二次創作
光と闇の狭間を駆ける迷ヰ犬
うららかな陽射しが差し掛かる今日この頃。
……今ならこうして自伝みたいに書けるし、情景描写もできるけど、当時四歳だった私はそんなことが当然のようにできなかった。
……それでも、当時四歳の私が見た情景をくっきりと思い出せるのは、矢張り[漢字]あのこと[/漢字][ふりがな]・・・・[/ふりがな]があったからだろう。
どうも。私の名前は○○ ●●。
伝記のような形で話す人です。
上の文では大人になってから思い返しているから大人っぽいけど、四歳だよ。
ただ、少し不便だから、四歳児で違和感があるかもしれないけど、難しい言葉も使わせてください。m(_ _)m
(一人称とかも)
そんなことは置いといて。
私は今、隣家の扉の前にいる。
何故か。
ズバリ、引っ越しで来たからである。
元々は横浜の家に住んでいたんだけども、大戦が始まってしまい、横浜が全国でも特に危ない都市になってしまったため、引っ越し……疎開兼引っ越し、ということになった。
新たな大地に立つ。
それだけでも私は充分緊張する。
…隣家の人に挨拶することも。
私は緊張している素振りを見せるために、お母さんの服の裾を掴んだ。
そうするとお母さんは私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫よ。ただお隣さんに挨拶するだけだから。」
私はコクリ、と頷く。
………薄々気付いているかもしれないが、私は幼少期、先天性の発話障害を患っていた。
要するに、喋りたいけど、喋れない。
年を重ねていくと治るだろうとはお医者様に言われていたが、何も進展がないのでそんなに信じていなかった。
不便か、と思われるが、案外そうでもない。
障害者が通うスクールで幼児クラスに通っているが先生からもクラスメートからも何も言われないからね。
「それじゃ、鳴らすぞ。」
そこでお父さんが玄関の[漢字]鈴[/漢字][ふりがな]ベル[/ふりがな]を鳴らした。
ピンポーン
すると、扉が開き、中から一人の女性が出てきた。
スラリと背が高い、茶髪の女性だった。
「どちら様ですか?」
「…先日隣に引っ越してきた○○という者です。」
「嗚呼、挨拶ですね。私は津島梅子です。こちらこそよろしくお願いしますね。 ニコッ」
そこからは親たちが他愛のない世間話をしていた。
私は特に話せず、終わるのをずっと待っていた。
…最後にお父さんは粗品、というものを女性……津島さん?に渡し、私達は新居に戻った。
特に何もなくて良かった。
けれど、津島さんが何かを隠していることは分かった。
目がずっと泳いでいたから。
彼女は一体、何を隠していたのだろうか。
それがわかるのはその二年後、小学校に上がった時である。