ほぼ男しかいない世界で。
いつだっけ。
三年前かな。李恩が引きこもり始めた時期。
何年前かはわからないけど、今でも鮮明に思い出せる。
りお「おねが…っもう…やめてっ…」
李恩は俺よりもずっと勇敢なやつだった。
俺の代わりにいつもなってくれた。
俺の父親はアル中・ギャンブル依存症・暴力のクズで、
俺たちはアイツのサンドバックでしかなかった。
いや、元々暴力はなかった。そうなってしまったんだ。母親もクズだったから。
母親は不倫をしていた。まぁそれも、父親が悪いんだけど。
やがて母親は不倫相手と結婚することになり、家から逃げ出した。
俺は、李恩が苦しんでることを知っていたのに、ただ秘密裏に窓から家を出て、
母がいる頃に仲良くなった紅魔と遊んだ。
本当は年上の俺が…俺よりも脆い李恩を守ってやらなきゃいけなかったのに。
コンコンコン
李恩が引きこもり始めてから何年が経っただろう。
俺は毎日毎日李恩の部屋に通い詰めた。
李恩が引きこもっている間は、俺が虐待を受け続けた。
李恩「…帰って」
決まって返事はこうで、時々部屋の前を通る時奇妙な音がするだけだった。
俺は少しでも守られた分の恩を返したくて、自分が代わりになることの他に
何かできることはないか考えた。
俺には李恩を助けられるのか…?
その不安でいっぱいだった。
そして俺は…決意した。
阿夏葉「…りお。りお、逃げよう」
李恩「…え…?」
初めて、違う返答が返ってきた。
俺はそれだけで嬉しかった。
阿夏葉「この家から逃げよう、りお。
どこでもいい、公園でも、ゴミ箱の中でも、ここよりずっといい。
だから、行こうりお。一緒に」
李恩「でも…でも、もし見つかって捕まったら…僕らは…」
阿夏葉「…その時は、りおだけ逃げろ」
李恩「っえっ…」
阿夏葉「りおに助けてもらった分を、少しでも返したい。
それぐらいのことは、させてくれ…」
無理に口角を上げ、顔が引き攣った。
当たり前だ。怖いものは怖い。
でも、それを李恩は何度も何度も受け続けてきた。
阿夏葉「りお、お願いだから、部屋から出て来てくれ。
そしたら、全部捨てて逃げよう」
李恩「っ…うん…!」
そこからは覚えてない。とにかく全力で走った。
あげりお「ハァッハァッ」
??「あ、ナツじゃん!よっす!…あれ、お前弟?」
! 紅魔…!
そういえば、紅魔には俺たちが虐待されてること知らなかったっけ。
阿夏葉「ハァッうん…」
紅魔「へー。てかなんで走ってんの?」
よ、容赦ねぇー…。
阿夏葉「な、なんでもな…」
首を横に振ろうとした時、李恩が俺の手をぎゅっと強く握った。
李恩「お兄、この人なら助けてくれるんじゃない…?」
阿夏葉「!!」
そうだ!その手があったんだ!
阿夏葉「コウ、実は…」
紅魔「え、マジ…??」
阿夏葉「…うん。秘密にしててごめん」
紅魔「ちょい俺んち来て。[漢字]叔父[/漢字][ふりがな]おい[/ふりがな]ちゃんに聞いてみる」
…紅魔は生まれたばかりの時に父と母を亡くしており、
今は父親の弟である叔父と二世帯で一軒家に住んでいる。
阿夏葉「お、おう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
紅魔「だーかーら!!ナツと弟をしばらくここで暮らさせるっつってんの!」
叔父「そ、そうは言っても…無断でここに泊まらせるなんて誘拐と一緒だよ?
