがな]しろね[/ふりがな]、本人の言う通り出身はれっきとした貴族…なのだが、なぜマフィアになっているのかは本人に聞いても答えてくれない。謎の多い女性である。
昨日の宴会のせいもあり、普段よりしっちゃかめっちゃかになったリビングを片付けているヴェリタは、「…毒殺するしかありませんか?」などと物騒な事を呟いている。
なお、今この場に転がっている物を具体的に挙げるとすると…最も多いのはクラシックのCDやゲームソフト、トランプのカードに出所不明なアクセサリー、菓子のゴミなどだ。
他に転がっている物と言えばワインの空き瓶にエナドリの空き缶、飲みかけのビールやタバコの吸い殻に剥き身のナイフ、いつ着たのかすら不明な洗濯物や、胸の大きな女性ばかりが乗った雑誌(いわゆるエ◯本)だが…
これらもまだ、ギリギリ許せる範囲である。
では、一番酷いのになるとどうなるか。
答えは簡単、もう最悪だ。
賞味期限などとっくに切れて異臭を放つネコの餌、牛乳を拭いた後数ヶ月は放置された雑巾に、血が付いたままの拷問具、極め付けには明らかに怪しいクスリまで置いてある。
数え始めるとと本当にキリが無い。
そう、つまり…
端的に言って、非常に汚いのだ。
「おいヴェリタ。俺も手伝うからその箱半分寄越せ。」
と、葵が言っているが。この惨状の原因は主に…
「いいえ、一つで構いません。コレさえ何とかして頂ければ、ですがね。」
「あ?って…クソが!ほとんどあのバカの私物じゃねぇか!!」
今はまだこの場にいない、とある狂犬なのだが。二人が眼を見合わせて溜息をついていると、カタカタと階段をヒールで降りる音が聞こえてきた。
「朝っぱらからなんの騒ぎだい?全く、元気なモンさねぇ……」
ドアを開けた先にいたのは、少々だらしない格好の、金髪に翠色の目の女性だ。
「うわ、酒くさ。しかも死人みたい。飲み過ぎでしょ…」
白音の言うとおり明らかに顔色が悪いが、昨日の宴会での深酒のせいだろう。二日酔い、と言うヤツである。
「しかも手前、昨日賭けの後ロクに片付けせずに寝やがったな!?」
彼女の名はルミナ・アルベリーニ。今はギャーギャーと怒鳴る葵の小言にやれやれと肩を竦めながら、投げつけられたトランプを手に取っている。
「ほっときゃ誰かが片付けるんだから、問題無いだろうに…」
「その性根が既に問題だと言っているのです!!」「その根性がダメなんだって言ってんだろが!!」
二人の集中砲火を喰らってしかめ面になるルミナ。二日酔いに怒鳴り声の二重奏は、さしものギャンブラーも少々堪えるようだ。ソファーに座り込んで、面倒くさそうに話を流している。
「どーでも良いけどうるさいしめんどくさい、他所でやれ。」
「白音、手前は口突っ込む前にまずこのゲームソフトから片付けろ。したら美味いモン作ってやっから。な?」
「あーはいはい、分かったっての。」
葵の説得に応じるのかと思いきや、ディスプレイから目を離す気配を一向に見せない白音。
挙げ句の果てにはぐびぐびと机の横のエナドリを飲み干し、カランと床に投げ捨てる。たった今追加された空き缶はCDとぶつかって、無機質な音を部屋に響かせた。
その音に、耐えられないとばかりに肩を震わせる者が約一名。
「で、す、か、ら!ゴミはゴミ箱、空き缶は缶入れに!!何度言えば分かるというのですか、貴女は!!!」
そう、ヴェリタである。一方の葵はと言えば、彼とは対照的に黙々と片付けを進めている。時たま、「なんだコレ!?」とは言っているが。
なお、ルミナはソファーで爆睡中である。起きて来た意味とは。
「あー、うるせ。潔癖症かよ…いや、むしろ神経質?」
「うーん、どっちかって言うと小姑じゃない?てか、ヴェリタもいいじゃんそんぐらい。捨てるだけだし。」
ついにキレたヴェリタを棒読みながらも宥めるヴァイラだが、「その感情の籠っていない声が一番腹が立つのですよ!!」とのとばっちり…と言うより、もらい事故?を受けて困惑している。
「第一貴女がたは、大した掃除もしないで…」
「ストップだヴェリタ、そこまでにしやがれ。掃除なら俺がアイツらの分もやってやるから。な?」
