【短編集】書きたいこと書くだけ短編集。【リクエストOKだよ】
別に、誰かに聞いてほしいわけではない。
誰かに同情してもらいたいわけでもない。
ましてや、この話が誰かの肴になってほしいわけでもない。
これはただの独り言でしかない。
寂しい淋しい、独り言。
[太字]______夏休みにちょっと飼ってただけの、ザリガニのお話。[/太字]
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小学生のある夏休みの事。
まだきっと幸せだったはずの頃。
ある日昼前から家族4人で揃って、川に遊びに行ったんです。
お父さんが川で魚を釣ってて、お母さんが釣れた魚を見せてくれて。
まだ幼かった弟は猫のように、浅瀬でじたばたする魚をずっと好奇の目で追っていて。
同じ時に私は足だけ水に浸けて、砂場で遊ぶ時に使った小さなバケツにザリガニを二匹捕まえて入れておいた。
[太字]小さいザリガニと、大きなザリガニ。[/太字]
かっこよかった。
その後夜になったら皆で、お父さんの買ってくれた線香花火をつけて、誰が一番長く火が点いているか勝負なんてした。
..........誰が勝ったのかは覚えていない。
[太字]一つだけ言えたのは、それが私ではなかった事だけ。[/太字]
疲れ切ったから家に帰ろうと言われて、車に乗って、そのまま魂が消えるように眠りについて。
帰ってから私は、思い出したようにベランダにあった空っぽになった水槽に水道の水を汲んだ。
砂場遊びのバケツからザリガニをつまみ出して、
川で一緒に拾った石や草や、テーブルに置かれてたスルメなんかと一緒に、水槽に入れた。
子どもながらに限界だった身体を過重労働させて、さっき眠りについたばかりなのにもう疲れてしまって。
晩御飯を食べたらさっさと寝てしまえと、部屋の中のベッドに吸い込まれるように向かっては倒れ込んだ。
今度、ザリガニを観察して絵日記に書こう。
そう心を踊らせながらも、身体は疲労に勝てずもう一度眠りについてしまった。
そして次の日は、また車に乗ってどこかへ行った。
どこに行ったかは覚えていないけど、楽しかった記憶だけはある。
その日帰った時にはもう21時を過ぎていて、ザリガニの事を気にするどころなんかじゃなくなって、そのまま絵日記だけを書いて寝た。
書き忘れていた、ザリガニを拾った日の事も付け足すように空白だった日の中に書いておいた。
[太字]...........やたら早くに目が覚めたのを、鮮明に覚えている。[/太字]
あまり慣れなかった白い天井と、神々しい黄金の光。
[太字]時計は見てなかったけど、ちょうど、目覚めたのが夏の日の出くらいの時間だったと思う。[/太字]
あぁそうだ、そう言えばあの2匹のザリガニはどうなっているかなと、ふと思って。
静かで誰もいない、薄暗いリビングを抜けて、
差し込む日の出に目を眩ませながら、ベランダの窓を開けて確認した。
[太字]______1匹しかいなかった。
大きい方だけ。[/太字]
でもそれも、夏の太陽で干からびて死んでいた。
[太字]...........今更に知ったがザリガニとは、どうやら共食いする生き物だったらしい。
特に脱皮後や、子どもは襲われるという。[/太字]
大自然の中なら逃げられても、狭い水槽の中ではそれが許されなかった。
[太字]...........遊園地に博物館、たくさん楽しい場所に行ったはずなのに。
その年の夏休み、私には、ザリガニを殺したという思い出しか残らなかった。[/太字]