二次創作
光と闇の狭間を駆ける迷ヰ犬
新居に引っ越してから二年が経ち、私は六歳になった。
あれから大戦は終わる気配も無いし、発話障害が治る気配も一切無い。
私は障害者学校の小一クラスに上がり、変わらず授業を受けている。
今日は金曜日だった。
お母さんとお父さんは仕事の関係で日曜の夜まで帰ってこない。
児童を置いていく、とは酷いのかもしれないが、一応[太字]家政婦[/太字]が決まった時間に来るので、別に一人になることには何も感じない。
元々、喋れないせいでいつも一人だから。
……親がいようとも。
とにかく。
私は誰もいない家の二階の自室で宿題——ただ単にひらがなを練習するだけ——をやっていた。
鉛筆の先端をひたすら紙に滑らせる。
無限にも等しい時間を過ごしたところで、ふと窓を見た。
窓には隣家である津島さんの部屋の一部が映っている。
そして、その部屋の窓はカーテンがあるせいで奥が見えない。
いつもと変わらない風景、[太字]のはずだった[/太字]。
「(……子ども………?)」
[太字]誰もいないはずの、[/太字]津島さんの家の窓から私…と同じ年くらいの子どもが、じーっ、と見ていたのである。
見られすぎて恐怖を感じた。
逆に私も睨み返していたら、突然子どもが窓の鍵らしき場所に手をかけ、その直後には消えていた。
…一瞬、何が起こったのか分からなかった。
津島さんの家には子どもはいない。
親たちの会話で知っていた。
だとしたらあれは幽霊などのあやかしの類いなのかもしれない。
「(こわくなってきた)」
けれど、あの子どもの正体を知りたい気持ちの方が勝ったのか、いつの間にか家の鍵を持ってあそこの窓の目の前に来ていた。
「(きてしまった)」
幸い、津島さんは家にいなかった。
窓……はだいぶ大きな窓で私がすっぽり入れそうなくらい大きかった。
(身長106㎝)
鍵はかかっていなかった。
大方、さっきの子どもが開けてくれたのだろう。
ますますあの子どもの正体が気になってきた。
「(かってにおじゃましまーす……)」
意を決して窓をガラガラと開け中に入る。
(実質不法侵入では……((黙らっしゃい by●●)
津島さん宅はがらん、としていて(当然っちゃ当然だが)真っ暗でほとんど見えず、人がいる気配がしなかった。
「(でも…それだとしても、あの子はどこに?)」
手探りで探していると、何かが足に当たった。
その何かを手で触ってみると、取っ手みたいだった。
「(取っ手って……どこかにかくしべや?)」
右に引っ張ってみたり、左、下に、スライドさせたりしてみた。
けれど、びくともしない。
上……真正面に引っ張ると
ガチャ
、と開けることができた。
「(シンプルにこうだったか)」
中を覗くと、ずっと暗がりが続いていた。
……と思えば、奥に一つだけ灯りが見えた。
ゆらゆらとしていて、少しでも風が吹けば消えそうな火の灯りだった。
そろりそろり、と歩みを進め、ついに灯りの場所まで辿り着いた。
そこで見たものは。
「[小文字]ぅぅ…っ[/小文字]」
「ッ、(おと……、この子?)」
あざだらけの同い年くらいの子がかすかにうめき声を上げていた。