滔々と続くかと思われたヴェリタの小姑めいた説教だが、葵の尽力によってどうにかこうにか大惨事マフィア大戦は免れた。
しかし、そこでハタと手を打つヴァイラ。
「そういや、あいつらどこ行ったの?」
「降りる前に見たけど…部屋にはいなかったぜ。[漢字]視信[/漢字][ふりがな]しのぶ[/ふりがな]の野郎は鍵掛けてやがったけど、アイツも外だろうな。」
ひょいと先程のエナドリを捨てながら、葵が口を開く。それを見ていながらも、「ん、さんきゅ」とだけ端的に返す白音に、ヴェリタが再び目くじらを立てようとしたその時。
「ところがどっこい、僕ってばたった今帰ってきたトコなんすわぁ。」
ひょい、と紫水晶色の目の青年が、廊下から顔を出した。
金のインナーカラーを入れた長い銀髪を後ろで軽く括って、オーバーサイズ気味なパーカーに身を包んだ彼は、朝帰りとは思えない様子でニヤニヤと笑っている。
彼こそがさっき話に挙がっていた視信…フルネームを[漢字]楼[/漢字][ふりがな]たかどの[/ふりがな][漢字]視信[/漢字][ふりがな]しのぶ[/ふりがな]というのだが…明らかに偽名である。少なくとも日本人には見えない。
「…あぁ、ちょうど良い所に。この辺りの物は貴方の私物でしょう?部屋に持っていくように。」
こめかみをさすりながらそう言ったヴェリタは視信にカゴを渡すと、「頭痛薬を飲んで参ります」とだけ言って自室に消えた。
はいはぁい、と雑な返事をして受けとった視信の方は「うわ、このネックレスとかよく分かったっすねぇ。」と呟いている。
「へぇ、君のだったんだ。」
やっと犯人が分かったよ、と頷くヴァイラに「いやぁコレ、プレゼントだったんですが突っ返されちまったんですよねぇ…」などと調子良く並べ立てる視信。
それに対して「女遊びも程々にしとけよ…」と葵が苦言を呈しても、ヘラヘラと笑うばかりでマトモな返事は返ってこない。
「てゆーかそもそも君、この組織のヒトじゃないじゃん。なんで当たり前の顔して転がり込んでんの?」
「おいおい、ヴァイラの嬢ちゃんてば辛辣っすなぁ。コレでもケッコー優秀な情報屋さんですぜ?」
「答えになってないよ、ソレ。」
実際、過去に数回交際相手を名乗る女性が乗り込んで来た事があるし、そう言われるのも仕方ないな…と思う白音だが、それ以前にもっと気になる事があったのを思い出してしまった。
「あのバカ、どこ行った…?」
そう、時刻は既に11時近くまで達している。
にも関わらず、なぜか姿を表さない者が約二名。
いくら夜行動が基本のマフィアといえど、もうそろそろ起きてこなくてはおかしい時間帯だ。
「そういや、ボスちゃんも居ませんよねぇ。どーしたんだか。」
そう。その二人とは、彼らのボスである女性とその傍らに常に(それこそうざったい程に)控える忠犬…もとい、狂犬だ。
なんとも不気味な事に、彼らが揃って行方不明である。
嫌な予感しかしねぇ…とぼやく葵に、「少なくとも昨日の宴会にはいたよ。相変わらず狂犬してたね。」と、役に立つのか不明な情報がヴァイラから寄せられる。
「なら、呼び出せば良いだけさね。何を悩んでるんだい?」
そんな飄々とした声がソファーから響く。全員の困惑を、置き去りにしたままに。
本当はもっと大きな屋敷があるのだが…
色々あって、彼らの現在の拠点はここなのだ。
そして今日も、平和なようで平和ではない、彼らのありふれた一日が始まる。
…最も、今は到底マフィアの拠点とは思えないような惨状だが。
現在の時刻は午前10時。
ようやく昨日の抗争で負った怪我が癒えて目が覚めたらしく、金髪碧眼の青年…[漢字]時雨[/漢字][ふりがな]しぐれ[/ふりがな][漢字]葵[/漢字][ふりがな]あおい[/ふりがな]が、その荒れ放題の階下に姿を現した。
「おいヴァイラ!洗濯物ぐらい自分で出しやがれ!!」
彼は起きて早々に、見た目だけなら王子様めいた端正な顔を歪ませ、同じ幹部候補生にして水色の長い髪を三つ編みにした女性…ヴァイラを怒鳴りつけている。
「えー、今忙しいしパス。あっちの執事さん…ヴェリタだっけ?がやればいいんじゃないの?それが仕事でしょ?」
