二次創作
カイザーフューラー
「陛下!」「陛下!」
目が覚めた時、一番最初に耳にしたのはそんな言葉だった
(陛下?何をとぼけた事を言っているのだコイツらは...?)
戸惑いながらもヒトラーは自分に置かれた状況を整理する
ドイツは二回目の世界大戦に負けたのを悟り...私は劇薬と拳銃を使いベルリンの地下室で自殺したはずだぞ・・・?
それなのに周りに見える風景はとても地下室だとは思えなかった
もしやソビエトのスパイに嵌められたのか!?・・・いやそうだとは思えない、第一アイツらアカ共はこんなめんどくさい事はしない筈だろう
「陛下!返事をしてください!陛下!」
・・・・・・それにしたって外がうるさい
なんだコイツらは?いま時代に似つかわしくないヒゲを生やした連中・・・まるでドイツ帝国の連中のようだな
それにしてもゲーリングはどこだ?私の地下室にこんなどこの馬の骨かもわからない奴らを入れおって・・・
突如そう思ったヒトラーは困惑よりも怒りが勝ち、こう叫んだ
「ゲーリングはどこだ!私の地下室には私はエヴァ・ブラウン以外の人間は入れるなと言ったはずだろう!」
そう叫ぶと周りのドイツ帝国軍人のような格好をした人間は急に戸惑いだした
「陛下・・・その・・・」
「[大文字]ゲーリング[/大文字]とは誰なのでしょうか?」
コイツら・・・ゲーリングも知らないのか?本当にドイツに生まれた奴らとは到底思えない無能ばかりだな
「国家社会主義ドイツ労働者党最高幹部のゲーリングだ!さっさと呼んでこい!」
「恐れながら陛下帝国の要人にゲーリングなる人物は居ません・・・」
ちらりと周りに飾られた装飾品を見る
驚いた
数々の銘柄や陶磁器がそこには置かれていたのだ、まるで地下の塹壕部屋とは思えない
そしてつぎにヒトラーは先ほどゲーリングは居ないと言った軍人に目をやる
「おいきさま」
「なんでしょうか?陛下?」
「きさまは先程ゲーリングという男は居ないと言ったな?」
「は、はい・・・その通りでございます」
「それは間違いないのか」
「はい、間違いありません」
「というより記憶にありません」
その言葉を聞きヒトラーは驚愕する
ーーなるたる事だ!
どうやらゲーリングは存在ごとこの世界から抹消されたらしい。存在自体が公式記録から抹消され、「そんな人物はいなかった」事にされている。という事はあのイカれたオカルト信者のカール・マリア・ヴィリグートも抹消されていてもおかしくない。
「では、今は誰が国家社会主義ドイツ労働者党最高幹部の座についてるのだ、ヒムラーか?ゲッペルスか?」
「……残念ながら、いま陛下が名を挙げられた両名も存じません。それに……我が国に国家社会主義ドイツ労働者党たる組織もありません・・・・・・」
先ほどの軍人が、申し訳なさそうに首を横に振った。
周囲に並ぶ人々も不安げな顔で自分を見つめているが、衝撃を受けたヒトラーはそれを気にするどころでは無かった。
有力株の2人も粛清されているばかりか、国家社会主義ドイツ労働者党すら解体されたというのか!
―― 国家社会主義ドイツ労働者党俗に言う「ナチ党」は秘密警察や軍と並んで、ドイツを支える鉄のトライアングルだ。その一角である国家社会主義ドイツ労働者党が解体されるともなれば、よほど大掛かりなクーデターがあったに違いない。
「………っ」
まずい、非常によろしくない。ヒトラーは苛立たしげに爪を噛む。
(クーデターを起こした奴は、本物の馬鹿に違いない! 軍隊、ナチ党、秘密警察……ドイツを統治するにはこの3つは必要不可欠だというのに!)
偉大なる祖国、ドイツは最高種族のアーリア人、そして劣等民族、この二つの民族によって国は動いている。もしナチ党という枷を失えば、それぞれの民族は己の利益のみを求めてバラバラに動いてしまう。そうなれば祖国は分裂し、国外の敵から身を守る術は無くなる。
ヒトラーは自殺を考えていたとはいえ勝利はまだ諦めていなかった、ゲーリングやゲッペルスにも勝機が少しでも見えたのなら必ず掴み取れ、と言ったほどだ
そんな事を考えているヒトラーにある1人の男が近づいてくる
「ヴィルヘルム、いつまで寝ているつもりだ。体調に問題がないなら、すぐに着替えろ。時間がないぞ」
壮年男性の不満げな声で、物思いに耽っていたヒトラーの思考は中断される。振り返れば、豊かな顎鬚を蓄えた壮年男性が不審そうな目でこちらを見つめていた。
「……ヴィルヘルムとは誰の事かね?」
聞き間違いでなければ、この男は私の事を『ヴィルヘルム』と呼んだような気がする。さすがにドイツの支配者たる最高指導者を人違いした訳でも無いだろうが、念のために聞くと呆れたような嘆息が帰ってきた。
「ヴィルヘルムといえば、お前しかおらんだろう―――― フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴィクトル・アルベルト・フォン・プロイセン……我らがカイザー」
聞き捨てならない単語が聞こえたような気がする。私の記憶が正しければ、この男の言葉に該当する人間は一人しかない。
かつて自分たちが憎悪し、怒りの矛先を向けた宿敵。無能な戦争指導で国家財政を傾け、偉大なるドイツを衰退させた張本人。
その瞬間、経緯こそ解らないが自分が何者になったかを確信した。ああ、今の私はもはや「ヒューラー」ヒトラーではないのだ。
―――ドイツ帝国最後の皇帝『ヴィルヘルム二世』だという事に。
そこまで思い至ったヒトラーは、ある重要な情報を聞きそびれていた事に気付く。
「……ところで、今日はいつだね?」
すると老人は「そんな事も覚えとらんのか」と言わんばかりに鼻を鳴らし、重々しい声で告げた。
「1914年の7月28日だ」
それを聞いて、ヒトラーは再び倒れそうになった。
第1次世界大戦の引き金となった「サラエボ事件」、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナントが暗殺されたのがちょうど2か月前のこと。
つまり――。
「今日、オーストリア=ハンガリーがセルビアに宣戦を布告した。お前はそれを聞いて卒倒したのだ」
それはある意味で、死刑宣告にも等しいものだった。
もうすぐ戦争が始まる。結果としてヴィルヘルム二世を退位へと誘なった、全ての戦争を終わらせる戦争………第一次世界大戦が始まるのだ。
目が覚めた時、一番最初に耳にしたのはそんな言葉だった
(陛下?何をとぼけた事を言っているのだコイツらは...?)
戸惑いながらもヒトラーは自分に置かれた状況を整理する
ドイツは二回目の世界大戦に負けたのを悟り...私は劇薬と拳銃を使いベルリンの地下室で自殺したはずだぞ・・・?
それなのに周りに見える風景はとても地下室だとは思えなかった
もしやソビエトのスパイに嵌められたのか!?・・・いやそうだとは思えない、第一アイツらアカ共はこんなめんどくさい事はしない筈だろう
「陛下!返事をしてください!陛下!」
・・・・・・それにしたって外がうるさい
なんだコイツらは?いま時代に似つかわしくないヒゲを生やした連中・・・まるでドイツ帝国の連中のようだな
それにしてもゲーリングはどこだ?私の地下室にこんなどこの馬の骨かもわからない奴らを入れおって・・・
突如そう思ったヒトラーは困惑よりも怒りが勝ち、こう叫んだ
「ゲーリングはどこだ!私の地下室には私はエヴァ・ブラウン以外の人間は入れるなと言ったはずだろう!」
そう叫ぶと周りのドイツ帝国軍人のような格好をした人間は急に戸惑いだした
「陛下・・・その・・・」
「[大文字]ゲーリング[/大文字]とは誰なのでしょうか?」
コイツら・・・ゲーリングも知らないのか?本当にドイツに生まれた奴らとは到底思えない無能ばかりだな
「国家社会主義ドイツ労働者党最高幹部のゲーリングだ!さっさと呼んでこい!」
「恐れながら陛下帝国の要人にゲーリングなる人物は居ません・・・」
ちらりと周りに飾られた装飾品を見る
驚いた
数々の銘柄や陶磁器がそこには置かれていたのだ、まるで地下の塹壕部屋とは思えない
そしてつぎにヒトラーは先ほどゲーリングは居ないと言った軍人に目をやる
「おいきさま」
「なんでしょうか?陛下?」
「きさまは先程ゲーリングという男は居ないと言ったな?」
「は、はい・・・その通りでございます」
「それは間違いないのか」
「はい、間違いありません」
「というより記憶にありません」
その言葉を聞きヒトラーは驚愕する
ーーなるたる事だ!
