とりぷるふーるず!!
「はい!全員、明日ヒマね!?海行くよ!!」
放課後の生徒会室に、元気よく汐花の声が響く。
「唐突すぎるだろ……」
条兎がテスト範囲のプリントを投げ出す。
「ずっと前から決めてたから!言ってなかっただけ!」
「言ってなきゃ決めてないのと同じじゃない?」
「細けぇことはいいの!弥生、賛成だよね?」
「まぁ……夏だしね。気圧の変化と塩分濃度の関係、実地で観察できるかも」
「それ海の楽しみ方、理系すぎない?」
[水平線]
朝6時集合。眠そうな顔で電車に揺られて、やっと着いたのは――
[太字]キラキラの海!![/太字]
「っっさいこう~~~~~!!!!」
水着の上からパーカーを羽織った汐花が、全力で浅瀬に走り出す。
条兎は荷物を持ちながら、うっすら笑って言う。
「……子どもかよ」
「あなたも笑ってるよ?」
「別に笑ってない。潮風が目に入っただけだ」
弥生はというと、ラッシュガードにハット、サングラス、完璧な紫外線対策。
「日焼けのダメージはDNAにまで及ぶからね。防御は理論武装」
「完全に子供の付き添いで来たモデルのお母さんじゃん……」
[水平線]
汐花 → ビーチバレー無双&かき氷3杯チャレンジ
「うおー!勝てば焼きそば無料ー!!」
条兎 → 一人で岩場を観察&ビーチチェアで読書
「……ウニいる。ウニってこんな雑にいるんだ……」
弥生 → 貝殻採集&防水メモ帳で化学構造式描く
「この色、カルシウムの結晶構造と関係あるかも……」
3人バラバラのようで、でも気づくとすぐ近くにいる。
その空気感が、“居心地のいい”証拠だった。
[水平線]
午後。
海を見ながら、条兎は一人、岩に腰掛けていた。
「……なんか、置いてきぼりな気分だな」
賑やかな砂浜の声。
笑い合う汐花と弥生の姿。
「みんな、ちゃんと楽しそうで……なんか、俺だけ浮いてるような」
そこに、音もなく弥生が隣に座る。
「……人混み、嫌だった?」
「違う。なんか、うまく混ざれない感じ」
弥生は静かに答えた。
「でも、あえて"浮いてる"選択をしてるようにも見えたよ。
誰かと同じになれなくても、違うことを恐れなきゃいいと思う」
「……うん、そうかもな」
「私も似たようなこと、思ってた。みんなで来てるのに、気づくと観察ばっかしてるなって」
その時。
「なに2人でしっとりしてんの!!」
汐花がずぶ濡れのまま突撃してきた。
「こら!!しんみり禁止!!」
「……いきなり来るな!服が!!冷たい!!」
「よし、じゃあ3人で泳ぐよ!今から強制!!」
「観察も、分析も、ひとまずおあずけ!」
弥生が笑って頷いた。
「……強制、ね。まあ、今日くらいはそれでもいいか」
[水平線]
帰り道。
オレンジ色の夕陽が、3人の影を長く伸ばしていた。
誰もしゃべらない。
けど、足音と、笑った記憶と、心地よい疲れだけがあった。
汐花が、ふと立ち止まって言う。
「なんかさ、うちら、バラバラなとこ多いけどさ――
バラバラだからこそ、一緒にいる意味あるんだと思う」
弥生が、少し驚いたように見つめて、
条兎が、小さく頷いた。
「……たしかに、“同じじゃない”って、悪くないかもな」
「でしょ~~?さすが私~~~!!」
「結論を奪っていくな……!」
その笑い声が、波の音に混ざって、遠くまで響いた。
[水平線]
帰りの電車、窓に反射した3人の顔。
汐花は爆睡、弥生はイヤホンで音楽、条兎は静かに海の写真を眺めていた。
違う過ごし方。違う表情。
でもそれが、“とりぷるふーるず”だった。
[太字]同じ空間にいることを、選び続ける3人[/太字]