「私は今、此処の床の片付けをしているのです。ですので葵さんの言うとおり、その程度ご自分でおやりなさい。」
そう投げやりに言うヴァイラに答えたのは、モノクルを掛けた金髪赤眼の青年。
彼の名前はヴェリタ・コンフィーネ、この組織のボスに仕える執事だ。
今は床に転がっている物をポイポイと的確に、持ち主に合わせて手に持った箱の中に仕分けている。とても早い。
「それに、私が仕えているのはボスです。断じて貴方がたではありません!それから白音さん、貴方もこのゲームソフトを何とかなさって下さい!!」
「いいでしょ、別に。貴族様に逆らうなよ。」
そう言い放ったのは、青いメッシュの入った白髪をツインテールにした女性。「片付けは貴族以前に人間として最低限の常識です!」というヴェリタの声を気にも止めず、彼女はゲームを続けている。
彼女の名前は[漢字]神櫻[/漢字][ふりがな]かみざくら[/ふりがな][漢字]白音[/漢字][ふりがな]しろね[/ふりがな]、本人の言う通り出身はれっきとした貴族…なのだが、なぜマフィアになっているのかは本人に聞いても答えてくれない。謎の多い女性である。
昨日の宴会のせいもあり、普段よりしっちゃかめっちゃかになったリビングを片付けているヴェリタは、「…毒殺するしかありませんか?」などと物騒な事を呟いている。
なお、今この場に転がっている物を具体的に挙げるとすると…最も多いのはクラシックのCDやゲームソフト、トランプのカードに出所不明なアクセサリー、菓子のゴミなどだ。
他に転がっている物と言えばワインの空き瓶にエナドリの空き缶、飲みかけのビールやタバコの吸い殻に剥き身のナイフ、いつ着たのかすら不明な洗濯物や、胸の大きな女性ばかりが乗った雑誌(いわゆるエ◯本)だが…
これらもまだ、ギリギリ許せる範囲である。
では、一番酷いのになるとどうなるか。
答えは簡単、もう最悪だ。
賞味期限などとっくに切れて異臭を放つネコの餌、牛乳を拭いた後数ヶ月は放置された雑巾に、血が付いたままの拷問具、極め付けには明らかに怪しいクスリまで置いてある。
数え始めるとと本当にキリが無い。
そう、つまり…
端的に言って、非常に汚いのだ。
「おいヴェリタ。俺も手伝うからその箱半分寄越せ。」
と、葵が言っているが。この惨状の原因は主に…
「いいえ、一つで構いません。コレさえ何とかして頂ければ、ですがね。」
「あ?って…クソが!ほとんどあのバカの私物じゃねぇか!!」
今はまだこの場にいない、とある狂犬なのだが。二人が眼を見合わせて溜息をついていると、カタカタと階段をヒールで降りる音が聞こえてきた。
「朝っぱらからなんの騒ぎだい?全く、元気なモンさねぇ……」
ドアを開けた先にいたのは、少々だらしない格好の、金髪に翠色の目の女性だ。
「うわ、酒くさ。しかも死人みたい。飲み過ぎでしょ…」
白音の言うとおり明らかに顔色が悪いが、昨日の宴会での深酒のせいだろう。二日酔い、と言うヤツである。
「しかも手前、昨日賭けの後ロクに片付けせずに寝やがったな!?」
彼女の名はルミナ・アルベリーニ。今はギャーギャーと怒鳴る葵の小言にやれやれと肩を竦めながら、投げつけられたトランプを手に取っている。
「ほっときゃ誰かが片付けるんだから、問題無いだろうに…」
「その性根が既に問題だと言っているのです!!」「その根性がダメなんだって言ってんだろが!!」
二人の集中砲火を喰らってしかめ面になるルミナ。二日酔いに怒鳴り声の二重奏は、さしものギャンブラーも少々堪えるようだ。ソファーに座り込んで、面倒くさそうに話を流している。
「どーでも良いけどうるさいしめんどくさい、他所でやれ。」
「白音、手前は口突っ込む前にまずこのゲームソフトから片付けろ。したら美味いモン作ってやっから。な?」
「あーはいはい、分かったっての。」
葵の説得に応じるのかと思いきや、ディスプレイから目を離す気配を一向に見せない白音。
挙げ句の果てにはぐびぐびと机の横のエナドリを飲み干し、カランと床に投げ捨てる。たった今追加された空き缶はCDとぶつかって、無機質な音を部屋に響かせた。
その音に、耐えられないとばかりに肩を震わせる者が約一名。
