東の塔にて
気が付けば、そこは荒野だった。
見渡す限りどこまでも硬い赤色の土で舗装された宏闊な平野が広がっていた。
ぽつぽつと小さな枯れ木が転がっていること以外に、生命の気配が存在しない荒涼とした世界がそこにはあった。地平線の向こうに聳える山々の影だけがこの荒野が有限だと示していた。太陽は空のど真ん中に陣取り、陽光を燦燦とばら撒いていた。
僕は訳が分からなかった。何故僕はこんなところにいるのか、それまで僕が何をしていたのか、僕はどうやってここまで来たのか、ここはどこなのか。疑問は絶えなかった。ただ、気が付けばそこに立っていた、ということしか分からなかった。
僕は唯一人その広野に立ち尽くす他になかった。
これは夢ではないか?そう思った。だがしかしこれまで夢の中でこれが夢だと分かったことがあっただろうか?これは夢だと疑ったことがあっただろうか?そして結論が出たことがあっただろうか?…全く思い出せない。
そもそもいくら考えてもこんな場所に来た覚えはない上に記憶がはっきりしない。いや、おそらく記憶喪失なのだろう。自分の名前も分からない。これまで自分が何をして暮らしていたのか、どんな人生を送ってきたのか、全く分からない。できるだけ詳しく思い出そうとしても、まさしく思考に靄がかかったかのようだ。僕は記憶を何処に置いて来てしまったのだろうか。一体何があればこんな状況に陥ることになるのだろうか。答えの出ない問いだけが沸き上がり続ける。
風の吹き荒ぶ音だけが響き渡っていた。
この風は僕に何も与えてくれないし、何も連れ去ってはくれないのだ。
見渡す限りどこまでも硬い赤色の土で舗装された宏闊な平野が広がっていた。
ぽつぽつと小さな枯れ木が転がっていること以外に、生命の気配が存在しない荒涼とした世界がそこにはあった。地平線の向こうに聳える山々の影だけがこの荒野が有限だと示していた。太陽は空のど真ん中に陣取り、陽光を燦燦とばら撒いていた。
僕は訳が分からなかった。何故僕はこんなところにいるのか、それまで僕が何をしていたのか、僕はどうやってここまで来たのか、ここはどこなのか。疑問は絶えなかった。ただ、気が付けばそこに立っていた、ということしか分からなかった。
僕は唯一人その広野に立ち尽くす他になかった。
これは夢ではないか?そう思った。だがしかしこれまで夢の中でこれが夢だと分かったことがあっただろうか?これは夢だと疑ったことがあっただろうか?そして結論が出たことがあっただろうか?…全く思い出せない。
そもそもいくら考えてもこんな場所に来た覚えはない上に記憶がはっきりしない。いや、おそらく記憶喪失なのだろう。自分の名前も分からない。これまで自分が何をして暮らしていたのか、どんな人生を送ってきたのか、全く分からない。できるだけ詳しく思い出そうとしても、まさしく思考に靄がかかったかのようだ。僕は記憶を何処に置いて来てしまったのだろうか。一体何があればこんな状況に陥ることになるのだろうか。答えの出ない問いだけが沸き上がり続ける。
風の吹き荒ぶ音だけが響き渡っていた。
この風は僕に何も与えてくれないし、何も連れ去ってはくれないのだ。