二次創作
【文スト二次/リクエスト可/質問受付中】道化のラプソディア
蔦の絡まる誠意洋風の屋敷の屋根は半分ほど吹き飛んでいた。
右手側の半分は手入れの行き届いた古風な屋敷であったが、左手側の半分は黒い瓦礫の山だった。瓦礫には残り火が燻って煙を上げていた。
見物人はいないようだが、代わりに七、八人の銃を持った人間がいた。たびたび乾いた銃声も聞こえる。
「わ~、ビフォーアフターね。」
「それよりも……派手な爆発痕。あそこのど真ん中に居れば楽に死ねたのかなぁ…。」
「大丈夫よ。瀕死になってからしっかり懇切丁寧に治療してあげるわ。」
中也は太宰を蔑んだ目で見てから、屋敷へと視線を移した。
中也が今の状況を呟いた直後、二回あたりのしっくい壁を突き抜けて、吹き飛ばされたように武装した男が飛び出た。
「蘭堂さん相手だと、まあ、そうなるよね。」
「蘭堂?」
ルイスは二人の会話を聞きながら、辺りを見回す。下手に林から出ればたまったものじゃない。
「……じゃあ、[漢字]私[/漢字][ふりがな]ワタクシ[/ふりがな]の異能で如何にか――」
「どうにかするんですか。」
男の声がルイスの背後から響いた。優しい声だ。死の接吻の様な。
「両手を上げて振り向きなさい。」
太宰と中也は一瞬顔を合わせて命令に従った。一歩遅れてルイスも振り向く。
「何だ、子供ですか。てっきり増援部隊かと――」
「おじさん誰?お兄ちゃんたちとあるばいとしに来たの。そしたらどっか~ン!って。ねえ、蘭堂さん大丈夫かなぁ?配達のお仕事、できないよぉ。」
武装した男の言葉を遮り、ルイスが急に言葉を投げかける。
「す、すす、すいません!いっ、妹の言う通りで、僕たちは近所の子供で、蘭堂さんの家に配達に行く途中で、だから……。」
「おいオッサン。」
太宰のセリフを遮って、中也が嬉しそうな声を上げた。ルイスは可愛げのあった瞳を閉じて、光の宿らない深い瑠璃の瞳に戻す。
「お互い時間を調節しようぜ―――」
中也が男に話しかけるのを横目に、太宰に目を向ける。太宰も溜息を吐いて、震える演技を止めた。
「せっかく演技で騙して、情報を引き出そうと思ったのに……。」
金髪に兎耳のようなカチューシャを付ける。男が中也によって倒されたことに気付くころには、増援がルイスらを囲んでいた。
「面倒なことにしてくれたわね……。」
中也が全方位からの銃弾を重力を操って跳ね返す。
「ッか……⁉」
声にもならない音が鳴った。どうやら、当たり処が悪かったらしく、逝けなかった様だ。
「あらあら、苦しいわね。楽になりたいかしら?」
機械のように、かくかくとした動きで首を振った。
「ええ、いいわ、いいわよ。楽にしてあげるわ。――異能力『不思議の国のアリス』。ハートの女王、首を刎ねなさい。」
「ルイス様ノ仰セノママニ」
人の様な形をしたとしても、歪であった。顔と思われる部分は紅いハートになっており、深紅のドレスに身を包んでいる。
鈍い音が鳴った。ルイスは首を足で転がした。転がすと、首のあった断面から血が零れて、紅い道を作った。
「ははははは。」
乾いた笑い声がして、振り向くと、太宰が『物』に銃を撃ちこみ続けていた。
中也が静止して、乾いた笑いを零した。
「お前も、止めろ。死体は弄ぶもんじゃねえ。」
「……そうね。でも、[漢字]私[/漢字][ふりがな]ワタクシ[/ふりがな]は……いえ、何でもないわ。」
太宰の乾いた笑いが、ルイスの儚げな微笑みが、木立の間に吸い込まれて消滅していった。
右手側の半分は手入れの行き届いた古風な屋敷であったが、左手側の半分は黒い瓦礫の山だった。瓦礫には残り火が燻って煙を上げていた。
見物人はいないようだが、代わりに七、八人の銃を持った人間がいた。たびたび乾いた銃声も聞こえる。
「わ~、ビフォーアフターね。」
「それよりも……派手な爆発痕。あそこのど真ん中に居れば楽に死ねたのかなぁ…。」
「大丈夫よ。瀕死になってからしっかり懇切丁寧に治療してあげるわ。」
中也は太宰を蔑んだ目で見てから、屋敷へと視線を移した。
中也が今の状況を呟いた直後、二回あたりのしっくい壁を突き抜けて、吹き飛ばされたように武装した男が飛び出た。
「蘭堂さん相手だと、まあ、そうなるよね。」
「蘭堂?」
ルイスは二人の会話を聞きながら、辺りを見回す。下手に林から出ればたまったものじゃない。
「……じゃあ、[漢字]私[/漢字][ふりがな]ワタクシ[/ふりがな]の異能で如何にか――」
「どうにかするんですか。」
男の声がルイスの背後から響いた。優しい声だ。死の接吻の様な。
「両手を上げて振り向きなさい。」
太宰と中也は一瞬顔を合わせて命令に従った。一歩遅れてルイスも振り向く。
「何だ、子供ですか。てっきり増援部隊かと――」
「おじさん誰?お兄ちゃんたちとあるばいとしに来たの。そしたらどっか~ン!って。ねえ、蘭堂さん大丈夫かなぁ?配達のお仕事、できないよぉ。」
武装した男の言葉を遮り、ルイスが急に言葉を投げかける。
「す、すす、すいません!いっ、妹の言う通りで、僕たちは近所の子供で、蘭堂さんの家に配達に行く途中で、だから……。」
「おいオッサン。」
太宰のセリフを遮って、中也が嬉しそうな声を上げた。ルイスは可愛げのあった瞳を閉じて、光の宿らない深い瑠璃の瞳に戻す。
「お互い時間を調節しようぜ―――」
中也が男に話しかけるのを横目に、太宰に目を向ける。太宰も溜息を吐いて、震える演技を止めた。
「せっかく演技で騙して、情報を引き出そうと思ったのに……。」
金髪に兎耳のようなカチューシャを付ける。男が中也によって倒されたことに気付くころには、増援がルイスらを囲んでいた。
「面倒なことにしてくれたわね……。」
中也が全方位からの銃弾を重力を操って跳ね返す。
「ッか……⁉」
声にもならない音が鳴った。どうやら、当たり処が悪かったらしく、逝けなかった様だ。
「あらあら、苦しいわね。楽になりたいかしら?」
機械のように、かくかくとした動きで首を振った。
「ええ、いいわ、いいわよ。楽にしてあげるわ。――異能力『不思議の国のアリス』。ハートの女王、首を刎ねなさい。」
「ルイス様ノ仰セノママニ」
人の様な形をしたとしても、歪であった。顔と思われる部分は紅いハートになっており、深紅のドレスに身を包んでいる。
鈍い音が鳴った。ルイスは首を足で転がした。転がすと、首のあった断面から血が零れて、紅い道を作った。
「ははははは。」
乾いた笑い声がして、振り向くと、太宰が『物』に銃を撃ちこみ続けていた。
中也が静止して、乾いた笑いを零した。
「お前も、止めろ。死体は弄ぶもんじゃねえ。」
「……そうね。でも、[漢字]私[/漢字][ふりがな]ワタクシ[/ふりがな]は……いえ、何でもないわ。」
太宰の乾いた笑いが、ルイスの儚げな微笑みが、木立の間に吸い込まれて消滅していった。