【拾われ少年、愛されました。スピンオフ作品/リクエスト受付中!】ルイン・ウォー
季節が[明朝体]廻った[/明朝体]。結局、[下線][明朝体]夏[/明朝体]には帰れなかった。[/下線]
[太字]正直[/太字]、そのころには[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]は[下線][太字]生きる事[/太字]すら止めたくなってきていた[/下線]。でも、限界でも、[漢字]上官[/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな]が居るから、頑張って、[打消し]無駄でも[/打消し]、軍医として働き続けた。
[明朝体][小文字]「…。」[/小文字][/明朝体]
[大文字]「[大文字]与謝野![/大文字]与謝野軍医‼」[/大文字]
大声で呼びかけられてやっと我に返る。目の前には[下線]水色の髪に水色の瞳をした中性的な見た目をした自分よりも年下の子供[/下線]が立って居た。だが、頭部から血を流し、所々に外傷が見られる。
「連れて来てくれて[漢字]有難[/漢字][ふりがな]ありがと[/ふりがな]う。[漢字]此の子[/漢字][ふりがな]こ こ[/ふりがな]は[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]が見るから行っていいよ。――アンタ、名前は?」
「…[大文字]『[/大文字][漢字][大文字]谷崎[/大文字][/漢字][ふりがな]たにざき[/ふりがな] [漢字][大文字]茜[/大文字][/漢字][ふりがな]あかね[/ふりがな][大文字]』[/大文字]。[下線]少年兵[/下線]として最近動員された。」
[下線]鈴の音が転がるような[太字]可愛らしい[/太字]声[/下線]だ。敗戦が見え始めたせいか、上層部が焦って動員したのだろう。
「…[漢字]本当[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]は?」
「ウチは、[下線]谷崎財閥の[太字]末娘[/太字][/下線]。政府の[打消し]秘密警察[/打消し]に襲撃されて、戦闘の腕を買われた。」
「有難う、[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]は[大文字]『[/大文字][漢字][大文字]与謝野[/大文字][/漢字][ふりがな]よさの[/ふりがな] [漢字][大文字]霞[/大文字][/漢字][ふりがな]かすみ[/ふりがな][大文字]』[/大文字]。今日までで13になる医者の家系の軍医。茜ちゃんって、何歳?」
相手も同じように[太字]子供[/太字]だと知って驚いたのか、少し目を開いて固まっていたが、霞の質問に慌てて答える。
「ウチは、今年で歳は10になる。」
「[大文字][大文字]じゃア[/大文字]、今[太字]9歳[/太字]ってことかい⁉[/大文字]」
あと数日で[下線][太字]底をつきそうな[/太字]包帯[/下線]を取り出し、手当てを始める。
「ねぇ、与謝野軍医、軍医は[漢字]何時[/漢字][ふりがな]いつ[/ふりがな]から[漢字]此処[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]に居たの?」
「[太字]一年前。開戦当初から。[/太字]さっきも言ったけど、[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]の家系は代々医者になっててさ。[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]の中でも[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]の技術は高かった。だから、半ば脅されて空母でこっちに来たんだ。」
「ウチは、[下線][太字]捕まえられた所[/太字]で死ぬか、[太字]戦場[/太字]で死ぬか[/下線]って云われて、何でだろ、ウチが戦争で頑張れば、ウチを[漢字]見てくれる[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]のかなって思ったの。」
「[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]達って、なんだか[下線]似てる[/下線]ねェ。嗚呼、そうだ、別にそんな風に呼ばなくても良いよ?どうせ軍医じゃなくなるし、[打消し]どうせ[/打消し][漢字][打消し]妾[/打消し][/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな][打消し]もここが攻撃されて死んじまうさ[/打消し]。」
儚げに嗤った。自分の運命を嗤った。頬に何かが伝う感触がする。
「[小文字]あッ[/小文字]…ごめん、濡れちゃうね。」
「与謝野軍医、泣いてい?」
声が漏れないように[漢字]唇[/漢字][ふりがな]くちびる[/ふりがな]を噛みながら、首を縦に振った。
聞こえないように声を押し殺しながら、身を寄せ合った。
[明朝体][小文字]「スー…スー…」[/小文字][/明朝体]
泣き疲れたのか、茜は霞の方で寝息を立て始めてしまった。
「カスミ、起きてたの?」
医療室として使っている空母の一室のドアが開いて、線状の光が漏れる。
「[漢字][大文字]上官[/大文字][/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな][大文字]![/大文字]大丈夫なの?戦況はよくないんでしょ?」
「ぼくは全線で働くわけじゃないからね。カスミ、[明朝体]心配[/明朝体]?」
「[漢字]こんな子[/漢字][ふりがな]茜ちゃん[/ふりがな]すら来るんでしょ?いつ負けても、[漢字]此処[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]に攻め込まれてもおかしくないんでしょ?いつ死ぬか分かんない。みんなどんどん[太字]死んで[/太字]く、もう[太字]帰れない[/太字]し、元通りにはもう[太字]戻れない[/太字]。ごめん、[漢字]上官[/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな]。忘れて。もう、[大文字]寝るね![/大文字][漢字][大文字]妾[/大文字][/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]、[大文字]皆の治療しないと![/大文字]」
[小文字]「…終わらせるように交渉しに行ってるね。」[/小文字]
茜を怪我人用の[漢字]寝台[/漢字][ふりがな]ベット[/ふりがな]に乗せ、霞は長い間使って[明朝体]ボロボロ[/明朝体]になった[漢字]寝台[/漢字][ふりがな]ベット[/ふりがな]に薄っぺらい毛布でくるまった。
