二次創作
短編集②【リクエスト可】
創作元:HQ
キャラ:黒尾鉄朗
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※マフィアパロ
[太字]私は分からないのだ[/太字]
人はどうして、そこまで「生きること」に執着するのだろうか
かちゃ.....と冷たく重たいものが私の頭に触れる
「生きなさい」「生きていろ」「死ぬな」「死なないで」
どうしてそこまでも「死」を拒む?
私には分からないのだ。生きている価値というものを、死んではいけない理由というものを。
「生きているのが偉いよ」「生きててくれてありがとう」「死んだらダメだよ」「死んじゃったら負けだよ」
どうしてそこまでも「生きていること」を過大評価する?
私は分からない。生きているのが「偉い」というのが。だって、そうだったら死んでしまった人は「偉くない」ことになってしまうだろう?
「生きていてもいいんだよ」「生まれてきてくれてありがとう」「その命を、捨ててあげないで」「命を大切にしろ」
生きていることを否定するのは「悪」なのに、どうして皆、死ぬことを否定するのは「善」と呼ぶのだろう
私には到底理解できない。どうして、死ぬことをそこまで否定しなければいけないのか。生きていることを肯定しなければいけないのか。
生きるも死ぬも、他人の勝手だろう?それをどうして、他人が口出しをする?
どうしてそこまで、「苦しい世界」に留めておこうとする?
どうしてそこまで、無責任なことができる?
私には到底分からない。
カチャリ、と音がする。私は体の力を抜いて、リラックスして死を待つ。
引き金に手を掛け、指の力を入れる。
その時、一つの銃声音が響いた
[明朝体]パァンっ![/明朝体]
『...........』
手が、軽い
引き金を引く直前、引くはずだったものがなくなった
私はゆっくりと前に進んで、落とされた銃を拾いに行く。
私が進み出した瞬間、またひとつ銃声音が鳴った。
「............」
銃声は後ろから音がした。きっと上にでも撃ったのだろう
私は、動きを少し止めたがまた歩き出した。
あと一歩、あと一歩で銃が手に入る。
私が、銃に手を伸ばした瞬間、パシッと音がした
「......少しくらい、こっち見てくれてもいいんじゃないですかね」
『.........だれ』
私が振り返ると、黒色の髪を逆立させた男が立っていた
腕を、掴まれている。私は、掴まれている反対の腕を銃へと伸ばす
だが、それも阻止された。黒色の男によって。
私は少し力を入れ、腕を振り払おうとする。だが、男女の力の差は明確。そんな簡単に攻略させてくれるわけはなかった
そんな私を見た男が、溜息をつき、口を開く
「はぁ.........どうしてそこまで"死に固執"するかなぁ」
『.......は?』
この男はなんと言った?
私が?死に"固執"している?この、私が?
体が硬直する。
頭を回せ、私が?死に?固執?.......そんな、
私は口が開かなくなった。
そうだ、そうかも、しれない。
私は自分が「生きていることも死んでいることも同じ」だと、思い続けてきていた。だけど、それは間違いだった
私は「生を否定し、死を肯定」していただけだった。
あぁどうして、こんな単純なことに気づかなかったんだろう。
自分の「死」に対する気持ちが大きすぎて、周りが見えていなかったことに気づき、自分を情けなく思う
.........どうしようか。
私がこう悩む理由は、私が驚いた理由が、「死ぬも生きるも一緒だから、いっそ死んでみてはどうだろうか」という理由だった。
それが、私は本来の目的を見失ってしまった。
私は本当に「死にたい」のか?「死ねる」のか?「どんな理由で死ねばいい」のか?
私が「死ぬ理由」が無くなってしまった。
全身の力が抜けて、本当に「死に固執」していたんだなと分からされた。
そこを、男が腕に力を入れ、私を支えた
「ずいぶん悩んでたけど.......答えは出せた?」
『........分からない、』
死にたい理由が、見つからない
でも、「死にたい」と思っているということは、私は死にたい理由を"すでに持っている"はずなのだ
どうせ、それに気づいていないだけ。私は自分で解決して、正解を探した
「.....だからさ、」と男が喋る。その声は怒っていて、どこか腕に力も入っているような気がする
「君の頭には"生きる"って選択肢はないわけ?」
目を見開いた。
私の頭に一瞬、"生きる"という選択肢が追加されるが、すぐに追い払う
『.......でも、私は死にたいから』
私は「死にたい」と思っているのだ。その思考を邪魔されてたまるか
..........でも、なんで死にたいって思うんだろう、
そんな疑問が出てきた時、頭の中を読んだように男が質問してくる
「なんで、君は死にたいと思うの?」
『っ、それは.......』
答えを出せずに、口を噤む。私の心が揺れる
その隙に気づいたのか、目の前の男が「死にたい理由を探してるならさ」と口を開く
ぱっと腕を解放され、男と向き合いながら目を合わす
「俺と生きて、その理由探してみない?」
手を伸ばしながら、優しく笑顔で言う男
とんっ、と棚にハマった音がした
揺れていた心にとどめを刺され、私は腕を伸ばす
これが、"正解"なのかは「私にはわからない」けど、彼の笑顔を見て、そんなことどうでもいいか、と思った
あれだけ固かった意思が、ものの数分によって1人の男に崩された。
その事実に私は自嘲しながら、彼の手を取った
(死なせてくださいね)
(さぁ、それは○○ちゃん次第じゃない?)