海の記憶は、静かに胸の奥に刻まれていた。
放課後の生徒会室に、元気よく汐花の声が響く。
「唐突すぎるだろ……」
条兎がテスト範囲のプリントを投げ出す。
「ずっと前から決めてたから!言ってなかっただけ!」
「言ってなきゃ決めてないのと同じじゃない?」
「細けぇことはいいの!弥生、賛成だよね?」
「まぁ……夏だしね。気圧の変化と塩分濃度の関係、実地で観察できるかも」
「それ海の楽しみ方、理系すぎない?」
[水平線]
朝6時集合。眠そうな顔で電車に揺られて、やっと着いたのは――
[太字]キラキラの海!![/太字]
「っっさいこう~~~~~!!!!」
水着の上からパーカーを羽織った汐花が、全力で浅瀬に走り出す。
条兎は荷物を持ちながら、うっすら笑って言う。
「……子どもかよ」
「あなたも笑ってるよ?」
「別に笑ってない。潮風が目に入っただけだ」
弥生はというと、ラッシュガードにハット、サングラス、完璧な紫外線対策。
「日焼けのダメージはDNAにまで及ぶからね。防御は理論武装」
「完全に子供の付き添いで来たモデルのお母さんじゃん……」
[水平線]
汐花 → ビーチバレー無双&かき氷3杯チャレンジ
「うおー!勝てば焼きそば無料ー!!」
条兎 → 一人で岩場を観察&ビーチチェアで読書
「……ウニいる。ウニってこんな雑にいるんだ……」
弥生 → 貝殻採集&防水メモ帳で化学構造式描く
「この色、カルシウムの結晶構造と関係あるかも……」
3人バラバラのようで、でも気づくとすぐ近くにいる。
その空気感が、“居心地のいい”証拠だった。
[水平線]
午後。
海を見ながら、条兎は一人、岩に腰掛けていた。
「……なんか、置いてきぼりな気分だな」
賑やかな砂浜の声。
笑い合う汐花と弥生の姿。
「みんな、ちゃんと楽しそうで……なんか、俺だけ浮いてるような」
そこに、音もなく弥生が隣に座る。
「……人混み、嫌だった?」
「違う。なんか、うまく混ざれない感じ」
弥生は静かに答えた。
「でも、あえて"浮いてる"選択をしてるようにも見えたよ。
誰かと同じになれなくても、違うことを恐れなきゃいいと思う」
「……うん、そうかもな」
「私も似たようなこと、思ってた。みんなで来てるのに、気づくと観察ばっかしてるなって」
その時。
「なに2人でしっとりしてんの!!」
汐花がずぶ濡れのまま突撃してきた。
「こら!!しんみり禁止!!」
「……いきなり来るな!服が!!冷たい!!」
「よし、じゃあ3人で泳ぐよ!今から強制!!」
「観察も、分析も、ひとまずおあずけ!」
弥生が笑って頷いた。
「……強制、ね。まあ、今日くらいはそれでもいいか」
[水平線]
帰り道。
オレンジ色の夕陽が、3人の影を長く伸ばしていた。
誰もしゃべらない。
けど、足音と、笑った記憶と、心地よい疲れだけがあった。
汐花が、ふと立ち止まって言う。
「なんかさ、うちら、バラバラなとこ多いけどさ――
バラバラだからこそ、一緒にいる意味あるんだと思う」
弥生が、少し驚いたように見つめて、
条兎が、小さく頷いた。
「……たしかに、“同じじゃない”って、悪くないかもな」
「でしょ~~?さすが私~~~!!」
「結論を奪っていくな……!」
その笑い声が、波の音に混ざって、遠くまで響いた。
[水平線]
帰りの電車、窓に反射した3人の顔。
汐花は爆睡、弥生はイヤホンで音楽、条兎は静かに海の写真を眺めていた。
違う過ごし方。違う表情。
でもそれが、“とりぷるふーるず”だった。
[太字]同じ空間にいることを、選び続ける3人[/太字]
海の記憶は、静かに胸の奥に刻まれていた。