文字サイズ変更

とりぷるふーるず!!

#11



生徒会室の壁に、やたらと派手なポスターが貼られた。

《第28回 蓮見河・夏の花火大会✨ 〜屋台もあるよ!〜》

「……これ、行きたい」

汐花が、ソファの背もたれから逆さに垂れながら呟いた。

「え?花火大会?」

弥生がラムネのビー玉をカランと鳴らす。

「行こうよ。浴衣着て。りんご飴食べて。金魚すくいして。ってやつ」

「お前、めちゃくちゃ夏満喫する気じゃん」

条兎が、珍しく笑った。

「だってさ――普通、やっときたいじゃん、うちらも。
“天才”とか“革命”とかじゃなくて、“夏休みの思い出”ってやつ」

静かな間。

弥生がふっと頷いた。

「じゃあ……行こう。三人で」

[水平線]

当日、駅前のロータリー。

「……っは!?!?何その格好!!!」

汐花が叫ぶ。

「条兎!?ピンクの浴衣!?髪おろしてる!?どしたの!?誰!?」

「う、うるさい!自分で選んだの!かわいくて悪いか!!」

「いや、いい……てか最高。わたし、いま恋に落ちそう……」

「やめて。全力で照れるから」

そこへ、弥生も合流。

白地に青い風車模様の浴衣、帯はきゅっと正確に結ばれている。

「……俺、柄の意味を統計的に検討してこれにした」

「柄の意味を……検討……?」
「それで風車……」
「なんか……弥生っぽい!!」
[水平線]
夜店は人だかり。焼きそば、ヨーヨー、射的、ラムネ――。

でも3人は、すぐに“注目の的”になった。

「えっ……生徒会じゃね!?」「超有名人きてんだけど……」「あれ、あの美術の天才の……!」

ざわめきに囲まれ、思わず逃げ出すように横道にそれる。

「やっばい、人気すぎて歩けない!」

「仕方ない……抜け道、探そう」

3人は裏道の石段をのぼり、川辺の小さな神社へたどり着く。

「……ここ、静かだね」

「穴場だったんだな」

蚊取り線香のにおいと、遠くで響く太鼓の音。

ベンチに座って、3人は手にしたラムネを開ける。
[水平線]

「かんぱーい……って音しないけど」

「しないけど……いいじゃん。今だけ普通の高校生ってこと
空に、一発、二発。

花火が上がる。

汐花「……ボクね、ずっと花火って苦手だった」

弥生「え?意外」

汐花「すぐ消えるし。あんなに綺麗なのに、一瞬で、もう見えなくなるじゃん」

条兎「……でも、綺麗じゃん。それだけでいいじゃん」

弥生「論理的じゃないけど、好きって、そういうもんかもな」

花火の音が、少しだけ遠くに聞こえた。

汐花は、花火の光の中で言った。

「今だけでいいから、ちゃんと覚えてたいな。
この3人で、笑ってる時間」

弥生「数値化できない思い出って、ちょっとだけ、憧れるね」

条兎「……うん。こういうのが、“生きてる”ってことかも」
[水平線]

花火が終わっても、人波は続く。

3人は、裏道を通って駅へ向かう。

途中、小さな写真館の前で足を止める。

「……インスタント写真、あるよ」

「うわ、懐かし。やろうやろう!」

3人は、浴衣姿で並んでピース。シャッターが切れる。

“カシャッ”

出てきた写真には、
少し照れた笑顔の3人と、
背景に映る、夜の灯り。

「これ、弥生のノートに貼ろう」

「え、それ恋バナノートに!?」

「違うよ!『とりぷるふーるずの思い出記録帳』つくるの!」

「なんか青春っぽくて、むかつく……でも、いいかも」
[水平線]

翌朝、生徒会室。

3人は、ぐったりとソファに沈んでいた。

「祭り、楽しかったね」

「うん……全身、蚊に刺されたけど」

「浴衣、2回くらい転びかけた」

「でも、たぶんあれが……“夏の正しい過ごし方”ってやつなんじゃない?」

静かに、微笑み合う3人。

その手元には、昨夜の写真が置かれていた。

花火より、夜店より、
一番綺麗だったのは――この笑顔だったかもしれない。

作者メッセージ

そういえば、皆さんにお願いがございまして、この三人に合うイメソンやオリ曲を考えてくれますか?個人的に「のだ」が合うと考えています!

2025/06/17 19:32

明け他人(枯花) ID:≫ 6ybA8nH1Vyj8g
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 14

コメント
[5]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL