仁愛に今、決別の歌を。
レイル視点
シエル「はぁ…電車での移動、なんか久しぶりだよね。」
奇妙なほどだれもいない街の電車の中、シエルがそんなことを言う。
アルト「確か梟実堂以来じゃなかったか?」
神威「そっか、そうだ…」
アルト君の声を聞いて、少し顔を曇らせる神威君。
レイル「…ねぇ、少し、昔話をしてもいい?」
ソプラノ「昔話…?」
レイル「…[太字]私と黄夏ちゃんが一緒に暮らしてた時のこと。[/太字]」
シエル「…」
[水平線]
レイル「黄夏ちゃん、お仕事慣れてきた?」
黄夏「ええ。こうして働くのも楽しいですね!」
レイル「うーわまぶしいなぁ…ポジティブ」
黄夏ちゃんと一緒に働いていたときのこと。
私はそのころ、お母さんからの仕送り請求に頭を悩ませていた。
それでも、生活費をカットしてでも黄夏ちゃんを養おうとしたのは、
多分妹にしてあげられなかったやさしさを消化するためだと今は思う。
その日の前の日にも、母から電話が来て。
___ねえまだなの仕送り?シエルを教育しなきゃいけないんだからさっさと全額頂戴よ。
それ以降連絡が途絶えることを、その時はまだ知らなかったかな。
その時は夕方だったかな。
黄夏「おーい、レイルせんぱーい!今日、レストランでご飯にしましょうよ!」
レイル「いいけど…正直私二人分のごはん満足に買えるお金ないんだけど((」
黄夏「大丈夫です、自分の分は自分で払いますよ!わたしもうニートじゃないんですから!」
レイル「じゃあ…仕方ないわね、行きましょう」
立派になって…と親みたいな感情がひしひしと湧いてくる。
店内に着いたとき、「お手洗いに行ってくる」と行って席を離れた黄夏ちゃんは、
少し遅れて戻ってきた。
やがて食事が運ばれてきて、二人とも黙々と食べていると。
黄夏「あの、レイル先輩」
レイル「ん?なぁに?」
黄夏「…わたし、居候やめようと思って」
レイル「…っ」
黄夏「あっ、レイル先輩が嫌いになったとかじゃ全然ないんですよ!?
ただ、その…」
黄夏「…これ以上、わたしにお金を使ってほしくないので。」
レイル「…いいのに、別に…」
黄夏「わたし、一人でも大丈夫です。…職場では多分まだ先輩に頼っちゃうかもしれないけど…」
レイル「…うん。」
黄夏「だから…」
レイル「…わかった。黄夏ちゃんも一人だちか~。なんかそんなに長く一緒にいたわけじゃないけど、さみしいわね」
黄夏「そうだ!これ、レイル先輩に」
レイル「えっ?」
そういって黄夏ちゃんは、かわいい黄色の小さな箱を机に置いた。
黄夏「こっそり選んできたんですよ。」
箱を開けてみると、中にはかわいいブローチが入っていた。
レイル「わぁ…いいの?もらって」
黄夏「もちろんです。使ってくれたらうれしいな」
レイル「…ありがとう。」
その時私は初めて、だれかを助けて感謝されるという経験をしたんだ。
[水平線]
神威「…いい話ですね」
レイル「まあ、特に伝えたかったことがあったわけじゃないんだけどさ。」
シエル「素敵な話だったよ」
アルト「…こうしてみると本当に、黄夏さんってオレたちを繋いでたんだな」
神威「アルトさん?」
アルト「なんだか寂しい」
ソプラノ「…なんだ、アルトにしては珍しいじゃないか。すこし妬けるな」
アルト「〇ね」
ソプラノ「この子生意気なんですけど~」
あはは、と少しだけ車内に笑い声が聞こえる。
それにしても本当に…
[太字]本当に人がいないわね。[/太字]