どうやらゲーリングは存在ごとこの世界から抹消されたらしい。存在自体が公式記録から抹消され、「そんな人物はいなかった」事にされている。という事はあのイカれたオカルト信者のカール・マリア・ヴィリグートも抹消されていてもおかしくない。
「では、今は誰が国家社会主義ドイツ労働者党最高幹部の座についてるのだ、ヒムラーか?ゲッペルスか?」
「……残念ながら、いま陛下が名を挙げられた両名も存じません。それに……我が国に国家社会主義ドイツ労働者党たる組織もありません・・・・・・」
先ほどの軍人が、申し訳なさそうに首を横に振った。
周囲に並ぶ人々も不安げな顔で自分を見つめているが、衝撃を受けたヒトラーはそれを気にするどころでは無かった。
有力株の2人も粛清されているばかりか、国家社会主義ドイツ労働者党すら解体されたというのか!
―― 国家社会主義ドイツ労働者党俗に言う「ナチ党」は秘密警察や軍と並んで、ドイツを支える鉄のトライアングルだ。その一角である国家社会主義ドイツ労働者党が解体されるともなれば、よほど大掛かりなクーデターがあったに違いない。
「………っ」
まずい、非常によろしくない。ヒトラーは苛立たしげに爪を噛む。
(クーデターを起こした奴は、本物の馬鹿に違いない! 軍隊、ナチ党、秘密警察……ドイツを統治するにはこの3つは必要不可欠だというのに!)
偉大なる祖国、ドイツは最高種族のアーリア人、そして劣等民族、この二つの民族によって国は動いている。もしナチ党という枷を失えば、それぞれの民族は己の利益のみを求めてバラバラに動いてしまう。そうなれば祖国は分裂し、国外の敵から身を守る術は無くなる。
ヒトラーは自殺を考えていたとはいえ勝利はまだ諦めていなかった、ゲーリングやゲッペルスにも勝機が少しでも見えたのなら必ず掴み取れ、と言ったほどだ
そんな事を考えているヒトラーにある1人の男が近づいてくる
「ヴィルヘルム、いつまで寝ているつもりだ。体調に問題がないなら、すぐに着替えろ。時間がないぞ」
壮年男性の不満げな声で、物思いに耽っていたヒトラーの思考は中断される。振り返れば、豊かな顎鬚を蓄えた壮年男性が不審そうな目でこちらを見つめていた。
「……ヴィルヘルムとは誰の事かね?」
聞き間違いでなければ、この男は私の事を『ヴィルヘルム』と呼んだような気がする。さすがにドイツの支配者たる最高指導者を人違いした訳でも無いだろうが、念のために聞くと呆れたような嘆息が帰ってきた。
「ヴィルヘルムといえば、お前しかおらんだろう―――― フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴィクトル・アルベルト・フォン・プロイセン……我らがカイザー」
聞き捨てならない単語が聞こえたような気がする。私の記憶が正しければ、この男の言葉に該当する人間は一人しかない。
かつて自分たちが憎悪し、怒りの矛先を向けた宿敵。無能な戦争指導で国家財政を傾け、偉大なるドイツを衰退させた張本人。
その瞬間、経緯こそ解らないが自分が何者になったかを確信した。ああ、今の私はもはや「ヒューラー」ヒトラーではないのだ。
―――ドイツ帝国最後の皇帝『ヴィルヘルム二世』だという事に。
そこまで思い至ったヒトラーは、ある重要な情報を聞きそびれていた事に気付く。
「……ところで、今日はいつだね?」
すると老人は「そんな事も覚えとらんのか」と言わんばかりに鼻を鳴らし、重々しい声で告げた。
「1914年の7月28日だ」
それを聞いて、ヒトラーは再び倒れそうになった。
第1次世界大戦の引き金となった「サラエボ事件」、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナントが暗殺されたのがちょうど2か月前のこと。
つまり――。
「今日、オーストリア=ハンガリーがセルビアに宣戦を布告した。お前はそれを聞いて卒倒したのだ」
それはある意味で、死刑宣告にも等しいものだった。
もうすぐ戦争が始まる。結果としてヴィルヘルム二世を退位へと誘なった、全ての戦争を終わらせる戦争………第一次世界大戦が始まるのだ。