8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することもないから君とだだってた

葵　「あ〜暑っつ倒れそう」
うちこ　「でもまぁ夏は嫌いかな」
猫をなでながら
君はふてぶてしく呟いた
にゃ〜
うちこ　「あっねこちゃん待って〜」
葵　「うちこっ止まって！！」
逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
うちこ　「えっ」
バッと通ったトラックが、君を轢きずって泣き叫ぶ。
飛び散る血飛沫が君の香りと混ざり合って、思わずむせ返った。
葵　「嘘に決まってるよね、、、」
嘘みたいな陽炎が嘘じゃないぞって
葵　「うちこ、、、起きろよ」

　夏の水色と、かき回すような蝉の音に全て眩んだ

[斜体]オキロオキロ[/斜体]
目を覚ました　うちこ特製の目覚まし時計で
葵　「今何時？」
8月14日の、午前12時過ぎくらいを指している。
葵　「あれは夢だったのかな」

うちこ「私が死ぬ夢を見たと？」
昨日夢で見た公園と同じ場所で、私はうちこに昨日に夢の話をした。
葵「めっちゃ怖かった」
（なんでこの公園なんかで、、、）
そんなことをぼんやりと思ったけどまあいっかと思った。
「もう今日は帰ろうか」
道を抜けたその時。周りの人は皆上を見上げ、口を開いていた。
「どうしたの？」


落下してきた鉄柱が、君を貫いて突き刺さる。劈く悲鳴と風鈴の音が、木々の隙間で空廻りした。昨日の夢が脳裏にちらつく。
「なんでまたこんな夢を、、、」
ぐらり、と目眩を感じた。ワザとらしい陽炎が、「嘘じゃないぞ」って嗤ってる。

　眩む視界に映った君の横顔が、笑っていたような気がした。

何度世界が眩んでも、陽炎が嗤って奪い去る。それを何回も何十年も繰り返して何度君を、失ったのだろう。
（もうこれしか道はない）
自分自身に言い聞かせる。こんなよくある話なら結末はきっと1つだけ。
　繰り返した夏の日の向こうへと足を向けた。

走り去っていく猫を追いかけたうちこは赤信号の道路へ飛び出そうとする。そんな君を私は、バッと押しのけた。
「あおちゃん？！」
私の身体は、トラックに当たった。




「ｯｯ、あおちゃん！！」
うちこが駆け寄ってきた。何度見たかわからない血飛沫の色。君の瞳と軋む身体に乱反射する。文句ありげな陽炎に「ざまぁみろよ」って笑ってやった。
（やっとお前に勝てたな）

実によく在る夏の日のこと。そんな何かが、ここで終わった。



目を覚ましたのは8月14日のベッドの上。"彼女"はただ、
「…またダメだったよ」と一人、猫を抱きかかえていた。