仁愛に今、決別の歌を。
アルト視点
ソプラノ「…どうする」
シエル「どうするって言われても…このままじゃ帰れないよ」
アルト「でも、それじゃあ黄夏さんを置いていって…勝手にオレらが
夢を取っていってしまうじゃないか!」
シエル「でもでも!!あたしたち、ここで帰ってもう一回来た時、また同じ迷路解けるかな!?
あれほぼ偶然だったでしょ!?」
アルト「痛いところを突くなよ!!」←逆切れ
レイル「…落ち着いて!」
アルト「…」
シエル「…お姉ちゃん?」
レイル「…今からここに、黄夏ちゃんを連れてこよう」
神威「…えぇ!?」
アルト「いくらなんでも非現実的すぎるでしょう!?第一、ハニーなんちゃらとかいう組織、どこにあるんだよ!?
それに、ここに連れてくるって普通___」
レイル「…私たちは、もう普通じゃないのよ」
シエル「…」
ソプラノ「普通じゃない?」
レイル「だっておかしいじゃない、こんな砂漠のど真ん中にある神殿を誰も調査しない!
ギミックや宝がそのままで残っている!…これは、ここだけじゃない、
梟実堂や凪蜘蛛神殿だってそう!」
レイル「…普通の人がいかないところへ、私たちは行っている。
もう、何かが狂ってるの、普通じゃないの!」
シエル「…普通じゃ、ない…」
レイル「…安心して、私に案がある。」
アルト「…案?」
そう言うとレイルさんは、カバンからナイフと小箱、そして手ぬぐいが二枚と…
一冊の童話を取り出した。
シエル「これは…?」
神威「…この童話…」
レイル「…先に言っておくわ。…ごめんなさい。皆さん」
アルト「…話が見えねーぞ…?」
レイル「…でも、これが最善なの。許してね」
シエル「…何、するの」
レイル「…メモリーストーリー…「幸福な王子」。」
そういい放つと、レイルさんはナイフを取り出し…
キレイな黄色の目を突き刺した。
シエル「っ!?」
ソプラノ「レイル君!?」
レイル「ウ”ゥッ…はぁっ…代償、は…私の…右目…」
レイル「ツバメ、君に…視力をあげよう」
呻きとともに発せられた声と、レイルさんの目から流れる血が、一羽のツバメを作り上げた。
レイル「私のために、黄夏ちゃんを探してきて」
そして、一枚の手ぬぐいを細くしてツバメに巻き、小箱から取り出したブローチで固定した。
レイル「行って…」
それだけ言い残し、レイルさんはその場に倒れこんでしまった。
赤黒いツバメは、悠々と空を飛び、どこかへ消えてしまったが。
シエル視点
抱え込んだ想いが、消えてくれなかった。
目の前で血を流す姉を見て、見栄なんか張れなくなった。
シエル「…お姉ちゃんの、バカ!!」
シエル「ねえ、どういうことなの!?」
アルト「…」
シエル「あたし、そんなに頼りなかった!?どうして言ってくれなかったの!!」
シエル「なんでまた、一人で抱え込んだのぉっ・・・!?」
レイル「…」
レイル「シエル。聞いて。」
レイル「…あなたは少し前、迷い戸惑い、堕ちていく私にこう言ってくれた」
レイル「…今だけでもいい。…優等生じゃなくて、バカになろうよ。って」
シエル「!」
レイル「私、バカでしょう?」
レイル「…でも、いいの。…私が今、一番したいことをしただけだから。
…ありのままで」
シエル「…っお姉ちゃん…」
レイル「だから許して?おあいこじゃない?…あなたも、バカでしょ?」
シエル「…うんっ、…うん、お姉ちゃん…」
お姉ちゃん、おぼえててくれてありがとう。
…あたし、今、幸せだよ。
暗くて
寒くて
白くて
黒くて。
「…」
「おはよう。072番」
「おはよう、ございます。」
「よく眠れた?」
「ええ。とても」
「さあ、行くわよ。」
「____はい。」