とりぷるふーるず!!
放課後。
いつものように、弥生は理科準備室にいた。
試薬の整理、ガスバーナーの点検、顕微鏡の手入れ。
それが彼女の日常だった。
そこに――見知らぬ男子が、ひょこっと顔を出した。
「ごめん、ここって部外者立ち入り禁止だった?」
白衣でもなく、制服でもなく、
Tシャツにパーカーのラフな格好。
「……あなた、誰?」
「風紀委員。いや、臨時で補佐みたいなやつ。
顧問にこれ返してこいって言われて」
彼が手にしていたのは、理科室の貸出ノートPCだった。
[水平線]
「風紀、ねぇ……正直、信用ならないんだけど」
「うん、それは知ってる。革命三人組の一人でしょ、君」
弥生の眉がぴくっと動いた。
でも彼は――まったく敵意がなかった。
「科学好きって聞いてたけど、本当に好きなんだな。
この部屋、君の家みたいな匂いするもん」
「は?どういう意味」
「いい意味。居心地がいいってこと」
ほんの少しだけ、
弥生の心拍数が変化した。
(……なにこれ。生理的変化。予測不可)
[水平線]
翌日から、彼――高峯 真澄(たかみね ますみ)は、
なぜかふらっと理科準備室に顔を出すようになった。
「また来たの?風紀委員ってヒマなの?」
「いや……理科室、落ち着くから」
「君、感情で動いてるね。論理がない」
「うん。そういうとこ、君がカッコいいと思ってる」
「…………」
弥生は心の中で、恋愛スコアの再計算を始めた。
第一印象:50点
興味深さ:82点
会話時のドーパミン反応:+5%
手が触れた瞬間の静電気:0.3ボルト
(やっぱりおかしい、僕、この人のことを観察してるんじゃない。見ていたいんだ。)
---
[水平線]
ある日、激しい雨。
誰も来ない準備室に、彼がまた現れた。
「傘忘れたから、雨宿り」
「……うちに来なよ、傘ならあるから」
「それ、誘い文句?」
「違う。合理的判断。でも――そう聞こえたなら、たぶん、合ってる」
沈黙。
弥生は、彼の横に静かに座った。
「……僕は、人の顔の違いがうまく認識できないの。
でも、君だけは、遠くからでもすぐわかる」
「それって……」
「たぶん、それが“好き”ってことだって、今ならわかる。」
真澄は何も言わなかった。
ただ、そっと手を伸ばして、弥生の手にふれた。
温度:36.8度
脈拍:82/min
発汗:あり(少)
その瞬間、“数値では処理できないものが、胸の奥で弾けた。”
[水平線]
翌日。生徒会室にて。
「ちょっとぉぉぉおお!? 弥生が男子と手ぇ繋いで歩いてたって聞いたんですけどおおお!?」
「ほんと!?恋!?まじで!?革命より事件!!」
「うるさい。静かにして。僕は今、脳内で“好き”という感情の時系列を解析中なの」
「そういうとこがかわいいんだよぉぉぉ!!」
「いや……でもちょっと羨ましいかも。
誰かに“見られる”のが、怖くなくなるのって……素敵だよね」
弥生は照れくさそうに、でも嬉しそうに言った。
「うん。僕、彼の目だけは、ちゃんと見えるんだ。」
[水平線]
それは、数値で説明できない奇跡。
確率で測れない感情。
でも、確かに今ここにあるもの。
弥生の世界は、
ほんの少し、
[中央寄せ]色づいた。[/中央寄せ]
いつものように、弥生は理科準備室にいた。
試薬の整理、ガスバーナーの点検、顕微鏡の手入れ。
それが彼女の日常だった。
そこに――見知らぬ男子が、ひょこっと顔を出した。
「ごめん、ここって部外者立ち入り禁止だった?」
白衣でもなく、制服でもなく、
Tシャツにパーカーのラフな格好。
「……あなた、誰?」
「風紀委員。いや、臨時で補佐みたいなやつ。
顧問にこれ返してこいって言われて」
彼が手にしていたのは、理科室の貸出ノートPCだった。
[水平線]
「風紀、ねぇ……正直、信用ならないんだけど」
「うん、それは知ってる。革命三人組の一人でしょ、君」
弥生の眉がぴくっと動いた。
でも彼は――まったく敵意がなかった。
「科学好きって聞いてたけど、本当に好きなんだな。
この部屋、君の家みたいな匂いするもん」
「は?どういう意味」
「いい意味。居心地がいいってこと」
ほんの少しだけ、
弥生の心拍数が変化した。
(……なにこれ。生理的変化。予測不可)
[水平線]
翌日から、彼――高峯 真澄(たかみね ますみ)は、
なぜかふらっと理科準備室に顔を出すようになった。
「また来たの?風紀委員ってヒマなの?」
「いや……理科室、落ち着くから」
「君、感情で動いてるね。論理がない」
「うん。そういうとこ、君がカッコいいと思ってる」
「…………」
弥生は心の中で、恋愛スコアの再計算を始めた。
第一印象:50点
興味深さ:82点
会話時のドーパミン反応:+5%
手が触れた瞬間の静電気:0.3ボルト
(やっぱりおかしい、僕、この人のことを観察してるんじゃない。見ていたいんだ。)
---
[水平線]
ある日、激しい雨。
誰も来ない準備室に、彼がまた現れた。
「傘忘れたから、雨宿り」
「……うちに来なよ、傘ならあるから」
「それ、誘い文句?」
「違う。合理的判断。でも――そう聞こえたなら、たぶん、合ってる」
沈黙。
弥生は、彼の横に静かに座った。
「……僕は、人の顔の違いがうまく認識できないの。
でも、君だけは、遠くからでもすぐわかる」
「それって……」
「たぶん、それが“好き”ってことだって、今ならわかる。」
真澄は何も言わなかった。
ただ、そっと手を伸ばして、弥生の手にふれた。
温度:36.8度
脈拍:82/min
発汗:あり(少)
その瞬間、“数値では処理できないものが、胸の奥で弾けた。”
[水平線]
翌日。生徒会室にて。
「ちょっとぉぉぉおお!? 弥生が男子と手ぇ繋いで歩いてたって聞いたんですけどおおお!?」
「ほんと!?恋!?まじで!?革命より事件!!」
「うるさい。静かにして。僕は今、脳内で“好き”という感情の時系列を解析中なの」
「そういうとこがかわいいんだよぉぉぉ!!」
「いや……でもちょっと羨ましいかも。
誰かに“見られる”のが、怖くなくなるのって……素敵だよね」
弥生は照れくさそうに、でも嬉しそうに言った。
「うん。僕、彼の目だけは、ちゃんと見えるんだ。」
[水平線]
それは、数値で説明できない奇跡。
確率で測れない感情。
でも、確かに今ここにあるもの。
弥生の世界は、
ほんの少し、
[中央寄せ]色づいた。[/中央寄せ]