交渉しようにも、連絡先なんて奥さんの方しか知らないからなぁ」
叔父さんはいつ見ても若いな。まだ20歳後半らしい。
紅魔「はぁ?そんなん知らねぇよ!さっきこいつらが親から虐待受けてるっつたろ!」
紅魔は小学生になっても変わらないな。
紅魔と幼馴染で、少し安心した自分がいる。
叔父「うーん…。…わかったよ。なら、僕が直々に出向くことにしようか。
ナツくんたちも、できるだけ力になるから安心しなよ」
阿夏葉「…!ありがとうございますッッ!…でも、大丈夫ですか…?」
叔父「?」
阿夏葉「アイツは、初対面の人にも気に障ったらビール缶を投げるようなクズですよ」
叔父「嘘ぉ!マジで?」
若さ故に元気である。
これは紅魔も似ているな。
阿夏葉「はい。」
叔父「えー…。死にそうかも…」
紅魔「うっわ情けねーっ!んじゃ俺が行く!」
叔父「ダメダメダメ!天国行った時に兄さんに怒られるじゃん!」
紅魔「なんで死ぬ前提なんだよ」
李恩「…いっそ、警察と一緒に行けば?」
李恩生意気と言うんだぞそれは。
叔父「…君天才?よし、のった。そうしよう。
じゃあ君たち、今日はもう寝なよ。和室に布団敷くね。あ、お風呂も入ろうか」
阿夏葉「っ!…お、風呂っ…は…っ」
風呂は嫌な思い出しかない。
殴られた傷が染みて、地獄でしかなかった。
アイツはそれを知っていたから、無理やり風呂に突っ込まれた。
紅魔「あ、そっか、殴られた傷いてぇよな。着替えるだけ着替えるか。俺の使え!」
阿夏葉「あ、ありがとう…」
こういう時、気づいてくれるんだよな。
こうして俺たちは眠りについた…。
…けど、李恩だけは違った。
[大文字]ガリガリガリッ[/大文字]
[大文字][大文字]ガリガリガリガリッ[/大文字][/大文字]
何度も微かに聞いた、あの音。
今度は耳の横で大きく鳴っている。
阿夏葉「…ん」
李恩「[小文字][小文字]ぶつぶつぶつ[/小文字][/小文字][小文字][小文字]……[/小文字][/小文字]」
阿夏葉「…りおぉ…?」
李恩「あれぇ、起きたんだぁ?まぁそりゃ起きるよねぇ?んふふ、こんばんは」
…誰だ。
李恩じゃない。見た目は李恩なのに、李恩じゃない。
阿夏葉「りお…じゃない…?誰…?」
李恩「ふふ、僕のことが気になるの?嬉しいなぁ。
でも今はまだ答えは言えないな。…今日はもういいか。さぁ、おやすみ」
突然、強烈な眠気が俺を襲った。
阿夏葉「り…り…お……」
[大文字]バタッ[/大文字]
〜朝〜
叔父「おはよう!朝ご飯できてるよ!」
あげりお「ありがとうございます、いただきます」
うーん、李恩は昨日の夜のこと覚えてないっぽいなー。
叔父「紅魔ー!そろそろ起きろよー!」
…………。
…………。
…………。
叔父「はぁ…。ごめんなナツくん、ちょっと紅魔を起こしてきてくれないか?」
阿夏葉「あ、はい」
コンコンコン
阿夏葉「紅魔?入るよ」
紅魔「ぐぅー…」
…爆睡かよ…。
阿夏葉「おーい!…うわマジで寝てる」
紅魔の頬をペチペチしてみる。
紅魔「んー…」
[大文字]グイッ[/大文字]
阿夏葉「うわっ!」
寝ぼけた紅魔が俺の腕を引っ張る。
阿夏葉「んむっ……!?」
そして、たまたま俺と紅魔の唇が触れ合った。
阿夏葉「ああぁああぁあ!?」
紅魔「うわあああぁああ!?!?何!?」
俺の声でびっくりした紅魔も飛び上がった。
あああぁあぁ…俺の…初…キ……。
紅魔「おはようナツ!ご飯できてる!?」
またこいつは…!俺の初キ……を奪っておきながら…!
せめてこれからできる(はず)好きな人としたかった…っ!