「で、す、か、ら!ゴミはゴミ箱、空き缶は缶入れに!!何度言えば分かるというのですか、貴女は!!!」
そう、ヴェリタである。一方の葵はと言えば、彼とは対照的に黙々と片付けを進めている。時たま、「なんだコレ!?」とは言っているが。
なお、ルミナはソファーで爆睡中である。起きて来た意味とは。
「あー、うるせ。潔癖症かよ…いや、むしろ神経質?」
「うーん、どっちかって言うと小姑じゃない?てか、ヴェリタもいいじゃんそんぐらい。捨てるだけだし。」
ついにキレたヴェリタを棒読みながらも宥めるヴァイラだが、「その感情の籠っていない声が一番腹が立つのですよ!!」とのとばっちり…と言うより、もらい事故?を受けて困惑している。
「第一貴女がたは、大した掃除もしないで…」
「ストップだヴェリタ、そこまでにしやがれ。掃除なら俺がアイツらの分もやってやるから。な?」
滔々と続くかと思われたヴェリタの小姑めいた説教だが、葵の尽力によってどうにかこうにか大惨事マフィア大戦は免れた。
しかし、そこでハタと手を打つヴァイラ。
「そういや、あいつらどこ行ったの?」
「降りる前に見たけど…部屋にはいなかったぜ。[漢字]視信[/漢字][ふりがな]しのぶ[/ふりがな]の野郎は鍵掛けてやがったけど、アイツも外だろうな。」
ひょいと先程のエナドリを捨てながら、葵が口を開く。それを見ていながらも、「ん、さんきゅ」とだけ端的に返す白音に、ヴェリタが再び目くじらを立てようとしたその時。
「ところがどっこい、僕ってばたった今帰ってきたトコなんすわぁ。」
ひょい、と紫水晶色の目の青年が、廊下から顔を出した。
金のインナーカラーを入れた長い銀髪を後ろで軽く括って、オーバーサイズ気味なパーカーに身を包んだ彼は、朝帰りとは思えない様子でニヤニヤと笑っている。
彼こそがさっき話に挙がっていた視信…フルネームを[漢字]楼[/漢字][ふりがな]たかどの[/ふりがな][漢字]視信[/漢字][ふりがな]しのぶ[/ふりがな]というのだが…明らかに偽名である。少なくとも日本人には見えない。
「…あぁ、ちょうど良い所に。この辺りの物は貴方の私物でしょう?部屋に持っていくように。」
こめかみをさすりながらそう言ったヴェリタは視信にカゴを渡すと、「頭痛薬を飲んで参ります」とだけ言って自室に消えた。
はいはぁい、と雑な返事をして受けとった視信の方は「うわ、このネックレスとかよく分かったっすねぇ。」と呟いている。
「へぇ、君のだったんだ。」
やっと犯人が分かったよ、と頷くヴァイラに「いやぁコレ、プレゼントだったんですが突っ返されちまったんですよねぇ…」などと調子良く並べ立てる視信。
それに対して「女遊びも程々にしとけよ…」と葵が苦言を呈しても、ヘラヘラと笑うばかりでマトモな返事は返ってこない。
「てゆーかそもそも君、この組織のヒトじゃないじゃん。なんで当たり前の顔して転がり込んでんの?」
「おいおい、ヴァイラの嬢ちゃんてば辛辣っすなぁ。コレでもケッコー優秀な情報屋さんですぜ?」
「答えになってないよ、ソレ。」
実際、過去に数回交際相手を名乗る女性が乗り込んで来た事があるし、そう言われるのも仕方ないな…と思う白音だが、それ以前にもっと気になる事があったのを思い出してしまった。
「あのバカ、どこ行った…?」
そう、時刻は既に11時近くまで達している。
にも関わらず、なぜか姿を表さない者が約二名。
いくら夜行動が基本のマフィアといえど、もうそろそろ起きてこなくてはおかしい時間帯だ。
「そういや、ボスちゃんも居ませんよねぇ。どーしたんだか。」
そう。その二人とは、彼らのボスである女性とその傍らに常に(それこそうざったい程に)控える忠犬…もとい、狂犬だ。
なんとも不気味な事に、彼らが揃って行方不明である。
嫌な予感しかしねぇ…とぼやく葵に、「少なくとも昨日の宴会にはいたよ。相変わらず狂犬してたね。」と、役に立つのか不明な情報がヴァイラから寄せられる。
「なら、呼び出せば良いだけさね。何を悩んでるんだい?」
そんな飄々とした声がソファーから響く。全員の困惑を、置き去りにしたままに。