[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]の後、茜は戦場に戻って、帰ってくることはなかった――
[太字]正直[/太字]、そのころには[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]は[下線][太字]生きる事[/太字]すら止めたくなってきていた[/下線]。でも、限界でも、[漢字]上官[/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな]が居るから、頑張って、[打消し]無駄でも[/打消し]、軍医として働き続けた。
[明朝体][小文字]「…。」[/小文字][/明朝体]
[大文字]「[大文字]与謝野![/大文字]与謝野軍医‼」[/大文字]
大声で呼びかけられてやっと我に返る。目の前には[下線]水色の髪に水色の瞳をした中性的な見た目をした自分よりも年下の子供[/下線]が立って居た。だが、頭部から血を流し、所々に外傷が見られる。
「連れて来てくれて[漢字]有難[/漢字][ふりがな]ありがと[/ふりがな]う。[漢字]此の子[/漢字][ふりがな]こ こ[/ふりがな]は[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]が見るから行っていいよ。――アンタ、名前は?」
「…[大文字]『[/大文字][漢字][大文字]谷崎[/大文字][/漢字][ふりがな]たにざき[/ふりがな] [漢字][大文字]茜[/大文字][/漢字][ふりがな]あかね[/ふりがな][大文字]』[/大文字]。[下線]少年兵[/下線]として最近動員された。」
[下線]鈴の音が転がるような[太字]可愛らしい[/太字]声[/下線]だ。敗戦が見え始めたせいか、上層部が焦って動員したのだろう。
「…[漢字]本当[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]は?」
「ウチは、[下線]谷崎財閥の[太字]末娘[/太字][/下線]。政府の[打消し]秘密警察[/打消し]に襲撃されて、戦闘の腕を買われた。」
「有難う、[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]は[大文字]『[/大文字][漢字][大文字]与謝野[/大文字][/漢字][ふりがな]よさの[/ふりがな] [漢字][大文字]霞[/大文字][/漢字][ふりがな]かすみ[/ふりがな][大文字]』[/大文字]。今日までで13になる医者の家系の軍医。茜ちゃんって、何歳?」
相手も同じように[太字]子供[/太字]だと知って驚いたのか、少し目を開いて固まっていたが、霞の質問に慌てて答える。
「ウチは、今年で歳は10になる。」
「[大文字][大文字]じゃア[/大文字]、今[太字]9歳[/太字]ってことかい⁉[/大文字]」
あと数日で[下線][太字]底をつきそうな[/太字]包帯[/下線]を取り出し、手当てを始める。
「ねぇ、与謝野軍医、軍医は[漢字]何時[/漢字][ふりがな]いつ[/ふりがな]から[漢字]此処[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]に居たの?」
「[太字]一年前。開戦当初から。[/太字]さっきも言ったけど、[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]の家系は代々医者になっててさ。[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]の中でも[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]の技術は高かった。だから、半ば脅されて空母でこっちに来たんだ。」
「ウチは、[下線][太字]捕まえられた所[/太字]で死ぬか、[太字]戦場[/太字]で死ぬか[/下線]って云われて、何でだろ、ウチが戦争で頑張れば、ウチを[漢字]見てくれる[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]のかなって思ったの。」
「[漢字]妾[/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]達って、なんだか[下線]似てる[/下線]ねェ。嗚呼、そうだ、別にそんな風に呼ばなくても良いよ?どうせ軍医じゃなくなるし、[打消し]どうせ[/打消し][漢字][打消し]妾[/打消し][/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな][打消し]もここが攻撃されて死んじまうさ[/打消し]。」
儚げに嗤った。自分の運命を嗤った。頬に何かが伝う感触がする。
「[小文字]あッ[/小文字]…ごめん、濡れちゃうね。」
「与謝野軍医、泣いてい?」
声が漏れないように[漢字]唇[/漢字][ふりがな]くちびる[/ふりがな]を噛みながら、首を縦に振った。
聞こえないように声を押し殺しながら、身を寄せ合った。
[明朝体][小文字]「スー…スー…」[/小文字][/明朝体]
泣き疲れたのか、茜は霞の方で寝息を立て始めてしまった。
「カスミ、起きてたの?」
医療室として使っている空母の一室のドアが開いて、線状の光が漏れる。
「[漢字][大文字]上官[/大文字][/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな][大文字]![/大文字]大丈夫なの?戦況はよくないんでしょ?」
「ぼくは全線で働くわけじゃないからね。カスミ、[明朝体]心配[/明朝体]?」
「[漢字]こんな子[/漢字][ふりがな]茜ちゃん[/ふりがな]すら来るんでしょ?いつ負けても、[漢字]此処[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]に攻め込まれてもおかしくないんでしょ?いつ死ぬか分かんない。みんなどんどん[太字]死んで[/太字]く、もう[太字]帰れない[/太字]し、元通りにはもう[太字]戻れない[/太字]。ごめん、[漢字]上官[/漢字][ふりがな]センセイ[/ふりがな]。忘れて。もう、[大文字]寝るね![/大文字][漢字][大文字]妾[/大文字][/漢字][ふりがな]アタシ[/ふりがな]、[大文字]皆の治療しないと![/大文字]」
[小文字]「…終わらせるように交渉しに行ってるね。」[/小文字]
茜を怪我人用の[漢字]寝台[/漢字][ふりがな]ベット[/ふりがな]に乗せ、霞は長い間使って[明朝体]ボロボロ[/明朝体]になった[漢字]寝台[/漢字][ふりがな]ベット[/ふりがな]に薄っぺらい毛布でくるまった。
[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]の後、茜は戦場に戻って、帰ってくることはなかった――