今日も私翠子(みどりこ)は、家庭教師の方に礼儀作法を教わる。その後はお母様とお姉様とお茶をする。その後湯浴みをしようと思ったら、お父様がやってきた。
「おい、翠子お前ももう16歳だ。だからそろそろ、結婚を考える年齢だ。」
「はい。そうでございますわね。」
たしかお姉様もこれぐらいで結婚していた。
「そこで、お前のために縁談話を持ってきてやった。」
「どなたでしょうか」
「侯爵家の毛利鷹場(たかば)様だ」
「毛利様⁉︎」
「ああそうだ」
「でっですが、我が家は伯爵の立場。わざわざ上の侯爵の毛利様がこちらに縁談を持ちかける利点があるのでしょうか？」
「それはお前が絶世の美女だからに決まっているからだろ！美女と結婚する事で、さらに権力を持とうとしているのだろう。まあともかく我が石川家にとって絶好の機会だ。見合いは1ヵ月後だ。断れると思うな。」
「はい。」
部屋へ入ると、掃除をしている苓がいた。
「翠子様、湯浴みは終えられましたか。」
「いいえそれより、お父様から縁談の話しがあったの。」
「⁉︎」
「お相手は？」
「侯爵家の毛利鷹場様よ。」
「おめでとうございます‼︎」
「ありがとう。でも、1ヵ月後に迫っているみたいなの。ごめんなさい、急なことで。」
「大丈夫です。翠子様のお幸せのため、この苓全力を尽くさせていただきます‼︎」
苓は元気良く答えた。
「本当にありがとう。あと、祝いのために明日和菓子屋に行くから一緒に着いてきてくれる？」
「承知しました。」
次の日
着物を着て、髪を紐で結い、化粧をした後顔を隠し、外を出た。今日は、高級和菓子屋風院へ行くらしい。たしかに1位2位を争う店だ。祝いの品に十分なものだろう。
「ここで翠子様は待っていてください。」
「わかったわ」
そう言われたところは外の長椅子だった。
春の心地よい風が吹いている。そうぼんやりと空を眺めていたその時、
「お前、どうやら金持ちそうだなぁ。」
「きゃあぁ。誰か誰か助けて」
泥棒に遭遇し人質にされてしまった。