くっ…だがこれはたまたま…。ノーカンノーカン…。
叔父「あ、降りてきた。
三年前かな。李恩が引きこもり始めた時期。
何年前かはわからないけど、今でも鮮明に思い出せる。
りお「おねが…っもう…やめてっ…」
李恩は俺よりもずっと勇敢なやつだった。
俺の代わりにいつもなってくれた。
俺の父親はアル中・ギャンブル依存症・暴力のクズで、
俺たちはアイツのサンドバックでしかなかった。
いや、元々暴力はなかった。そうなってしまったんだ。母親もクズだったから。
母親は不倫をしていた。まぁそれも、父親が悪いんだけど。
やがて母親は不倫相手と結婚することになり、家から逃げ出した。
俺は、李恩が苦しんでることを知っていたのに、ただ秘密裏に窓から家を出て、
母がいる頃に仲良くなった紅魔と遊んだ。
本当は年上の俺が…俺よりも脆い李恩を守ってやらなきゃいけなかったのに。
コンコンコン
李恩が引きこもり始めてから何年が経っただろう。
俺は毎日毎日李恩の部屋に通い詰めた。
李恩が引きこもっている間は、俺が虐待を受け続けた。
李恩「…帰って」
決まって返事はこうで、時々部屋の前を通る時奇妙な音がするだけだった。
俺は少しでも守られた分の恩を返したくて、自分が代わりになることの他に
何かできることはないか考えた。
俺には李恩を助けられるのか…?
その不安でいっぱいだった。
そして俺は…決意した。
阿夏葉「…りお。りお、逃げよう」
李恩「…え…?」
初めて、違う返答が返ってきた。
俺はそれだけで嬉しかった。
阿夏葉「この家から逃げよう、りお。
どこでもいい、公園でも、ゴミ箱の中でも、ここよりずっといい。
だから、行こうりお。一緒に」
李恩「でも…でも、もし見つかって捕まったら…僕らは…」
阿夏葉「…その時は、りおだけ逃げろ」
李恩「っえっ…」
阿夏葉「りおに助けてもらった分を、少しでも返したい。
それぐらいのことは、させてくれ…」
無理に口角を上げ、顔が引き攣った。
当たり前だ。怖いものは怖い。
でも、それを李恩は何度も何度も受け続けてきた。
阿夏葉「りお、お願いだから、部屋から出て来てくれ。
そしたら、全部捨てて逃げよう」
李恩「っ…うん…!」
そこからは覚えてない。とにかく全力で走った。
あげりお「ハァッハァッ」
??「あ、ナツじゃん!よっす!…あれ、お前弟?」
! 紅魔…!
そういえば、紅魔には俺たちが虐待されてること知らなかったっけ。
阿夏葉「ハァッうん…」
紅魔「へー。てかなんで走ってんの?」
よ、容赦ねぇー…。
阿夏葉「な、なんでもな…」
首を横に振ろうとした時、李恩が俺の手をぎゅっと強く握った。
李恩「お兄、この人なら助けてくれるんじゃない…?」
阿夏葉「!!」
そうだ!その手があったんだ!
阿夏葉「コウ、実は…」
紅魔「え、マジ…??」
阿夏葉「…うん。秘密にしててごめん」
紅魔「ちょい俺んち来て。[漢字]叔父[/漢字][ふりがな]おい[/ふりがな]ちゃんに聞いてみる」
…紅魔は生まれたばかりの時に父と母を亡くしており、
今は父親の弟である叔父と二世帯で一軒家に住んでいる。
阿夏葉「お、おう」
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紅魔「だーかーら!!ナツと弟をしばらくここで暮らさせるっつってんの!」
叔父「そ、そうは言っても…無断でここに泊まらせるなんて誘拐と一緒だよ?
交渉しようにも、連絡先なんて奥さんの方しか知らないからなぁ」
叔父さんはいつ見ても若いな。まだ20歳後半らしい。
紅魔「はぁ?そんなん知らねぇよ!さっきこいつらが親から虐待受けてるっつたろ!」
紅魔は小学生になっても変わらないな。
紅魔と幼馴染で、少し安心した自分がいる。
叔父「うーん…。…わかったよ。なら、僕が直々に出向くことにしようか。
ナツくんたちも、できるだけ力になるから安心しなよ」
阿夏葉「…!ありがとうございますッッ!…でも、大丈夫ですか…?」
叔父「?」
阿夏葉「アイツは、初対面の人にも気に障ったらビール缶を投げるようなクズですよ」
叔父「嘘ぉ!マジで?」
若さ故に元気である。
これは紅魔も似ているな。
阿夏葉「はい。」
叔父「えー…。死にそうかも…」
紅魔「うっわ情けねーっ!んじゃ俺が行く!」
叔父「ダメダメダメ!天国行った時に兄さんに怒られるじゃん!」
紅魔「なんで死ぬ前提なんだよ」
李恩「…いっそ、警察と一緒に行けば?」
李恩生意気と言うんだぞそれは。
叔父「…君天才?よし、のった。そうしよう。
じゃあ君たち、今日はもう寝なよ。和室に布団敷くね。あ、お風呂も入ろうか」
阿夏葉「っ!…お、風呂っ…は…っ」
風呂は嫌な思い出しかない。
殴られた傷が染みて、地獄でしかなかった。
アイツはそれを知っていたから、無理やり風呂に突っ込まれた。
紅魔「あ、そっか、殴られた傷いてぇよな。着替えるだけ着替えるか。俺の使え!」
阿夏葉「あ、ありがとう…」
こういう時、気づいてくれるんだよな。
こうして俺たちは眠りについた…。
…けど、李恩だけは違った。
[大文字]ガリガリガリッ[/大文字]
[大文字][大文字]ガリガリガリガリッ[/大文字][/大文字]
何度も微かに聞いた、あの音。
今度は耳の横で大きく鳴っている。
阿夏葉「…ん」
李恩「[小文字][小文字]ぶつぶつぶつ[/小文字][/小文字][小文字][小文字]……[/小文字][/小文字]」
阿夏葉「…りおぉ…?」
李恩「あれぇ、起きたんだぁ?まぁそりゃ起きるよねぇ?んふふ、こんばんは」
…誰だ。
李恩じゃない。見た目は李恩なのに、李恩じゃない。
阿夏葉「りお…じゃない…?誰…?」
李恩「ふふ、僕のことが気になるの?嬉しいなぁ。
でも今はまだ答えは言えないな。…今日はもういいか。さぁ、おやすみ」
突然、強烈な眠気が俺を襲った。
阿夏葉「り…り…お……」
[大文字]バタッ[/大文字]
〜朝〜
叔父「おはよう!朝ご飯できてるよ!」
あげりお「ありがとうございます、いただきます」
うーん、李恩は昨日の夜のこと覚えてないっぽいなー。
叔父「紅魔ー!そろそろ起きろよー!」
…………。
…………。
…………。
叔父「はぁ…。ごめんなナツくん、ちょっと紅魔を起こしてきてくれないか?」
阿夏葉「あ、はい」
コンコンコン
阿夏葉「紅魔?入るよ」
紅魔「ぐぅー…」
…爆睡かよ…。
阿夏葉「おーい!…うわマジで寝てる」
紅魔の頬をペチペチしてみる。
紅魔「んー…」
[大文字]グイッ[/大文字]
阿夏葉「うわっ!」
寝ぼけた紅魔が俺の腕を引っ張る。
阿夏葉「んむっ……!?」
そして、たまたま俺と紅魔の唇が触れ合った。
阿夏葉「ああぁああぁあ!?」
紅魔「うわあああぁああ!?!?何!?」
俺の声でびっくりした紅魔も飛び上がった。
あああぁあぁ…俺の…初…キ……。
紅魔「おはようナツ!ご飯できてる!?」
またこいつは…!俺の初キ……を奪っておきながら…!
せめてこれからできる(はず)好きな人としたかった…っ!
くっ…だがこれはたまたま…。ノーカンノーカン…。
叔父「あ、降りてきた。